昨年末に、DiracLive ART(Active Room Treatment)の導入記「クリスマスに”アート(ART)”がやって来た」(https://philm-community.com/tomy/user/diary/2025/12/25/33666/)を投稿しました。その後どうなったのか? また、測定なども行ったので追加報告します。このサイトにdonguriさん(https://philm-community.com/donguri/user/diary/2025/10/14/32975/)やKawausoさん(https://philm-community.com/kawauso/user/diary/2025/10/25/33112/)の記事もありますので、そちらも参照ください。
【ARTとは?】
ARTは複数のSPを使って、100msecくらいまでの残響を制御するという、新しい視点で作られた音響補正です。DiracLiveは位相補正と周波数特性補正を同時に行うソフトとして、オデッセイを駆逐する勢いで、有名AVアンプメーカーの製品に次々導入されました。導入するのに数百ドル以上するにもかかわらず、マニアの間に急速に浸透しつつあります。ARTはこれにさらに残響補正を加えたものです。
拙宅のAVアンプ(MonopriceのHTP-1)には昨年末のクリスマスに導入ができるようになり、導入記を書きました。初期の興奮?が冷め、今どう感じているか?、どのような設定に落ちつきつつあるのか、また、測定結果は如何に?・・がこの記事のテーマです。
【ART設定はどうしているのか?】
(2ch音楽)
ARTの設定はかなり複雑です。各SPの周波数特性の目標(ターゲット)カーブ、サブウーハーを含めた他のSPをどのように使って、低音の特性(周波数特性、位相、残響)を制御するのかを決める必要があります。150Hz以上ではターゲットカーブと補正をする周波数範囲を決めるだけですが、150Hz以下では残響を補正するサポートSPを指定し、各サポートSPの受け持つ周波数範囲を決める必要があります。サポートするだけの(補正音しか出さない)SPの設定も可能です。
このサポートSPの選定だけでも音は結構変わります。最初はDefaultどおり、全てのSPをサポートSPとして選定していましたが、低音がタイトになる一方で、2ch再生ではジャズベースのピチカートが目立ちすぎるように思いました。そこで色々試行錯誤した後、L/RのサポートSPはサブウーハー1個のみとし、受け持ち帯域も20-80Hzとしました(デフォルトでは20-150Hz)。20Hz以下をカットしないように、その項目に✓。100Hzに比べ20Hzで+5dB上昇するようターゲットカーブを設定しています。100Hz以上も全域補正で、SPが元々持つf特に合わせたカーブです。前回の報告とは高域のカーブが少し異なります。これが好みの音なんだと悟りました。これが現状のL/Rの設定で、その時の周波数特性が以下のグラフ!
Dirac Liveの設定画面、測定周波数特性とターゲットカーブ
実は、L/Rに対するサポートSPの選び方は「DENON / Marantz Dirac ART 実践マニュアル」https://philm-community.com/kawauso/user/diary/2025/10/26/33142/でKawausoさんが推薦している選び方と似ています。SWの数(拙宅では1つ)とサポートレンジ(拙宅のSWは20-80Hz)は違います。DiracでARTを開発するに当たり、2ch音楽試聴のためのSP構成として、L/R+SWという構成を想定していたと考えると合点が行かないでもありませんね!
(マルチチャンネル音楽)
2chでも上記の設定に結構な時間が掛かったくらいですので、10ch以上のマルチchの条件を決めるのは至難の業かもしれませんね、笑?。実際、未だに、これだという決論には達していません。現状、9.2.4のSP構成で、L/Rの設定は上記通り、他のSPの最適設定を探している最中です。何時までかかるやら?、爆!
【ARTの効果の測定結果】
(1)位相
REWとumik-1というマイクを使って測定してみました。何故最初に位相の話をするかと言うと、拙宅のL/RはPolk AudioのLS-15と言うフロア型のSPなのですが、側面についている20㎝ウーハーは12㏈/octのクロスオーバーで逆相接続されているのです。クロスオーバーは200Hz付近です。他のSPも同じPolk Audioのものですが、2wayなので正相接続。これが理由で、DiracLiveの位相制御の実力をまず見てみました。測定位置はLPです。
まずは、ARTをOFFにした時のステップレスポンスが上図です。これは位相が変わらず周波数特性が無限に高周波域までフラットなら(完璧なSPの場合)横長の矩形になるべき特性です。垂直に立ち上がり、そのまま横一直線が最良です。しかし、測定結果は上下に振動しています。最初のシャープな二つの上向きピークが、STWとTWによるものです。その次2-6msくらいに見えるピークがミッドレンジによるもの、6-10msくらいにある下向きのピークが逆相接続のウーハーによるものではないかと思います。
ARTーONのステップレスポンスは上とは全く違います。0-10msまで全ての範囲で正の値で、矩形に近い形をしているのには驚かされますね。逆相ウーハーが混在しても位相はほぼ完ぺきに補正されています。
周波数特性を見ても位相が制御されていることが良く分かり、ART-ONだと多少の上下のあばれを除き比較的綺麗な特性ですが、一方OFFにすると、30-50Hzの音圧が激減しています。逆相ウーハーとSWの音が打ち消し合うのと、35Hz付近にある定在波の節を補正できていないのが理由です。下図は位相の周波数特性です。ARTがONの場合、50-200Hzの境域でLPの位置で位相が変化しないことが分かります。完璧!
(2)残響補正
では、ARTの謳い文句、残響はどうか?
RT-60、-60dB減衰するまでの時間、フロントL, ART-ON(青)、OFF(赤)
ありゃ、ON-OFFでほとんど変わらんやんか・・?OFFの時の残響が少し短いほどです!最初はサポートSPとしてRとSW一個しか選定していないので残響補正が余りできないのか・・?と思いました。Diracの説明では、ARTは100msくらいまでの残量を補正する・・と記載があったので、最初と100ms後の音圧を比べた図が以下のものです。

0msと100ms後のの音圧特性比較、ART-ON(上)では50-150Hzの音圧の減少が大きい。
これを見ると、ART-ONで50-150Hzの減衰がかなり早くなっていることが、明瞭に分かりますね。Auro3DさんはRT-60が減少すると報告されているので、今回の結果はこれとは少し違います。まあ、残響時間が減衰することには変わりはありませんから、良いとしましょう!ARTーOFFのときに下がったRT-60は誤差が大きいためだと思います。
【ARTの良いところ】
(1)音は良くなる。低音の残響が抑えられるので、低音が締まり、中高音の分解能も上がる。但し、ART以前のDirac Liveの設定のまま、デフォルトのART設定にすると、低音が物足らなくなるかもしれない。これには、上記のような試行錯誤が必要です。デフォルトに近い設定(多分?)でも、低音に全く問題のない例もあります(Auro3Dさん邸訪問記参照)。
【ARTの難点】
(1)設定要素が沢山あって、使いこなしが難しい。
(2)アンプONからウォームアップまでの時間、音が悪い(以前に比較して変化が大きい)。
(3)音楽用の設定と映画用の設定はかなり変えた方が良いかもしれないと、現在も、苦心しています(これからの課題)。
以上、DiracLive ARTをまだまだ使いこなせてはいませんが、逆相ウーハーがあるユニットが混在する場合、また150Hz以下の残響時間(~100ms近傍まで)を大きく短縮する他に例の無い効果があることが再確認できました。上手く設定すると、音は必ず良くなると思いますよ!





コメント ※編集/削除は管理者のみ