平蔵さんの日記に触発されて、私も自身のオーディオ・ルームの電源品質が気になり、測定器を入手しました。
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入手したのは、多分平蔵さん所有のモノと同じものです。にゃんすさんのモノと似ていますが、私のは電圧表示があり少し違います。
EMI測定のことを少し勉強しました。きちんと状況判断するには結構な機材と条件の統一、多くの項目を時系列で測定することが必要なようです。
この測定器では、電源のEMIノイズを「電圧」という一つの数字で示します。ここでの「電圧」は一体どのような基準で何を測定したのかは不明です。
しかも、極めて簡単な測定器ですから、絶対的な数字の信頼性は高くないでしょう。それでも、単に聴感や聴勘?に頼った判断よりも客観性があり、相対的なノイズの多寡や対策の効果が分かると判断しました。またこの測定器にはスピーカーが内蔵されており、ノイズ成分を耳で聞くことが可能です。
その点をご理解の上でご一読下さい。
拙宅はロンドン郊外の一戸建。自宅にも近隣の住戸にもエアコンが無く条件は比較的良いと思っています。
ブレーカーや屋内配線はオーディオ的な配慮を全く施していませんが、オーディオ・ルームに繋がる分電盤は、台所やボイラー、水道ポンプとは別系統の元フューズから来ています。この分電盤の元フューズの容量は100Aあります。
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オーディオ・ルームにはブレーカーが一つ割り当てられており、2口仕様の壁コンセントが6か所にあります。
測定は午後5時ごろですから、比較的近隣の電力消費が少ない時間帯です。
•測定1: 146mV (249VAC) オーディオ・ルーム壁コンセント。ダイレクトで負荷無し。測定器からはガーッという軽いノイズが聞こえます。
•測定2: 74mV (246VAC) ISOTEKのフィルター内蔵コンセントタップ(EVO3 SIRIUS)。モノラル・パワーアンプ4台通電中。フィルターの効果か測定値は半減、測定器からの音も小さくなりました。
•測定3: 156mV (246VAC) PS Audioのフィルター内蔵コンセントタップ(DECTET POWER CENTRE)。プリアンプ、DAC2台、トランス通電中。測定器からの音は測定1より耳につきます。
•測定4: 69mV (121VAC) 測定3のタップから出水電機のステップ・ダウン(アイソレーション)トランス(CT-0.2a, 240V-120V)経由、120V仕様のプリアンプ(Mark Levinson No.32)通電中。測定器からの音は小さくなりましたが、測定3と同じ傾向の音です。
•測定5: 87mV(109VAC)壁コンセントから中村製作所のステップ・ダウン(アイソレーション)トランス(NSIT-1000Mk2, 240V-100V)測定時無負荷。測定4と同程度の音です。
測定4、測定5ともに2桁で低い数字ですが、電圧をステップダウンさせているので、率では測定1や3と同程度になります。
•測定6: 82mV(247VAC)MFPC4台を載せたラックに設置したタップでの測定値。PC4台とハブ、モデム、HDMI/USBスイッチャーに給電中。測定4と同程度の音です。
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タップにはPC4台を駆動するリニア電源とバッテリーへの充電アダプターが繋がっています。ヴィトロパームやフェライトのコアが効いてPC4台を稼働させてこのノイズ・レベルに収まっています。
•測定7: 803mV(245VAC)場所を変えて書斎での測定値。比較的新しいもののノイズ対策を施していないPC3台とレーザー・プリンター、ワイヤレス・モデム等が接続されたタップでの測定。測定器からの音もガーガーとうるさいだけでなく耳につく音です。
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ノイズ対策を施さないマイクロATXのPCが複数稼働すれば、ノイズ・レベルは5倍程度に跳ね上がります。
•測定8: 1892mV(97VAC) 再びオーディオ・ルーム。壁コンセントから光城精工のステップダウン兼クリーン電源(ArayMKⅡ)。DAC、フォノイコライザー、CDプレーヤーが通電中。写真の最下段がArayMkIIです。
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この数字が今回の本題。測定値は測定上限に迫る今回の最悪値。ただし測定器から聞こえるノイズは極めて小さく今までで最小。ノイズの質も極めて軽いシーという音です。これは一体?
ということで、製造元の光城精工さんに問い合わせてみました。非常に丁寧で納得のいく回答を直ちに頂戴しました。以下にポイントの部分を紹介します。
「ArayMKⅡの出力のノイズはどんなものかと言いますと、本電源の方式の宿命であるノイズです。ArayMKⅡはスイッチング電源方式であり、厄介者であるノイズとは未来永劫同居し、付き合っていかなければないものとなります。
ArayMKⅡのスイッチング周波数は25KHzに固定されています。驚かれるかも知れませんが結構低いです。(人間の耳には無理ですが)
これは、聴感上および電源の変換効率のトレードオフからこの周波数に設定しています。今回ご使用になられた計測器のノイズレベルは、おそらくこの周波数に反応しているのではと思います。」
「最終的には聴感による音質チェック、追い込み、チューニングを行っていますので、ご指摘の通り出力電圧にノイズ?が混載していたとしても、聴感的に影響あるものにはなっていないと自負しております。」
どうやらクリーン電源装置そのものの電源ノイズ(スイッチング周波数成分)を測定器がとらえたようです。
製品としてのバランスを考慮した、謂わば計算されたノイズでした。理想を言えばそのノイズも抑えて欲しいところですが、製品として纏める上で目をつぶるという判断をされたと理解しました。
今回の測定値は褒められたものではありませんが、聴感上は、アイソレーション・トランスよりも静かで躍動感も上です。だからこそ5年も使用している訳です。
今回、電源ノイズを測定したことで一時は混乱しましたが、結果的に納得がいき安心感も増しました。
ただ、測定、特に素人が行う簡易測定を妄信することは誤った判断に陥るリスクもあることをあらためて知りました。
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