オーディオシステムで周波数特性は簡単に変更できますが
位相特性をフラットにしようとするとマイクと専用ソフトが必要だったりします。
以前、DALI Zensor1という安価なブックシェルフで、
REWとRePhaseを使って位相フラットを試したことがありました。
再生ソフトはJ-River Media Centerで、
前述のソフトで作成した位相補正のフィルター(確かwav)を、
JRiverのコンボリュージョンフィルターに突っ込んでみたのでした。
安物のスピーカーがワンランク上の音になればと目論んだのですが、
そう旨い話はあるはずもなく、定位がよくなった程度で、測定や
フィルター作成などの手間をかけて運用するほどの事もないかな・・・
という印象でした。
デジタル補正(位相)は、天と地をひっくり返す程の変化はもたらさない。
位相は回転していて当たり前?見た目がキレイな位相のグラフになっても、その見た目に似合った音に成ることはありませんでした(私個人の感想です)。
そこに時間と労力を注ぎ込むよりも、ワンランク上のスピーカーに買い換えた方が幸せになれる・・・そんな感じ。で、Zensor1は退役して一つ上の?Opticon1に変化しました。
最近の事情をリサーチすると、世の中もう少し便利になっていて
ソフトとマイクを買えばもっとお気楽に簡単に
デジタル補正の恩恵を受けることができるようになっていました。
位相補正のフィルターを作るのはちょっと職人芸だったのですけど、
そこも自動でやってくれます。ソフトウェアの進歩。
その名は「Dirac Live for Studio」です。
[:image1:]FIRでどうしても発生する、プリリンギングも抑制してくれるという。
PCオーディオへの適用のほか、機種は限定されるもののPC抜きでのデジタル補正再生が可能のようです。
今回PCオーデイオでありますJriverに対しては「コンボリュージョン」ではなく「VST」で組み込むことになります。
やり方は既に公式(aeoliand)blog「デジタルプリアンプを作ろう」にまとめられていました。
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1.デジタルプリアンプを作ろう
3.Dirac Live for Studio のインストール
5. Dirac Live for Studio の組み込み
6.Dirac Live for Studio デジタル室内音響補正の検証 -全15回-
※並びが新しい順なので、第1回は一番下の方にあります
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自分の環境では、推奨のDaytonAudioの「マイク」と「JRiver」が
既に揃っているので、あとは 「Dirac Live for Studio」を購入するか
お試し版のDLですぐに試すことができます。
[:image2:]情報が出てきてからまだ日が浅いので認知度は低いですが暫く待てば、雑誌社や個人ユーザーからレビュー報告が上がって来るだろうと予想しています。
私は個人的にはそれほど乗り気ではないのですが、
自作系のホーンスピーカーをお使いの人は、好きなスピーカー配置で
タイムアライメントを揃える事ができるはずなのでとても 『強力な武器』 です。
これが市場に投入される前までは、
OmniMicV2などでアライメントを測定しながら各ユニットの位置を調整
するなどしていたので、置き場所の自由はありませんでした。
そもそも巨大なホーンをお使いの人は、デジタルチャンネルデバイダーの更に高機能なものを採用していたりしますよね。それをソフトウェア的に実現するものと考えればよいです。ただし、音源がデジタルに限定されます。
アナログレコードの再生には基本的に使えません(A/Dしながら?あるいは録音してデジタル化すれば別ですが)。
どんなシステムに特に有効かなあ・・・と、
思いを巡らせると丁度よさそうなものが記憶にヒットしました。
ピアニスト・仲道郁代さんの練習室(地下)のオーディオシステムです。
ゴトーのホーン、マルチアンプシステムで、
Phile-webコミュニティでも過去に取り上げられたくらい有名です。
http://www.stereosound.co.jp/web_store/index2/backnumber/ss/
StereoSound誌2008年夏No.167にその記事がありましたので紹介します。
2行上のリンクによると、『絶版』となっていました。
購入されたい方は中古を探すことになります・・・
故人となってしまった菅野沖彦のレコード演奏家訪問。懐かしい(^^
[:image3:]PHOTO:Toshikazu Aizawa
せっかくなのでこの記事をキーで起こしてみます。
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レコード演奏家訪問 連載46
この「レコード演奏家訪問」は、私が本誌119号で提唱した
「レコード演奏家論」にもとずいて専門家、愛好家の別を問わず多くのオーディオファイルを訪問し、
その「レコード演奏家」ぶりを広く紹介するページです。
「レコード演奏家論」は決して勝手気ままな再生を推奨するものではありません。
私は「レコード演奏家論」を「新・ハイファイ論」であるとも考えています。
従来の「ハイファイ論」がシグナル伝送論と機器の物理特性など電気音響世界の枠組み内での
議論であったのに対し、「レコード演奏家論」は録音再生音楽鑑賞という
新しい「芸術鑑賞論」としての音響美学的提案です。
しかし、伝送論や電子機器の物理特性を軽視あるいは否定するものではありません。人間性と音楽鑑賞を重視した趣味論ですから、
畢竟、従来の「ハイファイ論」と対立する部分も認められるでしょうが、
そこに、本論の意味もあると考えています。つまり「オーディオ機器楽器説」に通じる部分や
「再生における固有現象と創造性」などの指摘がそれだと言えるでしょう。
「レコード演奏家」は「科学の樹」も「音楽の森」も見ることの出来る人間像が理想です。
優れたレコード演奏家との出会いを求めて、この訪問を続けて行きたいと願っています。
菅野沖彦
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【演奏装置】
ゴトーユニット
SG30W x 2 (ウーファー)
SG505TT+200 (ミッドバス)
SG370+S600 (ミッドハイ)
SG16TT (トゥイーター)
スーパトゥイーター
パイオニア PT-R100
ユニバーサルプレーヤー
パイオニア DV-AX10
プリアンプ
アキュファーズ C260
イコライザー
アキュフェーズ G18
クロスオーバー
ソニーエスプリ TA-D900
パワーアンプ
アキュフェーズ P102 x 4
ゴトーユニットは後藤精弥氏によって1965年に設立されたスピーカーメーカーであり、仲道さんの大掛かりな5ウェイシステムはそのゴトーユニットのドライバー群を中心に構成されている。低音を受け持つのは2基の30cm口径ウーファーSG30W。エンクロージュア上でひときわ目立つ開口径54cmの大型ホーンS200に組み合わされているのはSG505TTコンプレッションドライバーである。その左下がミッドハイを受け持つS600ホーン+SG370コンプレッションドライバーで、右(中央)がSG16TTホーン型トゥイーター。右端はベリリウム振動板を採用するパイオニアのリボン型スーパートゥイーターPT-R100であるが、このユニットのみ外付けハイパスフィルターDN8Pを使用している。
[:image7:]—————————— ←
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[:image4:]
【菅野】
驚きましたね。プロの音楽家のあなたが、ご自宅にこれほど本格的なオーディオシステムを揃えていらっしゃるとは。聞くところによると、ピアニストの清水和音さんに勧められたとか。
【仲道】
そうなんです。清水さんのお宅でゴトーユニットの音を聴かせていただいて、わぁ凄いって(笑)。そうしたら、清水さんにゴトーユニットを勧めた方が山口県にいらっしゃるとうかがいましたので、その方のお宅をお訪ねして、音を聴かせていただいたんです。壁の中にホーンが入った大きなシステムで、部屋に入って、わぁ凄いって、そして音が鳴ると、さらに、わぁ凄いって・・・・・・。そのときに、今日お聴かせしたカラヤン指揮ウィーンフィルのブルックナーの7番をかけてくださったのですが、まるで目の前にオーケストラがいるようでした。
【菅野】
感動されたわけだ(笑)。
【仲道】
ええ。それで思わず、「私もこういう音で聴いてみたいわ」と言ったのが始まりです(笑)。でも、恥ずかしいお話なのですが、私はまったくの機械音痴でして、この部屋にある装置はほとんどがその山口の方が選んでくださったものなんです。
【菅野】
細かい調整はどうなさっているんですか?
【仲道】
ゴトーユニットの後藤さんが親子でセッティングにいらしてくださいまして、その後は山口の方などが面倒をみてくださっているんです。
【菅野】
なるほど。音楽家は、録音されたものだからと言って、レコードに大きな期待を持たないで、自宅ではきちんとした装置で音楽を聴いていない人が多いですが、あなたは珍しいケースですね。
【仲道】
ただ音が好きなだけだと思います。それとラッキーなことに、私にはオーディオの素晴らしさを気づかせてくれる人がまわりにいましたから。
【菅野】
体験したって気づかない人は多いですよ。また、素晴らしさに気づいたからといって、実際に導入される方も少ないと思うんです。
<空気が動いている 感じが好きです>
[:image6:]
【仲道】
機械のことがまるでわからない私が、このゴトーのスピーカーを入れたのは、「ピアノの音が一番フラットに聴こえるよ」って言われたことも関係しています。けっして意図的に自分の好みで、まろやかな音にしたいとか、クリアーな音にしたいという気持ちから入れたわけではないんです。そして同時に、もし無色透明な再生装置があるとしたら、その装置で、たくさんの演奏家がディスクの中にいったいどのような音を入れているのかということを、リアルに克明に聴いてみたいという気持ちが頭にありました。かといってスタジオにあるモニタースピーカーのようなものがほしかったわけでもないんですけれど。
【菅野】
それは難しい注文だ(笑)。
【仲道】
ええ(笑)。もちろん、今でもこの装置の音に100パーセント満足しているわけではないので、先ほどのブルックナーの7番でしたら、もう少しまろやかにしたい、もう少し低音を締めたいなどはありますが、残念ながら、それはどうしたらいいのかはわからないんです。イコライザーは自分でもいじってみることはあるんですが、私ではとても・・・・・・。
[:image8:]
【菅野】
ブルックナーの7番は録音のキャラクターもありますね。最初に聴かせていただいたブルックナーが、バランス的に上の帯域が少しきつくて低域に部屋の影響のが若干あったので、あなたも気になさったのだと思いますが、他のレコードを聴かせていただいたら、トータルのバランス良く、大変にニュートラルな状態になっていると感じました。
~ 中略(調律について等) ~
【菅野】
十分ニュートラルな状態に調整されていると思いますよ。
【仲道】
お墨付きをいただけたみたいで(笑)。私がこのゴトーのシステムの音で好きなところは、空気の振動、空気の緊張感のようなものが、埃のない状態で聴こえてくるところです。オーケストラのフォルテッシモを再生したときは、スピーカーの動かす空気を全身で受け止めるような感じになります。空気に身体中の細胞を粉々にされるような感じといったらいいのでしょうか。逆にピアニッシモでも、とにかく音は小さいけれども、聴こえてくる音の空気の中に、様々なニュアンスというか、音のもつ成分がたくさん含まれていて、それを感じることができます。とにかく、空気が動いている感じがほしいんです。
【菅野】
非常に大切なことですね。
【仲道】
もっと技術が進歩したら、小さなスピーカーでも、このような空気が動く感じが出るようになるのでしょうか?
【菅野】
それは、なかなか難しいことでしょうね。あなたが弾いておられるピアノの大きさと一緒で、アンプなどの他の部分は小さくなるでしょうが、スピーカーは空気を動かさないといけませんから。
[:image9:]
【仲道】
やっぱり・・・・・・。私は昔からこの「空気が動く感じ」が好きなんです。小学5年生のときに、自分の部屋に大きなステレオ装置を入れてもらいまして、それからは毎晩儀式のように寝る前に部屋を真っ暗にして、ルービンシュタインの弾くショパンのポロネーズを聴いていたんですが、大音量でかけると、ゾワゾワッって鳥肌がたつんです。大きい音ですから、A面が全部終わるまで眠れないんですが(笑)、当時から音を全身で受け取める感じに魅力を感じていたんでしょうね。
【菅野】
素晴らしいエピソードですよ。僕は以前から、あなたが書かれたものや、喋ったものに「空気」という言葉がたくさん出てくることに注目していたんです。楽器の演奏家で、これだけ空気という言葉を使う人も珍しいです。
【仲道】
確かに、よく使っているかもしれません(笑)。でも、ピアノの音も空気の振動ですから。
【菅野】
そうでしょう。それは非常に大切なことです。僕やオーディオに関わる人たちは常に空気に関心があって、一生かかって空気の動きを少しでもより正確にしたいと思っているんです。
【仲道】
それはよくわかります。私もこの部屋では、多少ツーンとこようとも、奏者の息遣いから弓の触れる音、震える音、管楽器奏者の息の音、ピアノでしたらダンパーが弦を押さえるシュッという音、そこまでの空気の動きを感じたいんです。ある意味、それらは音楽にとって余計な部分かもしれませんけれど、それぐらい聴こえるということは、音像がしっかり見えてくるということですから、それを聴きたいと思うんです。あと、お聴かせしたアシュケナージの弾くショパンの24の前奏曲では、1曲目の終わりの部分などで鳥が鳴いているのが聴こえるんです。多分、録音会場の遮音が悪かったのだと思いますが、これが曲の雰囲気にひじょうにあっていて、とても素敵なんです。
【菅野】
粋に聴こえますね。
【仲道】
これはこのゴトーの大きな装置で聴いて初めて発見したことです。この装置を入れてよかったと思うことはほかにもあって、それは例えば、色々な音が立体的に聴こえてくることです。音が下のほうでよどんでいるのか抜けてくるのかもわかりますし、音のエネルギーの動きが軽く感じられるんです。ですから、音がぴょんぴょん飛んでいるのか、ふわふわ飛んでいるのかも見えてくるようで、音の表情がよくわかるんです。こうしたことは自分のピアノの演奏にも凄くプラスになると思うんです。この部屋以外にも小さな装置を置いていますが、そちらで聴くと同じディスクでも、音がベタっとして動かなくて、縮こまっているように感じられるんです。
【菅野】
驚いたな。まるでオーディオの人と話をしているみたいですよ。やはり、あなたは音に対する関心が特別に強いんだ。
【仲道】
それはもちろんです。演奏するのに何が大事って、音ですから。
<真実の音はいったい どこにあるのだろうか?>
【菅野】
当然、この装置でご自身の演奏を録音したソースを聴かれるわけですよね。
【仲道】
もちろん聴きますが、本当は嫌いなんです。自分の裸を見ているみたいで、見たくないものを見てしまった気分です(笑)。
【菅野】
それはね・・・・(笑)。今日は先ごろあなたが全曲録音を完成させた、ベートヴェンのピアノ・ソナタの中から、第29番「ハンマークラヴィーア」と第32番を聴かせてくださいましたが、ご自身ではこの録音に満足されていますか。
【仲道】
自分のディスクをお聴かせするときはついついボリュウムをしぼっちゃいますね(笑)。全集の中でも、音として気に入っているのは第32番なのですが、よくここまで録ってくださったとスタッフに感謝しているのは、第29番「ハンマークラヴィーア」なんです。特に第3楽章の途中で音色がオーロラのように変化する様子を、マイクできちんととらえてくださっていて、それがディスクから聴こえたのが、とても嬉しかったですね。
【菅野】
オーロラというのは?
【仲道】
展開部の和声がどんどん変化する部分で、ソフトペダルを踏んで離して、踏んで離してというところがあるんです。和声が微妙にずれていき、現世のような、あちらの世界のようなといった様子で、ゆらゆらと漂ってオーロラのように移り変わるのですが、その様子が自分の装置から、音として聴こえてきたんです。
【菅野】
そのような音で自分の演奏を残せる時代に生まれたのはとても幸せなことですね。それも演奏したあなた自身も納得できる音というのですから。
【仲道】
そうですね。音楽というのは、時間とともにある芸術ですから、ナマの演奏会のときは、最初の一音が鳴ったときから始まる、魔法のようなものを楽しむのですが、録音の場合は残るものですから、そのときの曲に対する私の解釈をできるだけ克明に一分の曖昧さを残さず記録したいと思っているんです。ですから、録音するときは、これ以上はできないというぐらい、自分でも細かく考えますし、プロデューサー、録音エンジニア、スタッフの方々もいかに細かく作業を積み上げていけるのかを考えてくれます。現時点での、その集大成と言えるのが、このベートヴェンのピアノ・ソナタ全集です。
【菅野】
私も全部聴かせていただいていますが、素晴らしい仕事をなさったと思います。
【仲道】
ただ、録った途端に今度はこうしたいとか出てきますので・・・・・キリがありませんね。
【菅野】
でも、残せるわけですから、それはポジティヴに考えないと。
【仲道】
ええ、本当に幸せなことだと思います。
【菅野】
ただ、いつもご自身が納得できる音を残せるわけではないと思うんです。そのあたりはいかがですか?
【仲道】
当初は、いったい真実の音はどこにあるのだろうかと感じました。ピアニストは、演奏していると当然ピアノの鍵盤側にいますから、自分では一番いい音がする場所では絶対に聴けないわけです。ですから、自分が聴いている音を録音していただいているわけではないんですね。
【菅野】
確かにそうだ。
【仲道】
それから、初めて録音したときに驚いたのが、高音の聴こえてくる方向が違うことです。鍵盤に向き合っているときはピアノの高音は右側から聴こえますが、録音されたものは逆の左側から聴こえるわけです。それだけでも驚きました。さらにはピアノの音の違いのほかに、ホールの音、スタジオの音、マイクを立てる位置による音の違い、録音する人による違いがあります。録音を終えた後ににも、モニタールームで聴く音があって、マスタリングスタジオで聴く音もあります。
【菅野】
ありとあらゆる音があるでしょう。
【仲道】
そうなんです。編集作業に入るとチェック用の音源が手元にくるんですが、この部屋のシステムで聴くのと小さなシステムで聴くのとでは、曲のテンポ感が異なって聴こえる場合もあります。なんでこんなにゆっくり弾いているんだろうと思えることもあって、いったいどれが真実なのかわからなくなるんです。
【菅野】
私もかつて録音制作をしていましたら、よくわかる感覚です。制作の過程で、ありとあらゆるものが減ったり増えたりします。柔らかい音だったのに、キーンという音が加わって硬くなることさえあります。それが録音再生音楽ですね。
【仲道】
そうだと思います。
<最後に残るのは音楽>
【菅野】
色々な音がする、そういう現実の状況を、演奏者、表現者として、あなたはどう納得されますか?
~ 中略 (気になる人は書籍を買いましょう) ~
【仲道】
そうして生まれるのが、感動だと思うんです。
【菅野】
まさにそうですね。それが音楽の力である。
【仲道】
ええ。そして、同じ装置で同じディスクを違う機会に聴くと、異なって聴こえることがあるように、ただ一つの正しい音があるわけではなくて、音楽というものは、そのとき鳴っていた音とそれを聴いた方との間でしか成立しないものなので、聴いた方が感じたものを真実と言っていいと思うのです。
[:image5:]
【菅野】
だからこそ、抽象である音楽は何度も反復して聴くことができて、その都度新鮮な世界を作り出してくれるんです。それこそがオーディオのアイデンティティだと思います。
【仲道】
何年も前に録音された演奏とでさえ、自分だけの関係を築けるのですから、オーディオは凄いですね。
[:image10:]
<訪問を終えて>
今回はピアニストの仲道郁代さんのお宅を訪問して、音を聴かせていただきました。彼女の先輩でもある清水和音さんから、仲道さんがゴトーユニットを使っているとうかがっていましたので、大変に興味深いと思うと同時に、ホーンを使ったマルチアンプシステムなので、はたしてバランスのいい音が出ているのだろうか、という心配もありました。
ピアノのあるご自宅の地下室にセットされていたのは、中高音域にホーンを使った5ウェイのマルチアンプシステムです。ベテランのオーディオファイルにとっても手ごわいシステムですから、さらに不安になったわけですが、音が出た瞬間にそんな気持ちは吹き飛びました。実に自然なバランスの音だったからです。その後、話をうかがって驚きました。仲道さんの音に対する関心が並みではなかったからです。彼女の音に対する感性は私の知っている音楽家とは少し異なるところがあり、聴き方も含めてオーディオファイルそのものですし、まさに音の申し子と言っていいでしょう。そして、何より印象的だったのが、本文にも出てくるとおり、彼女が空気を音と結びつけて強く意識していることです。音が空気の波動であることを、これほど認識されている音楽家は珍しい。レコード演奏家としては少々ユニークなスタンスですが、多くのオーディオファイルにとって、大変に貴重で、実に参考になる話が数多くうかがえたことと思います。
菅野沖彦
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参照:季刊StereoSound 2008年SUMMER No.167 ISBN:1345-6105
こうして読み返してみると、
惜しい人(菅野氏)を亡くしたなと感じますね。
書かれている事はとても立派で私には真似のできるレベルではありませんが、
仲道さんはレコードを再生していない(見ての通りCDだけ)なのに、
最初から最後までレコード演奏だと思い込んでいたフシがあるのが・・・
少しだけ気になりました。
菅野氏は途中、おもいっきりストレートに、
「他のレコードを聴かせていただいたら、トータルバランスが良く、大変にニュートラルな状態になっていると感じました。」
と発言してしまっている。このとき仲道さんは さぞ 『ギョッ!』 としたことでしょう。
氏を気遣ってか?仲道さんは終始「CD」とは言わず、お聴かせしたのは「ディスク」だという表現で以て、場を調和させていてさすがは音楽家。フォローがお上手です。別の視点からみれば、仲道さんのサウンドがアナログレコードのそれと見紛う理想に近い再生音であった事が、菅野氏を錯視状態から覚めさせなかった要因だとも想像されます。
[:image10:]↑聴かせていただいた 『音楽』 ← レコードでもCDでもなく音楽,編集社の優しさか?
それにしても、誌面に終始飛び出る(笑)(笑)(笑)
なかなか楽しそうな訪問記でほのぼのしました(^ー^
忘れてましまいそうになりましたが、
こういうユニットの配置位置に制約がある環境で、Dirac Live for Studioを適用してソフト的にタイムアライメントと位相、そして低域コントロールを一挙に制御すると、これまで未体験の世界が現れるかもしれません。(正攻法はデバイディングネットワーク丸ごとAccuphaseのデジタルチャンネルデバイダーDF-65や、dbxのDriveRack 4800などに置換してタイムアライメントまで一気に調整することですけれど、耳だけでは調整出来ないので結局は別の道具も必要な為、知識無しに使いこなすことはなかなか難しい。その点、Dirac Live for Studioの提示するソリューションは、既存のデバイディングネットワークはそのまま。必要となる測定用のマイク(安価なもの)の紹介、丁寧な導入手順ブログまで用意されて敷居が低くなっています。基本的に加えるだけの変更で、置き換えるのではないので誰もが挑戦出来そうな雰囲気。)
菅野氏はイコライザーなどで部屋とシステムの整合を取るのは当然で、それをしないのは馬鹿げている?というような事を生前に発信していた気がします。その一方でPC嫌いでもあったようで、PCオーディオはオーディオではないとも?。トリノフ(Trinnov Altitude 16)の中身をみると、MSI製のマザーボードに汎用スイッチング電源(LRS-100-12)が見えたりしますし・・・音楽制作でも Mac Proを始めとして パソコンの使用は不可欠に近いですよね。コンピューターに苦手意識を持っている場合ではないのですが、それを言うのは酷というものか。
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