先日、久しぶりにGRF邸を訪問する機会を得ました。
既にblogでTW5をサブ・ウーファとして追加された写真を拝見し、それを体験したパグ太郎さんたちの記事を読んで、期待に胸を膨らませてうかがったのですが、想像を超えた音でビックリしました。なかなか言葉で表現することは難しいのですが、当日の印象などを訪問記としてまとめてみました。
まずお部屋に通されたときにTW5の厚みと専用のLPFを構成するネットワークボックスの大きさにビックリ。写真では見ていたわけですがさすがに実物は迫力が違います。フィルターのスロープは12dB/octでカットオフ周波数は50Hz。この周波数でカットするためには当然ながら巨大なコイルが必要になるわけです。LPFのコイルはファインメット使用とのこと。
このくらい低い周波数でカットする場合にはパワーアンプの前にフィルターを置くチャンデバ方式の方が経済的で特性上の利点も多いと個人的には思っているのですが、GRFさんはこの方式と12dB/octにこだわりをお持ちのようです。この選択の理由については私は十分理解していないのですが、後から聴かせていただいた音が説得力ありすぎなので、もう何も言えなくなってしまいました。
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(部屋の写真はGRFさんからご提供いただきました)
指定席に座り、後はGRFさんが繰り出されるディスクの音に身をゆだねていたのですが…
聴かせていただいたのは以下の写真のディスクたち。
上の段から左から右へ…
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前回、私が聴かせていただいた時もトロバドール40が奥にあってその空間の表現もすばらしかったのですが、なにかが大きく違います。空間のスケール感と言ったらいいのでしょうか、カンターテ・ドミノやオーケストラのコンサートホール録音でそれを顕著に感じます。マーラーをいくつか聴かせていただいたのですが、不思議なことにピアニシモにすごみが感じられるのです。GRFさんが試しにとTW5用の駆動アンプSD05をオフにして聴かせてくださったのですが、ピアニシモで演奏されていて低音などほとんどないところだったのに違いが感じられます。TW5は50Hz以下でしか働かないので音らしい音は出ていないはずなのですが…
ハイティンクのマーラー#4は新旧の盤で聴かせていただいたのですが、古い方は確かデジタル録音が始まったばかりのころのもの。ベースが静かに音を刻む部分の実在感が気持ちよく、まさに生で聴く感じを彷彿とさせます。
GRFさん自身もこのシステムで聴くと前には気づかなった音が聞こえるとおっしゃっていましたが、この空間表現がそうさせているのでしょう。再生音量はそんなに大きくはないのですが、その比較的小さい音でもこのようなホールの空間が感じられる音だと耳に心地よく小さい音で演奏されるパッセージもうっとりとしてしまいます。まさに生のコンサートで聴くピアニシモと同じです。
それでいてオーケストラの瞬間的なフォルテッシモでバシッと出て欲しいところはしっかりと出るので欲求不満になることもありません。こういうところがガツンと来ないとついボリュームをあげたくなるわけですが、その必要が感じられません。聴感上のダイナミックレンジが非常に大きく感じられるのです。
私は若いころはマーラーが好きでよく聴いていたこともあったのですが最近はあまり聴かなくなっています。長時間集中して聴くだけの体力がなくなってきたこともあるのですが、ガツンと来て欲しいためについつい音量を上げて聴くので疲れてしまうからかなと思います。GRFさんの装置は音も柔らかく耳あたりがいいし、この空間表現のために大きな音でなくても細部までよく聴こえるので、これだったら聴き疲れすることなく楽しめそうな気がします。ラ・ヴァルスの冒頭部分やストラヴィンスキーの火の鳥もそうなのですがベースのごそごそがこんなに楽しく聴けるのは本当に不思議でした。
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女性ヴォーカルや歌曲の人の声も前回の時と同様、フルレンジのスピーカーが鳴っているように感じさせるウルトラ・スムースなのですが、前回も聴いた白井光子さんのブラームスはさらにパワーアップした感じで存在感が半端でない印象。フルレンジでは小径のコーンスピーカーが高域でちょっと荒い感じになるのに対し、こちらは最高域までその柔らかさが保たれるところに違いを感じます。しかも柔らかいのに解像度があってピアノの高音の響きも魅力的。
最後に聴かせていただいたクレーメルとアルゲリッチのプロコフィエフ、バイオリンソナタもヴァイオリンはきつくなることなく、かといってピアノの解像度が甘くなることもなく絶妙の表現でした。
ただ、このシステムは録音時に空間的の音響情報がうまく録られていない音源についてはそれをさらけ出してしまう厳しさも持っているようで、ちょっとだけ聴かせていただいた某音源(写真にはありません)では拙宅ではそこまで違いがわからなかった音の違いをはっきりと感じさせる再生でした。前回うかがった時も別録音でそう感じたものがありましたが、その違いの出し方もパワーアップしたのかもしれません。
ウチに帰ってから聴かせていただいたRCOの音源をいくつか再生してみました。ウチではマルチchの再生です。低音は十分出ているし、オーケストラの各楽器の音はクリヤーで奥行き感もあり空間的位置は明確なのですが、GRF邸に比べると楽器の間を埋める空間上の何かが足りない感じ、残念ながら雰囲気感が全く違うのです。これはウチのシステムだけの問題ではなく、すごくうまく鳴っている普通のシステムでも同様な傾向なのでGRF邸のシステムが特別なのだと思います。
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(部屋の写真はGRFさんからご提供いただきました)
今回は衝撃を受けました。コンサートホールのオーケストラがそこに現れていたからです。初めての体験でした。
GRFさんがジャーマン・フィジックスを使ってホログラフィック再生を始めたときからその独特の世界に驚ろかされていましたが、今回は異次元というレベルに達したのではないかと思っています。
GRFさん、改めましてありがとうございました。あの音はウチでは無理ですから、ときどき呼んでいただいてじっくりと音楽を楽しませていただきたいなぁなんてムシのいいことを考えています。
それと今回は映像はなかったのでそれも次の機会を楽しみにしています。
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