今回はサンプリングコンバータ(SRC)での音の変化について実際の音源を紹介しながら書きたいと思います。
まずサンプルに使用した音源はこちら
http://www.projectsam.com/Products/Feature-Products/1403
Project SAM ORCHESTRAL ESSENTIALSの製品デモ(44.1k 24bit wav)です。
SRCはこちらのリンクでの事前調査により、Linear phaseとMinimum phaseが選べてなおかつ高性能かつ入手容易なSOX14.4を使用しました。
http://src.infinitewave.ca/
コマンドライン前提の設計なので一部の方以外にはあまり手軽じゃない設計なのですが、実際のソフトはこちらからDLできます。
http://sox.sourceforge.net/
■比較は次の流れで行います。
原音の44.1k 24bitデータを用意
↓
Linear Phase設定で192kに変換
↓
Linear phaseとMinimum phaseで44.1kにダウンコンバート
↓
原音との差分をそれぞれについて取る
注意:SOXはデジタルフィルタのリップルによるクリップを防ぐため、毎処理ごとに-1dBされますので、差分を取るときに44.1k > 192k > 44.1kの計+2dBあげています。
■実際のデータ
原音
http://movieplanet.dyndns.org/~Innocent_Key/data/yohine/src/OE_alexpfeffer__ginnungagap_v3.wav
SRC後 Linear phase
http://movieplanet.dyndns.org/~Innocent_Key/data/yohine/src/L44_L192_OE_alexpfeffer__ginnungagap_v3.wav
SRC後 Linear phase差分
http://movieplanet.dyndns.org/~Innocent_Key/data/yohine/src/L44_difference_OE_alexpfeffer__ginnungagap_v3.wav
SRC後 Minimum phase
http://movieplanet.dyndns.org/~Innocent_Key/data/yohine/src/M44_L192_OE_alexpfeffer__ginnungagap_v3.wav
SRC後 Minimum phase差分
http://movieplanet.dyndns.org/~Innocent_Key/data/yohine/src/M44_difference_OE_alexpfeffer__ginnungagap_v3.wav
差分データを聞いていただくとわかると思うのですが、Linear phaseの差分は2回のSRC処理を経ているにもかかわらず耳ではほとんど無音、ということは原音からそれだけ変化が少ないということです。対してMinimum phaseは高域を中心に大きく信号が残っていますので、それだけ原音から変化していることになります。
必ずしも忠実=至上というわけではないですが、変化を避ける場合にはLinear phaseを使えば良いということになります。
Wavで耳で聞いて比較すると処理後のWavは-2dBされているのでレンジが狭く感じるかもしれませんがこれは耳の等ラウドネス曲線によるトリックです。
■個人的な感想
この検証を個人的にやったのはだいぶ前の話ですが、それまでSRCというと何か音が大きく劣化してしまうイメージがあったのですが、コンバータをきちんと選べば差分をとった際にほとんど音が変化していないことは予想外に感じました。
SRCについては最近philewebでもyamamoto2002さんがWindowsソフトでの検証を行なっていますが、こちら(http://community.phileweb.com/mypage/entry/2721/20120630/31560/)の図2をみると標準のMMEドライバの場合には相当SRCにて劣化することがわかります。
SRCというと拒否反応が出やすいイメージが何となくあるのですが(自分もそうだった為)、昔AC97等でPC上で48kに強制SRCされていたころなんかはこのような劣悪な編集を掛けられてたことは大きな理由になってそうです。あとはよくわからないがデジタルで音をいじっているということが、そもそも音を変えているのだからなんとなく悪い!という印象もありそうかなと思いました。
最近自作DACではMinimum phaseを押しているのですが、DACで聞くと不思議と開放感があったりします。でもデジタル編集のWavで比較するとあまりそういう感じはしないです。気のせいのような僅かな違いだと思うのですが、なんとも不思議です。
一応それらしい理由を考えてみると、DACでは最終的にもう一度デジタルフィルタ>アナログ信号を経過して音を聞いているわけで、WAVデータを直接そのまま聞くことは出来ません。ですから、このような微細な音質変化はDAC以降の特性によってほとんど隠蔽されているのかな?というように思いました。
もちろんこの違いを大きいとみるか小さいと見るかは人それぞれと思うのですが、ケーブルや部品を交換した時の差に比べて変化はずっと小さいような気がします。単純なSRCありなしでは勝負は決まらず、それ以外の設計の差のほうが音質にとってずっと重要ではないかと思われます。それ以前に良い音を出すためには変化を武器にすることさえ必要かもしれません。
次回は自作ADについて書きます。先に書いておきますがAD初製作は当初の目的を果たすには失敗作でした。またリベンジしたいと思います。
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