WOWOWの入交氏は録音技術者としてWOWOWをリードされた有名な方なので、このサイトの多くの方はご存知かと思います。最近では今年の3月に「「直伝:イマーシブオーディオ再生技法」セミナー」(Auro-3D友の会共催)がWOWOW放送センターのスタジオで開催され、その記事がこのサイトやPhilewebでもアップされました(「直伝:イマーシブオーディオ再生技法」セミナーに参加しました。 | Phil-M Community, https://www.phileweb.com/news/audio/202502/05/26132.html)。
その入交氏は昨年度でWOWOWを退職し、故郷の関西に戻られて、新たなスタートを切ることになったのです。そのために、奈良駅近隣に新しいスタジオを作られました。オープンは2025年6月20日!つまりオープン間もない新入交スタジオをAuro-3D友の会のメンバーとしては初めて訪問することができたということなのです。訪問はAuro-3D友の会のモンテモンテさんと姫路のオーディオ仲間のWPOZZZさんとご一緒しました。入交氏はWOWOWの前に毎日放送でもエンジニアとして働かれたご経験があるそうなのですが、それを聞いたWPOZZZさんが「毎日放送の「十人十色」(お宅拝見番組)に出演したことがあります」と言われると、入交氏が「えっ!、私、その番組担当してました!」等の会話もあり、最初から盛り上がったのですが、それはちょっと横に置いときますね、笑。
(1)入交スタジオの概要
マンション一階の1F(仕事部屋等)と地下室(半地下)からなる角部屋を利用し、地下室をスタジオに改装されておられます。スタジオの広さは約26畳、天井高は前方が2.5m、後方で2.6m。改装工事は全てDIYだそうです。床はコンクリートの上に絨毯張り(これもDIY)、壁面は各所に吸音壁(大きな衝立)、ハイトSPはマンションで壁にネジ釘はご法度だそうで、2x6材の柱を天井と床の間に挟んで固定し、その柱に据え付けています。吸音衝立の素材は、生け花の剣山の代わりに使うスポンジ状の素材だそうです。残響時間は凡そ0.4秒とのこと。
【フロントハイトSPと2x6材の柱(DIY)】
SPはAUROー3D用にGenelecのパワードSP、ATMOS用にはイクリプスの目玉おやじで揃えられています。GenelecのパワードSPは一世代前のもので、アナログアンプ内蔵。現世代のものはデジアンを使っているので、アナログのこちらをお使いだとか。サブウーハーもGenelec、フロントセンターはサブウーハーの上に載せて設置されています。
【フロントセンターSPとその下のサブウーハー】
オープン前にAURO-3Dの認証を取られています。WOWOW放送センター(江東区辰巳)のスタジオが日本初のAURO-3D認証スタジオをだそうで、この新入交スタジオは国内二番目のAURO-3D認証スタジオなんです!
SP配置は勿論、正規のAURO-3D配置で、サラウンドSPは正面から110度の位置にありました(正確には柱の位置関係で108度になっているとか・・。入交氏は90度の位置にサラウンドSPを置くことを推奨されていますが、認証スタジオなのでやはり110度でした。
少し気になったので、デジタルプロセッサーなどプロ用機器のラックを拝見させて頂きました。中段のFERROFISHのマークがあるものがDACだそうです。
(2)試聴の様子
WOWOW放送センターでのセミナーと類似の音源を聞かせて頂きましたが、試聴位置はベストポジションなので、最高でした。ベスポジに4席椅子があったのですが、前列の左の席で大半の時間聞くことができました。音源の殆どは入交氏製作のマスター音源でしたので、192kHzで、ビット深度は恐らく32ビットはあったかと思います(ビット深度は聞き洩らしました)。通常のブルーレイの音源に比べビットレートが10倍以上(ひょっとすると100倍の聴き間違いかも?)違うと仰っていました。音の印象はノイズフロアが極めて小さく、高分解能な自然の響き・・ですね。
以下聞かせて頂いたAuro-3D音源を記憶の順でご紹介
・バチカン大聖堂(サンピエトロ寺院など)でのオーケストラ
・ミューザ川崎シンフォニーホールの東京交響楽団(指揮者の位置から聞こえる音楽)
・林間部でのせせらぎや野鳥の声
・蒸気機関車
・熱海海上花火大会2020
・楽天Japanオープンの錦織圭(vsメドベージェフ)
・名倉誠人(マリンバ)
・歌声/横笛と野鳥の声
・佐渡裕指揮「千人の交響曲」
・萬福寺音舞台
・Magnificat
・長谷寺の火祭り
等々
WOWOW放送センターでのセミナーと被ったものが多くありましたが、特に印象に残ったのは
(1)名倉誠人のマリンバ
製品版の「Bach Parallels」とはマリンバの種類、録音方法(マイク配置)やマリンバのホール内での位置が違うとのことで、製品版の音とはかなり違います。こちらの方がホールで実際に聞いている感じに近いと言えます。もちろん、マスター音源でもあるので音質は流石!
(2)歌声/横笛と野鳥の声
林の中で女性ボーカル/笛の演奏を録音したものなのですが、臨場感は中途半端じゃないんです。まさにそこにいる感じ。演奏が始まると、鳥が集まってくるそうで、鳥の鳴き声が周囲を取り囲み、これが数を数えられそうなほど鮮明(音がですよ)。
(3)Magnificat
聞きなれた曲ですが、ストリーミング(Artist connection)とマスター音源の聴き比べができました。ストリーミングは昨年からAuro-3Dのテスト配信が始まった「Pure Audio Streaming(www.pureaudiostreaming.com)」で、これも初体験でした。ストリーミングがブルーレイディスクのフォーマット(多分、汗!)なので、自宅で聞く音源とマスター音源を聞き比べたということになるのだと思います。ストリーミング音源はマスターを圧縮(多分)、ビットレート低減(192→96kHz、ビット深度も同様)、5.1chのフォーマットに9.1chを畳み込むなどしているので、勝ち目はないのですが、残念ながらマスター音源の圧勝と言って間違いありませんね。とは言え、Auro-3Dのストリーミングが発展することを願うばかり!
午後2時からの3時間はあっという間に過ぎました。その後4人で懇親会も持てました。プロの音をじっくり聞く機会が持てるとは思ってもいなかったので、興味津々の一日でした。入交氏をご紹介いただいたAuro3Dさんに感謝いたします。
入交さん、忙しい中お時間頂き、セミナー以上に種々の音源を丁寧な解説付きで聞かせて頂き本当にありがとうございました。懇親会まで付き合って頂いて本当に楽しかったです!
また、今後とも宜しくお願いいたします。











コメント ※編集/削除は管理者のみ
書き忘れていました。
モンテモンテさんが以下のブログに訪問記をアップされています。そちらもご覧ください。https://keik0320.hatenablog.com/
Tomyさん
すでにモンテモンテさんの「初物」レポートが彼のブログに上がっていてそれで「予習」してしまったのですが(笑)、https://keik0320.hatenablog.com/entry/2025/07/23/213925
Tomyさんらしい、より詳細な情報をありがとうございます!モンテモンテさんのブログに入れたコメントと被る内容は省略しますが、特に、認証スタジオのために、サラウンドSPが110度になったという逸話は<入交教信者>としては、「衝撃」でした(笑)。
こういう、プロが正確に設置した環境で、Auro-3Dの原音を聴かせてもらうことは、「Auro-3D」というフォーマットが音楽再生芸術においてどの程度のPotentialを持っているかを、Auro-3Dを聴いたことがない人に感じていただくいい機会だと思っていて、だから「友の会」でも一般向けのイベントを企画したりしているわけです。その意味で、2ch派のお友達をお連れになったそうですが、それが「ファン拡大?」になったのか、それとも「アンチ増加?」につながってしまったのかが「友の会」的には気になるところですね(笑)。
逆に、我々のように、すでにAuro-3DのPotentialがどれほどあるのかを知っていて、ゆえにそれを追求し始めている者にとっては、市販されていない、つまり自分のシステムでは聴くことのできない音源をたくさん聞かせていただいても、フラストレーションがたまるばかりじゃなかったですか?(私はかつて、熱海の入交スタジオに何度もお邪魔しましたが、帰るときに、いつも「このソースを自室に持って帰りたい」と恨めしく思ってましたから!=笑)
その意味では、市販品のある『Magnificat』を聴けたのはご自身のシステムとの音の違い(音質ではなく、音場や定位)をチェックするうえで非常に参考になったのではないかと拝察します。記事には触れられていませんが、いかがでした、音場や定位面での差異は感じられましたか?(私は熱海スタジオから戻るたびに、自分のシステムのスピーカーの位置・角度や向きを微調整してましたから…)
また、すでにPure Audio Streamingが入交スタジオには導入されているというのも初耳で、彼のネットワーク環境はどのように整備されているのかが気になりました(私は最近、Auro-3DのStreaming開始に備えて、ネット環境を強化中なので!)。
まあ、私も帰国する来月にはお邪魔する予定なので、このあたりの自分の問題意識を確かめたうえで、「3匹目のドジョウ」(笑)として「友の会」ブログにUPしようと思っていますので、そちらもお楽しみに!
Auro3Dさん、
早速のコメントありがとうございます。
>その意味で、2ch派のお友達をお連れになったそうですが、それが「ファン拡大?」になったのか、それとも「アンチ増加?」につながってしまったのかが「友の会」的には気になるところですね(笑)。
これはいい質問ですね、笑。
ファン拡大には2chファン(オーディオ好きの大部分)を勧誘するのが最も手早いが、だからと言って効果が高いかは、疑問ですかね?笑。ただ、あの音を聞いて「アンチ」にはならんと思いますよ!まあ、WPOZZZさんのコメントを待ちましょう、爆。
>その意味では、市販品のある『Magnificat』を聴けたのはご自身のシステムとの音の違い(音質ではなく、音場や定位)をチェックするうえで非常に参考になったのではないかと拝察します。記事には触れられていませんが、いかがでした、音場や定位面での差異は感じられましたか?
Magnificatの2曲目を聞いたと思いますが、あの曲は前方左右にコーラスが広がるのが特徴で、左右や後方にはあまり音は配置されていないので、音像配置の点では大きな差は無かったように記憶しています。東京交響楽団のオケが周囲を取り囲む配置にミックスされているので、それをもっと聞きたかったのですが、3時間はあっという間に過ぎ、定位の確認までできませんでした。マスター音源の音を聞いた時には、帰宅して聞くのが嫌になりそうでした、笑。このレベルの音源を販売してほしいですが、AVアンプじゃあ再生できないですよね。
記事には書きませんでしたが、林間部でのせせらぎの音などは、家で仕事中などにかけておきたい音源なので、販売してはどうかと思いました。ヒーリングの効果が大きそう。
「3匹目のドジョウ」楽しみにしています!
Tomyさん
この度は、お誘いいただき、ありがとうございました。
プロの制作現場で最新フォーマットをマスター音源で聴けるという、貴重な体験でした。
日頃聞きなれない用語で、良くわからないところもありますが、音は正直ですよね。
山間部の環境音は、臨場感があり包まれ感がすごかったです。
SPまでの距離は2m程度が適切で、あまり大きな部屋は・・・みたいな話があったと思うのですが、もっと距離が近い、また逆に遠い場合の音場の変化は、興味があります。
>ファン拡大には2chファン(オーディオ好きの大部分)を勧誘するのが最も手早いが、だからと言って効果が高いかは、疑問ですかね?笑。ただ、あの音を聞いて「アンチ」にはならんと思いますよ!まあ、WPOZZZさんのコメントを待ちましょう、爆。
アンチにはならんですね(笑)
2CH志向だからイマーシブにアンチとか、そもそも自分の中にはないんですが、対抗心? 持つ方もいるんでしょうか?
適材適所かなという感じはあります。
というのも環境を写し取ったような再生が身上かと思うので、例えばJAZZのソロパートを強調する・しない?、したら違和感がある・ない?など、2CHでは当たり前のデフォルメをしたら違和感が出る気もするけど、オーケストラを聴くにはいいのかなと思ったり(映像の有無でも変わるし、マスタリング次第という話かもしれませんが)
ちょっと思ったのは、背中側にエンジンがある車の室内音が再現できると面白そう。こういうの2CHでは、ほぼ絶望的ですもん。
そのためにシステム揃えるかと言われれば、難しいですけど(爆)
色々と段取り含めて、ありがとうございました。
WPOZZZさん、
コメントありがとうございます。
>2CH志向だからイマーシブにアンチとか、そもそも自分の中にはないんですが、対抗心? 持つ方もいるんでしょうか?
ピュアオーディオやっている人から見れば、AVアンプを使って、多くのSPを鳴らすイマーシブオーディオには邪道感/違和感を感じる方もいるかもしれませんね。2chと同じクオリティのアンプ・SPを全てに使うならともかく、事実上そうはならないですからね。良くできたブックシェルフに強力なサブウーハーを組み合わせるのが、イマーシブオーディオ用システムの方向性だと思うので、その良さを体験する機会を持ってもらうと良いと思っています。
>適材適所かなという感じはあります。
というのも環境を写し取ったような再生が身上かと思うので、例えばのソロパートを強調する・しない?、したら違和感がある・ない?など、2CHでは当たり前のデフォルメをしたら違和感が出る気もするけど、オーケストラを聴くにはいいのかなと思ったり(映像の有無でも変わるし、マスタリング次第という話かもしれませんが)
イマーシブでもデフォルメはできるし、結構していると思いますよ。2chとは違ったデフォルメでしょうけど。指揮者の位置から聞いたオーケストラとか、笑。2chにはできない、もしくは非常に難しいい再生の典型が、自然環境の音をそのまま再生することなので、どうしてもそちらに傾く傾向があるのでしょうね。それに近いクラッシック(ホール音再生)がイマーシブ音源に多いのも頷けます。JAZZファンにとっては残念ですが。JAZZでも、ステージの広がりを再現しながら、スポットライトもあてるデフォルメをした音源が沢山出てくることを期待しています。
>ちょっと思ったのは、背中側にエンジンがある車の室内音が再現できると面白そう。こういうの2CHでは、ほぼ絶望的ですもん。
F1レース中のエンジン音をドライバーの位置から聞いたような音源ですか??
やっぱりそこに行きつきますか、爆!
ちょっと遅れましたが、一部訂正いたします。
Magnificatの試聴音源(ストリーミングでは無い方)は実はマスター音源ではなかったそうです。ストリーミングとの差は、伝送経路の差もかなりあったのかもしれません、汗!
Tomyさん、
遅レスでスミマセン。
入交さんはすごいスピードでスタジオを構築されたのですね。
しかもすでにAuro-3D認証まで取られたとは。
地下のスタジオは遮音については有利ですが、低音の逃げ場がないので音響処理は苦労されたのではないかと思います。
ミューザ川崎のボレロやバチカン大聖堂の音などは聴いてみたいです。
K&Kさん、
コメントありがとうございます。
場所はかなり前から探されていたようですが、改装は多分お一人でDIYなので、凄いスピードだと思います。低音の逃げ場に関しては、地下と言っても半地下で、後方の壁には窓があり、右の壁も半分は地上だったと記憶しています。坂になっている土地の半地下ですね。その点は低音にとっては有利だったかもしれませんね。壁にも元々かなりの吸音材が入っていたとのことでした。
川崎ミューザの録音、一度奈良を訪問されると、良いですね!その時は是非ご一緒させて頂きます。私も次回それをじっくり聞いてみたいんです。