先日、床上スピーカーを全部ソナスで統一されたAuro3Dさんのところにおうかがいしました。
この時のいろいろな実験結果についてはすでにAuro3Dさんがこの日記に書かれていますが、ここではソナスの3way スピーカーのネットワーク回路の技術的側面を中心に少し書き留めておこうと思います。
今回の訪問の目的は低域と中高域の位相が逆になっているフロント3本のSonettoⅧをサラウンドで使用している2wayのスピーカーと組み合わせたときの最良の方法を確認すること。
Sonusの新しいスピーカー群が納入された時にダイナの営業さんんとノアの社長さんを交えてAuro3Dさんが行った試聴結果を考慮して原点に立ち返って見直してみようという試み。
前回うかがったときに「K&Kフィルター」の効果は確認したもののその時にはセンターはSonettoⅧではなかったので今回はセンター用のフィルター回路も用意しての確認となりました。
[:image2:]
今回はAV8805の出力インピーダンスを考慮して抵抗値とコンデンサの静電容量を少しモディファイしたものをLRCと映画を見る時のセンター用で計4セット用意しました。
その結果はAuro3Dさんの日記をご参照ください。
「K&Kフィルター」の効果を再確認する結果になってちょっとホッとしました。
実はは訪問する2日ほど前に衝撃的情報があって今回の訪問の結果がどうなることかヒヤヒヤだったのです。
それはTomyさんからの情報。
Auro3Dさんの追加のソナス納入日記にTomyさんが書き込んだレス。
≻ソナスのVenere Sのクロスオーバーに関する記述があり、ウーハーとツイーターには18dB/oct、ミッドに6dB/octのフィルターを使っていると記載されています。
その情報源はコチラ。
これはVenere Sについての記述なのですが、どうもソナスの3wayのネットワークはみんなこの方法らしい…
これを見て一瞬気が遠くなりました。(笑)
だって「K&Kフィルター」はSonettoⅧの270Hzのクロスオーバーが低域、高域とも12dB/octのスロープであることを想定して提案したものだからです。
[:image1:]
どうもソナスの設計者は中域を重視してスコーカーの両端は緩やかな減衰で自然さを狙ったのではないかと思われます。
そうだとすると「K&Kフィルター」を挿入することによるスロープの急峻化はそれに反するものになるのかも…
SonettoⅧが本当に18dB/octと6dB/octの組み合わせなのかはAuro3Dさんが販売店、代理店経由で問合わせ中ですが、たぶんそうなっているのだと思われます。
結局、私は頭の整理が完全にはできないままAuro3D邸での実験に臨んだのです。
聴感上の結果はそれでもあのフィルターは有効という結論に…
あの実験の後、今になってやっとこのソナスが18dB/octと6dB/octの組み合わせで上下を逆相にしたか理解できたような気がします。
18dB/octの場合クロスオーバー周波数の前後では位相は270度回転します。
6dB/octでは90度。
270Hzでそれぞれ位相が半分回るようにクロスさせたとするとクロス点でのウーファは-135度(位相遅れ)、中高域は+45度(位相進み)となり両者の位相差は180度になり正相で繋ぐと打ち消しあってディップを生じる。
だからソナスは中高域を逆相接続したのでしょう。
だとすれば「K&Kフィルター」を使うことで両者合わせて90度の位相シフトができるので正相接続でも大きなディップが生じることはない。
このフィルターが有効なのはこの理由だと思います。
問題はステレオで使う場合、このフィルターを使うことでソナスらしさを損なうのではないかということですが、当日の試聴結果ではAuro3Dさんの印象を引用すると…
≻結果、多少、C-bの方がボーカルなどの主題が引っ込み、やや音がすっきりする(痩せる)感はあるが、その差は微細なものであることを確認した。
ということで「K&Kフィルター」使用時(C-b)はオリジナル状態と比べて差はあるけれど大きくはないということ。
私もボーカルの位置の違いは感じました。グレース・マーヤのダニー・ボーイや美空ひばりでの比較です。オリジナルの方が前に出る感じがします。
ボーカルの立ち位置、奥行き感は好みの問題があるのでどちらが正しいとは判断できません。録音の意図に近いのはどちらなのか…これも判断が難しいです。
言えることはステレオしか聴かない方はこのフィルターを使用する必要はないということ。そしてあくまでも私の主観ですがMulti chのためにこのフィルターを使う方がステレオ時に接続を変えてまでオリジナルに戻す必要もないのではないかと…そう思っています。
ちなみにAuro3Dさんはステレオで聴くときにはAmatorを使うということなのでここで悩む必要はなさそうです。
最後に残った私の疑問はなぜソナスはスコーカーとトゥイータ間のクロスオーバー回路をスコーカー6dB/oct、トゥイーター18dB/octとしながらスコーカーとトゥイータの位相を反転させなかったのかということ。
Auro3Dさんのこの日記によるとスコーカーとトゥイータの位相は同じなのです。
これではクロスオーバー周波数で打ち消しあってディップが生じてしまうのではないかということ。
これは想像ですがスコーカーとトゥイータの前後の位置関係にあるのではないかと思っています。
トゥイータの振動板の位置はスコーカーのそれよりも前にあるため、電気的には同位相でもクロスオーバー周波数付近で打ち消しあうことにはならないのではないか…
これはさすがに問い合わせても回答は得られないかもしれません。
以上のことから私としてはAuro3Dさんが「残された火種…」を心配する必要はないと思うのですが…
これ以上の高みを求めるとすればソナスのネットワーク回路をやめてテャンデバを使用したマルチアンプで駆動すること。しかも2way、3wayの全スピーカーに対して…
そこまで行くとソナスの音を超えて本当に自分の好み通りの音を追求する覚悟も必要になるでしょう。
でもそこまではとてもお勧めできません。Auro3Dさんはそんなことに時間をとられるよりは音楽を楽しむ方を選ばれると思います。
最後になりますが、マルチchのスピーカー間の位相を整えることの重要性を今回の訪問で改めて感じました。
5.1chで聴いた大太鼓とオルガンの空間表現はすばらしかった。
そしてDolby Atmosで聴かせていただいたカラヤンのベートーヴェン第九は元がアナログのステレオ音源とは思えないホールの雰囲気感でビックリしました。
まだ調整することも多いのかもしれませんが、これで十分楽しい年末年初を迎えられるのではないかと思います。
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