オフ会はなぜ重要なのか―X邸の事例に学ぶ
この度、グランドスラムさんにお誘いいただいて、名古屋のX邸を訪問させていただきました。
Xさんは、本コミュニティサイトの愛読者だそうですが会員ではないので、ご本人の特定につながりかねない言及や写真などは一切掲載しない、という条件でこの記事を書くことをご許可いただきました。なぜ、そこまでして私が「X邸訪問記」を書きたいかというと、ここでの経験がオーディオ愛好家にとって、とても普遍的なテーマを含んでおり、皆さんにどうしても紹介したいと思ったからです。
Xさんはクラシック愛好家で、特に古楽器がお好きです。ご自分でも演奏される音楽的素養の持ち主で、ご自宅には珍しい楽器がいっぱいあるのですが(写真も一杯撮りました!)、それを詳細に書くと本人が特定される可能性が高まりますので、残念ですが主題とは直接の関係もないので割愛させていただきます。
お邪魔させていただいたXさんのオーディオルームは、十分な空間容量のある、壁も床もしっかりした作りで、石井式と呼ばれる吸音壁を備える、オーディオマニアのプロトコルに完全に則ったお部屋でした。そこに置いてある機器は(!)、まあ、元々私では<縁遠すぎて>名前も知らないようなものばかり(グランドスラムさんは全部お分かりになる!)なのですが、これも詳しく書けば恐らく本人を特定できてしまうので、割愛します。SPもたくさんお持ちなのですが、この記事の主題となるSPは私より背が高く、私よりはるかに重いものです(汗)。
さて、ここからが本題です。実はXさんにはオーディオ上の悩みがありました。それは、メインのSPが古楽器以外はいい音で鳴ってくれない、というものでした。このメインSPは、ペアで恐らく拙宅のシステムがすべて買えるぐらいの<超>高級品です。
アンプ類も、プリもパワーも恐ろしいほどの<大物>ぞろいで(うーん、写真が載せたい!=笑)、「SPに入れ込み過ぎてこちらまで手が回らなかったんだろう」というレベルのお宅では決してありません(笑)。
初日、聴かせていただいた時にはまだXさんがこのような悩みを抱えていることは知らされていなかったのですが、まず超低域が出ていないことにすぐに気がつきました。言っときますが、このSPにはミッドウーファーが二つ(でしたっけ?グランドスラムさん=汗)ついており、さらに大型ウーファーが後ろ向きに入っています。確かCOが80Hzとかで、つまり、SWビルトインなのです。それをナントカという舶来の(笑)真空管アンプでドライブしておられました。プリも真空管でした。
「うーん、素人的には、真空管って、低域が豊かでたおやかなイメージなんだが…」
グランドスラムさんの「決め音源」の一つである、TOTOの「ロザーナ」を聴いても、出だしのバスドラムというかキックドラムが力弱い。ボーカルなどの中域の音は魅力的なのですが、中高域の分離が悪く、正直言って音<楽>というより、音<苦>って感じで(Xさん、ここまで読んで気を悪くしないでください、あとでフォローしますから!)、思わず、グランドスラムさんと顔を見合わせたほどでした。
明日の朝またお邪魔することとなり、一旦ホテルに戻って、グランドスラムさんと「作戦会議」をしました。私のようなレベルのものがいままでそのようなことを他人様のオーディオルームでしたことはないのですが、「これはほっとけないから朝からクリニックをしよう」、ということで意見が一致しました。
翌朝再度訪問し、グランドスラムさんが前夜から取り組まれていたケーブル類の変更などの続きをやりました。でもどうもいまひとつなので、アンプの入れ替えをしてみることにし、X邸で他のSP(これも誰もが知っているブランドの超大型です)のドライブに使われている弩級のA級トランジスターパワーアンプを真空管パワーに替えてつないでみました。低音はかなり出るようになったのですが、今度はボーカルなどがダメになり、それまでの中域の魅力が損なわれた感じを受けました。そこで、私は自分のシステムでやっている低域と中高域のアンプを異なるものにする、という提案をしました。低域用にA級トランジスタ―、中高域に真空管という、つまりバイアンプです。
単なる素人の思い付きですが、これがうまく行きました。「激変」というのは、特にオーディオアクセサリーの記事ではよく目にしますが(爆)、これこそ、<本当の>激変でした。要は、先ほど拙宅でのSW導入記に書いたことと同じことが起こりました。つまり、低域が改善されただけでなく、中高域も素晴らしくくっきりと、彫りの深い音と音場・音像になりました(詳しくはグランドスラムさん、フォローしてください!)。
ここで、私は「これは自分の手柄だ」と自慢話がしたいのではありません。実は、Xさんは、これまで他人のオーディオの音を聴いたことがなく、また他人(といってもオーディオファイル)をご自分のオーディオルームに招いたことがほとんどないそうなのです。
つまり、何が言いたいかというと、Xさんはこれまで恐らく何十年と、ここでは書けない(汗)金額をかけてご自分のシステムを作り上げてこられたのですが、全くReferenceを持たず、いうなれば「羅針盤の無い航海」に出ておられたようなのです。
かくいう私自身も、このコミュニティに入れていただく前は、そんなに他のオーディオファイルのリスニングルームを訪問した経験はありませんでした。でもこの2年の間に、様々な方の訪問を受け、また訪問をさせていただく中で、自分の求める音の方向性が明確になり、その目標地点に対して今、どのくらい離れているか、ずれているかが相対的に分かるようになり、また、その方向を修正するための様々なアプローチを学ばせていただきました。つまり、私は相互訪問を繰り返したおかげで、明確な目標地点を定め、現在地を示すGPSと正確な地図を持ち、進路を修正する方法を学んで航海に臨めるようになったわけです(もちろん、まだまだ道半ばですが・・・汗)。
私はXさんとのメールのやり取りの中で、「これからはどんどん<他流試合>をしましょう。次は拙宅にもお越しください」とお伝えしました。<勝ち負け>を決める試合ではなく、他人の<技>を見て、学ぶための「試合」を。
結論的に声を大にして言いたいのは、「ガラパゴス的な<進化>?をしないためにオフ会はすべきだ」、ということですし、その機会を私に与えてくれた「Philewebありがとう」でもあります。秋に迫ったお別れに際してこれをお伝えしたくて、この記事を書いた次第です。
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