トランスをわざと唸らせて考察する

日記・雑記
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ヒジヤンさんのトランスの唸りの話題に於いて、
どうして半波整流の機器があるとトランスが唸るのか?
自分なりに考察してみました。

■はじめに
トランスは唸る。原因は、
磁化するときにコアが膨らんで、磁化が無くなると元に戻るから。
そして、トランスの唸りには2種類ある。
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1.高負荷のとき(磁気が強いとき)
2.1次側に直流が重畳しているとき
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本日は、後者の直流の重畳についてだけスポットを当てます。

■要旨
直流を意図的に重畳させて、
①パワーアンプのトロイダルトランスの唸りをマイク(ECM8000)で拾って観察する。
②パワーアンプのトロイダルトランスに流れ込む電流を、電流プローブを用いて電流波形として観察する。

■普通の電流波形と唸るときの電流波形(下調べ)
・new_western_elec様の2019年3月14日 (木)付の記事
トランスのうなり 電流波形観測」より
———————–引用ここから——————–
[:image1:]
ピンクの正弦波っぽいのが電圧で黄色い線が電流です。電圧がきれいな正弦波ではなく歪んでいるのは、ごく普通です。殆どの家電機器が電圧のピーク付近から電流を消費するためこのように山が潰れます。(白熱電球やPFC搭載電源はちがいます)

上の場合も整流回路への電流消費は正弦波の山のときだけ発生していますね。

[:image3:]
———————–引用ここまで——————–

・謎の電流について自分も追試してみました。
拙宅の電気カーペットは無害でしたので、半波整流を自分で作ります。
今回のマッチポンプで犯人役になるのが↓の半波整流で点燈する裸電球です。
[:image4:]
これを使うと、パワーアンプのトロイダルトランスの唸りが増加するはずです。
供試パワーアンプは共立電子様のWonder Pureシリーズから「WP-3110F」。https://av.watch.impress.co.jp/docs/20081204/kyo.htm
[:image5:]
追試のための構想図
[:image6:]

■普通の電流波形と唸るときの電流波形(結果編)
おおむね new_western_elec様の記事と同じような結果が得られました。
00.上下対象にパワーアンプのコンデンサーへの充電電流が観測される
[:image7:]
01.上側に親知らずが生える(半波整流のDiodeで直流重畳させた)
[:image8:]
02.下側に親知らずが生える(半波整流のDiodeの向きを01比で逆転)
[:image9:]

■考察その1
さて、結果から得られたあの親知らずの歯のような電流は
いったい何なのでしょう?
パワーアンプとは直接関係のない家庭内の機器の使用によってはあのような電流がパワーアンプのトランスに生じてしまうわけです。
ノイズという観点からも、振動という観点からも音質にとって良いものでないことは明らかです。
自分はこの正体は『突入電流』であろうと推測します。
突入電流とは、トランスの2次側が開放状態であっても、トランスのコアに残留磁気があるとその残り方によっては大電流が流れるというものです。
詳しくは↓こちらで。
豊澄電源機器株式会社様の製品情報のQ&Aより
トランスにおける突入電流とはどういう状況でおきますか?
[:image2:]
商用電源に直流が重畳する状況では、この残留磁気の残り方に偏りが生じて毎サイクルで『突入電流』と『似た』電流を生じさせるのではないでしょうか?
(それが発生するのは上図の①と③のゼロクロスポイント。)
それを裏付けるような情報が、またまた、new_western_elec様の2013年3月 6日 (水)付の記事
トランスの突入電流
[:image10:]
画像をこれ以上貼る事ができないので↓こちらのB-Hカーブを眺めながら?
new_western_elec様の記事「トランスの突入電流」を読んでみて下さい。
最後に、ほんの少し引用させて頂きます。
———————–引用ここから——————–
普段、電源が入っているときには、上のヒステリシスカーブの外側をぐるぐる回るような軌跡を通るのですが、電源投入時には、センターからスタートして磁気飽和してしまいます。

また、電源を切ったタイミングにより残留する磁気が大きくなることがあり、そこからのスタートで運悪く同じ方向に磁気を加えるように電圧が印加されればゼロスタートよりも更に飽和します。

コア材が磁気飽和すると、1次側電流がものすごく増えます。 

例えが微妙ですが自転車のペダルを漕いでいて、磁気飽和していないときは後輪へと動力が伝わっていますが、磁気飽和すると、チェーンが外れたようにペダルが空転してしまうようなイメージでしょうか。 1次側に大電流が流れ、しかも2次側に伝わらないという状況になります。

EIトランスなどは、トロイダルやRコアに比べて効率がよくないため、同じ容量のトランスであればコア材が沢山使われます。  その結果、突入時に磁気飽和しにくく突入電流はさほど大きくありません。 効率の悪さが逆に救われているのかもしれません。
(※ ここでの効率とは重量に対して電力容量VAの比率のことです) 

また音楽信号のように瞬間的に大電流が流れるようなパワーアンプに使用したとき、磁気飽和しやすく、1次側電流が加速度的に増えてしまう現象が発生します。 

また磁気飽和に近づくと磁束漏れが一気に放出されるようです。

ですので、Rコアやトロイダルを使用するときには、容量に余裕のあるトランスを選択しておかないと、音質的に問題が起こる可能性があります。こちらでも、トロイダルに関してはいろいろ指摘されています。

ちなみに、特注でトランスを作ってもらうときには、磁束密度を低めに設定してもらうことが可能です。オーディオアンプ用として使うときは、磁束密度を低くする方が磁気飽和が起きにくく、音質が良いとされています。 突入電流を低くしたいときにも有効です。

電源を切った瞬間には、コア材に磁力が沢山残っています。 その磁力の方向と同じ方向に向かう位相で電源がONになると、より一層大きな突入電流が発生することになります。

電源の投入タイミングは商用50Hz交流のどのタイミングになるかコントロールできませんので電源のON/OFFを繰り返すことで、巨大な突入電流で問題が起きないか検証する必要があります。

コア材に残る残留磁束は1日ほど経つと、ほぼ抜けるらしいです。
———————–引用ここまで——————–

とても分かりやすい解説で参考になります(^ー^

■おわりに
忘れていましたが・・・一応トランスの唸りをマイクで拾っていました。
動画にしてみましのでご興味のある方はご覧ください。
当たり前ですが、直流を重畳する電化製品(今回は裸電球)の電気を
電研精機研究所のNCT(ノイズカットトランス)から供給したならば、パワーアンプのトロイダルトランスの唸り音は大きくなりません。※一瞬ぶぅぅぅんと言ってからすぐに収まります。唸るトランスの前に絶縁トランスを配置すると唸りが改善するかもしれませんね。(トランスは直流を伝送できない特性から、直流重畳と縁が切れるので。)
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【半波整流が起こすトランスの唸り,電研精機NCTの有効性】
https://youtu.be/FWZS0p63Zdw
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■考察その2
案外、直流磁気が唸りの原因であるならば・・・・
動画で見せているように逆方向の直流をカウンターで与えてやったら唸りを軽減できる可能性があります。どれくらい直流を重畳させるかは、裸電球の明るさ(ワット数)やその数で調整できる訳ですから。プラスに重畳させるかマイナスに重畳させるかは、半波整流のダイオードの向き次第です。
重畳する直流の量に応じて、カウンター量(裸電球の明るさ)を自動調整するような事をしたら良い製品を開発できるかも?特許とれるかな?DCサプレッサーと違い、アンプに直列に素子が挿入されないので音質への影響は無いものと想像されます。(考察が正しくて、効果があれば・・・ですが)(親知らずの向きと大きさはある程度コントロールできる。実験するまでもなく、今回発生させた親知らずは、もう一つ裸電球と半波整流のセットを作ってダイオードの向きを逆にコンセントに挿したなら、解消できるはず。二つの負荷が、合わせて両波になるからです。)
少し前にも書いた気がしますが、ノイズでもなんでも、問題というか「犯人」を見つると次の「対処」への作業がスムーズに行えます。

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