■誤解シリーズ計3回の始まり「障害波遮断変成器」
■誤解その①—————————————————
ノイズカットトランスはみんな同じ?
いいえ、「ノイズカットトランス」は電研精機研究所の商標です。
よくみると TM と付いていますです。Rじゃないので登録商標より少し緩い感じですが。
例えば「ウォークマン」はソニーの登録商標です。そこまで厳密じゃありませんが「ノイズカットトランス」といえば電研精機研究所です。
[:image1:]
■誤解その②—————————————————
絶縁トランスはノイズカット?
違います。絶縁トランスはノイズを伝達します。ノイズカットではありません。
下はAudioDesignの代表者様の【著書】から引用のアンプ電源トランスの模式図。
[:image2:]
1次側と2次側は絶縁されていますね?
(オーディオアンプの電源トランスそのものです。アイソレーショントランスだ!と銘打っていませんが、普通はこの通りアイソレーションです。ノイズカットトランスではありません。)
このトランスにピンクノイズを入力したらどうなるでしょうか?
→出力にピンクノイズが出てきますよね。
1MHzの正弦波とホワイトノイズを入力したら?
→やっぱり1MHzの正弦波とホワイトノイズが出てきますな。ノイズ通すじゃん。
入力信号が出力信号に出てくるのがトランスの働きです。
電線巻いただけの代物に、人間のような「信号」と「ノイズ」を峻別する機能は備わっていないから・・・高性能な絶縁トランスほど数Hzの超低域から数MHz?のノイズ領域まで広帯域によく伝達します。逆にノイズを通さない・・・そういう選択的なところが『特許技術』だったりするのかもしれませんよね。(端子間にコンデンサーを挿入、いわゆるパスコンを装着してノイズをバイパスする見た目にはノイズフィルターと合体したトランスもありますが、これは単純過ぎて特許になりません。それでいて価格が高価だったりします。)
余談ですが、省エネが期待されるアモルファスコアの柱上トランス。
これは従来のトランスよりもノイズもよく伝達するのではないかと推測されています。
[:image4:]
■誤解その③—————————————————
トランスの構造なんてみんな同じ?
いいえ、電研精機研究所はちょっと違います。特許も多数あります。
先に紹介しました絶縁トランスの構造は、
「同軸同心」といわれるもの。1次の信号がそのまま2次側に伝わる代物。
一方、電研精機研究所のノイズカットトランスは・・・
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1.同軸異心
2.異軸異心
3.異軸異心ツイスト
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主にこれらのどれかに該当するとされています。
※http://www.sanwa-denki.com/kaisha/denken/shiryou03.pdf
特に異軸異心ツイスト形は異形です。
電気学会論文誌、117A-12、1997 / 論文、「障害波遮断変成器のコイル配置に基づいた各種構造と特性」より図13です
[:image3:]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejfms1990/117/12/117_12_1213/_pdf/-char/ja
先の異軸異心ツイスト形の参照論文と同じリンク先ですが、その中の表1『同 軸同心配置とその他の配置の減衰率の違い』を参照ください。同軸同心がいかに「減衰できないか」がよく分かります。また、異軸異心ツイスト形があまりに優秀過ぎて、これに追随するには同軸異心形などをカスケードにしないと無理です。コンデンサーを使ったノイズフィルターはカスケードに接続しても、コンデンサーの合成容量で全体として1個の別特性のフィルターになるだけで増やしても意味があまりなかったりしますが、直列にして性能をそのまま上乗せできるのは電研精機研究所のNCTの特徴だったりします。
誤解シリーズここまで■
●まとめ
最近話題の?電研精機研究所のNCT-I3とかNCT-I2の良いところはコンデンサーを使わないで、ノーマルモードノイズに対抗するところです。ホームページでも
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『低価格ながら、通常の絶縁トランスやシールドトランスでは防止できない
ノーマルモードノイズを広帯域の周波数にわたり遮断し、
装着機器の耐ノイズ性を確実に向上させることができます。』
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と紹介されています。
コンデンサーをパスコン的に使うと、LC共振を起こす周波数がでてきて、
逆にノイズを増す逆効果がでる場合があるようで・・・
電研精機研究所のNCT-I3とかNCT-I2はこれを嫌っている様子です。
オーディオ的にも、勝手にコンデンサーがシステムに追加されるのは、
音響の全体コントロールを難しくするので好ましくありません。
だから、コンデンサーが無い NCT が イイ。
↓はNCT-F1型の使用方法ですが「端子台の蓋は閉じろ!」と細かい指示があります。
http://www.sanwa-denki.com/kaisha/denken/shiryou02.pdf
普通のトランスと一味も二味も違うところを・・・感じ取って頂けたでしょうか?
★繰り返しますが<<ノイズカットトランス TM>>は電研精機研究所だけ。
各社それぞれ表現が違うことにご注意下さい。
よくみると製品内にコンデンサーが付いていたりします。
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「ノイズカットトランス」株式会社電研精機研究所
「ノイズレストランス」ユニオン電機
「ノイズ防止トランス」 豊澄電源機器株式会社
「ノイズフィルタトランス」株式会社エヌエフ回路設計ブロック
「ノイズレストランス」東洋電源機器株式会社
「ノイズ減衰トランス」布目電機株式会社
「トラフィー(障害波防止用変圧器)」富士電機
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コンデンサー(パスコン)付けてもノイズは迂回するだけで消えてなくなる訳ではないという記述は・・・伊藤健一さんの書籍にもあった気がします。
まとめ ここまで●
2021/01/14追記 ここから
電研精機研究所の名は出てきませんが大きなノイズカットの使用例。
ヤマハのプロオーディオ分野です。
ヤマハ【導入事例】札幌文化芸術劇場 hitaru 様 / 複合施設 / 北海道
Japan / Hokkaido, May 2019
写真提供:札幌市民交流プラザ(公益財団法人 札幌市芸術文化財団)
(隔月刊PROSOUND Vol.210 2019年4月号より転載。撮影:中山 健)
[:image6:]
奈落に設置された音響電源用ノイズカットトランス。近年ビル内の制御システムは、高周波を使った技術が一般的。音響側が影響を受けないよう、電源にも自らを守る対策は必須。
[:image7:]
札幌文化芸術劇場 hitaru – 劇場演出空間技術協会 jatet_journal_2019-20_vol17
音響調整室、アンプ室、舞台袖などの各音響電源分電盤にノイズカットトランスを配置し、音響機器へ供給される電源ノイズを除去する工夫をした。ノイズカットトランスの容量は、音響調整室50kVA、アンプ室60kVA、舞台下手、上手各60kVAである。もちろん、音響信号用に音響専用接地である。
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【build up your studio】鈴木 大輔 氏 & 三神 貴 氏 インタビュー | Rock oN Company | DTM DAW 音響機器 より
『SONA、建設会社、avexチームが一体となって作り上げた地下スタジオ』
マシンルームは avexのチーム の こだわりが素晴らしくて、家電関連と音楽用途で配電盤から完全にスプリット構造にしてもらいました。(写真:1 , 2)
私の好みのスタジオ名を聞かれ答えた後、そのスタジオの電源構造を調べ、三菱とシーメンスの電源を聞き比べて、ケーブルも吟味してより近いサウンドになるよう選んでくれました。 ステップアップトランスとノイズカットトランスもマシンルーム内に備えており(写真:4)、スタジオ内の壁コンには、異なる電圧機器を即座に使用できるよう100V、115V、 120Vなど選択肢がすでに用意がされています。
[:image9:]
~後略~
2021/01/14追記 ここまで
2021/01/15追記 ここから
ノイズカットトランス NCT-I のノーマルモードノイズの減衰特性図です
100MHz から なんと1GHz までの プロットです。ここまでの高周波を公開しているメーカーは他になかなか見つけるのが難しいのでは?
ちなみに NCT-I は安価なモデルにも関わらずコレなんですが、NCT-Gなど高性能モデルはこの帯域を更にもっと減衰します。
[:image10:]2021/01/15追記 ここまで
2021/03/22追記:古くは1980年代から電研精機研究所の<<ノイズカットトランス>>を販売してきたテクニカルブレーン社さんより、かつての納入実績をカタログから
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[:image5:]2021/03/22追記ここまで
余談ですが、
電研精機研究所さんに対して正面から喧嘩を売る?ロックな業者さん。
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