SPICEというのはアナログの回路設計者であれば誰でも知っている回路解析用ソフトなのですが、私が設計の第一線で業務にあたっていた時に使用したことはありませんでした。
私がエンジニアとしてのキャリアを開始したころにはまだ存在してなかったと思います。
後年になってその存在を知りましたが、担当していたメカトロニクスの回路は結構複雑ではあったものの比較的低周波で動作するものだったこともあり、SPICE解析の必要はありませんでした。
先にAuro3DさんのSonusのために作ったフィルター回路(Auro3DさんがK&Kフィルターという名前を付けてくださいましたが単なる1次のフィルターの組み合わせなので恥ずかしくて自分では使いづらいです)の確認のため、今回初めてSPICEを使ってみました。
パッシヴの1次フィルターなので構成はいたって簡単。でも、プリとメインのアンプ間に入れるものなのでプリアンプの出力回路とメインアンプの入力回路の影響を受けることになります。
このようなパッシヴのフィルター回路を目論見通り動作させるには入力インピーダンスをプリのインピーダンスの10倍以上にすること。
そして出力インピーダンスをメインアンプの入力インピーダンスの10分の1以下にすること。
条件が満たされれば両アンプの影響はほぼ無視して手計算で時定数を決めればいいわけです。
今回はSonusのスピーカーの内部回路やクロスでの重ね合わせ特性などが不明ですし、目的を考えてもフィルターの精度を上げることはほとんど意味を持ちません。
従ってすでに手計算で設計は完了し、Auro3D邸での総合特性も問題なかったことからこのプロジェクトは完了しています。
しかしながらプリアンプAV8805の情報の一部に誤りがあったようなので私の勉強も兼ねてSPICEを使って再確認を行ってみました。
元々マランツはAV8805の出力情報を公開していませんし、問い合わせをしても一部は非開示でしたのでこれについてはネット上で得られる情報を基にして私が推定した値を使っています。
全体の回路と信号の流れは以下の通り。
[:image1:]
AV8805の出力回路はあくまでも私の推定なので誤解を避けるため抵抗値、コンデンサの静電容量はこの図からは省いてあります。
得られた伝達特性は以下の通りです。
[:image2:]
ほぼ目論見通りでこれによって特に手直しする必要はなさそうです。
SPICEはプリとメインのアンプ間、もしくはDACと多chプリメインアンプ間でパッシヴ・チャンデバを構成されている方にも便利に使える解析手段だと思います。
ただ、基本設計はあくまでも自分の頭で考え、手計算で行ってメドをつけてから最後に念のため使うのがSPICEという順番だと思っています。
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