先日、伊豆のシステムのアンプの入れ替えをしていた際、一つ気が付いたことがあります。それは「5.1ch再生における、サラウンドスピーカーの距離と位置」についてです。
アンプを入れ替えれば、当然、StormのAVプリの再設定をしなければなりません。ISP MK2に内蔵されている、「Direc Live」と呼ばれる補正ソフトを使ってキャリブレーションをするのですが、その時、ふと、遊び心で、「Amator IIIを使わないで、5chすべてSonettoにしたらどんな音がするだろう」と思い付きました。
普段、マルチシステムではサラウンドとして使っているAmator IIIを駆動するアンプを今回変更したのですが、それが真空管アンプなので、他とは音色が違いそうだし、そもそもこのアンプだけ起動に時間がかかるため、AVアンプのスイッチを入れてすぐに5.1chの音楽を再生すると、しばらくサラウンドスピーカーから音が出ないのが、「イラチ」の私は(笑)ちょっと気になったからです。
そこで、通常「フロントワイド」として使っているSonetto Iを、「サラウンド」としてPC上で設定し(配線やケーブルなどのつなぎ変えをせずに、PC上で簡単にSPの役割の入れ替えができるのがISP MK2の美点の一つです)、LCRのSonettoVIIIと組み合わせて、「5.3ch」(SWはバスレフのヤマハを外して密閉のFostex3台で構成)のシステムを作り、キャリブレーションを実施して、位相・f特・距離などを調整しました。
さて、試聴です。どなたでもそうだと思いますが、自分なりにいろいろな試聴ソフトと試聴ポイントがありますが、今回の話題に関連するものはこれです。
The Dark Side of the Moon(Analogue Productions)
[:image1:]
このソフトを使った試聴ポイントは以前、のびーさんの日記 へのレスでも書いたのでここでは割愛しますが、これまでのシステムで聴きなれていた定位感と大きく異なる感じがしてびっくりしてしまいました。「音色」ではなく、「定位感」、もっと明確に言えば、音が自分の横から後ろを回っていく(一周する)音像定位(移動)がより明瞭になったのです。
最初、「スピーカーが異なるだけでこんなに違うのかな?スピーカーの格としてはSonetto IよりAmator IIIの方が上なのだが」と不思議に思ったのですが、見渡してよく考えてみると、これまで聴いていたのとサラウンドSPの位置が大きく違います。
「マイルーム」にあるように、拙宅のAmator IIIは可動式なのですが、これまでこれをサラウンドとして使っていた際は、リスニングポイントからの角度は140-145度ぐらいの場所に移動して使っていたのです。なぜなら、拙宅のレイアウトではこの位置に置くと、リスニングポイントからの距離がLCRと同じにすることができるからです。ただ、ITUが定義している5.1chシステムのスピーカー配置の角度は、「100~120度」であることは良く知られているところであり、[:image2:]拙宅のシステムのサラウンドの設置「角度」はそれからは外れていることは認識して使っていました。もちろん、距離の補正はソフトでできるので、「角度を優先する」こともできたわけですが、「なるべく補正に頼る部分を少なくする方がいい音がするだろう」というのはどなたも同じイメージを持っていると思います。私もそう信じて、いつも「距離」を優先していたのです。逆に言えば「フロントはともかく、サラウンドの角度なんてそんなに重要じゃあないだろう」と思っていました。
今回、たまたまアンプの入れ替えに伴う再設定の過程で、「遊び心」でやってみたサラウンドの設置角度は、約100度ぐらい、ほぼ真横やや後ろ、という感じです。ここに置くと拙宅ではかなりリスニングポイントに近くなり、1.5Mぐらいでしょうか。LCRまでは2.5Mほどあります。当然、補正をしない限り、音が耳に届くタイミングがずれてしまいますので、ISP MK2が大活躍せざるを得ない配置です。
普段、5.1chで楽しむときは弦楽四重奏のような小規模の室内楽が多いのですが、これを再生するときは、このITUに準拠した配置(角度)の優位性はほとんど感じません。各チャンネルに別々の楽器の音が振ってあるような、Tacetのような特殊な録音のものを除けば、音楽を奏でる主力はLCRであり、サラウンドが受けもっている役割はアンビエントというかホールの環境音であることがほとんどだからでしょう。
しかし、この『狂気』のような、録音エンジニアが明確な意図を持って、5.1chサラウンドの機能を活用して「音を回している」ようなソフトの場合は、スピーカーとリスニングポイントの位置関係は、「距離」はAVアンプが補正していることを前提として、AVアンプでは補正ができない「角度」が大事なんだな、ということがよくわかりました。ITUは「5ch同一スピーカー、同心円状(=等距離)配置、そして<角度>」と高いハードルの規定をしていますが、全二者の違いはAVアンプがある程度補正してくれるが、最後の<角度>だけは厳密に守った方が、Director’s intentionに近い再生ができるのだという結論に至った経験でした。
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