前回の「ディラックライブ」お試し導入(2ch)に続いて、マルチチャンネル版のDirac Liveをお試し導入してみました。位相やインパルス特性まで補正する音響補正ソフトです。
2chの導入ができていれば、マルチ版のアップグレードライセンスを購入して、メールで送られてくるライセンスキーでマルチの機能が使えるようになります。Dirac Liveサイトのアカウントでライセンスキーを登録するだけで済みます。ソフト的には何も変わりません。
ライセンス料金は150ドルです。残念ながら、マルチの無料お試しはできないということですね!(残念)
2chの時に導入したソフトは
①Dirac Live
②Dirac Live Processor
の二種です。
マルチチャンネルアップグレードを購入してアクティベートすると②のプロセッサーのプルダウンメニューで5.1chや7.1chなどの選択ができるようになります。7,1,2までサポートされています。
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(Dirac Live ProcessorのSP配置選択画面)
しかし、実はベースマネージメント(小型SPの低音をサブウーハーに再生させる機能)はPC版のDirac Liveにはありません。2.n chのβテストを行っているようなので、暫くするとベースマネージメントもできるようになるんだとは思います。この点は、STORMなどのAVプリについているDirac Liveには及びません、7.1.2chまでサポートしておいて、それはないのではないの?と言いたくなるところです(笑)
これはどうしようもないので、拙宅では5.1chを選んで、ベースマネージメント無しでセットアップしました。①のDirac Liveとmini-DSPのマイクを使って音響測定して、フィルターを作成します。これを②のDirac Live Processorに転送します(フィルターに名前を付けてボタンを押すだけです)。
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(Dirac Live 測定画面)
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(ターゲットカーブの設定)
DACが接続されているラップトップPC(Corei7)にソフト①と②を導入して、Exasound Playpointに導入してあるROONから使いました。同じネットワーク内ならROONからDirac Live Processorが見え(検知され)ます。
Jriverからも使えます。この場合はJriverのPlayer→DSP→Manage Plug-in(DSP画面の左下)のところでDirac Live Processor Plug-inを指定しておく必要があります。Plug-inは以下のフォルダーに導入されているはずです。
For 32-bit version: C:Program Files (x86)Common Files
For 64-bit version: C:Program FilesCommon Files
今回の試用に使用した機器は以下のものです。
①Exasound Playpoint(Roon Server)
②Exasound E28 (8ch DAC)
③ラップトップPC(E28をUSB接続)
④Nuforce MCA-20 (8chメインアンプ, E28に直結)
⑤B&W802 Matrix S3(フロントSP)
⑥Polk LSiM-706c(センターSP)
⑦Polk LsiM-703(サラウンドSP)
⑧Rythmik F-12SE(サブウーハー)
⑥と⑦のSPは280Hz以下を受け持つウーハーが逆相接続(12dB/octのネットワークのため)なので、Dirac Liveがこれをどう補正するのかも楽しみな点の一つです。
この逆相ウーハーの問題は以前日記「マルチ再生の逆相ウーハーとサブウーハー(ベースマネージメント)」に書きましたので、詳細はこちらをご覧ください。
その日記に書いてあるセッティングが、今回Dirac Liveと比較するシステムセッティングとなります。
(試聴)
(Great Jazz Trio, July 6th(& July 5th); Live at Birdland New York, SACD 5.0ch )
まず初めに気が付くことは少しクリアになったということで、補正による不自然さも感じられませんでした。音場の広がり方や楽器の定位位置は、ほぼ変化なしでした。低音は、上にも書いたようにDirac Liveではベースマネージメントができないので、不足するのではと危惧していましたが、補正によってB&Wの低域が伸びているようで、あまり不満はありませんでした。勿論、以前の設定は60Hz以下の低音をSWに任せているので、低音の力感はこれに劣っています。このアルバムのドラムソロはライブを思わせるインパクトがあるのですが、サブウーハーを使えないDirac Liveはややインパクトに欠けると思いました。
(Mari Kodama, Beethoven Piano Sonata、SACD 5.0ch)
かないまるさんお勧めのソフトです。一曲目を聞き比べました。まずはピアノの音像が歪まず、(金井さん曰く)ピアノに足が生えている・・感じがするかということですが、これはDirac Live有る無しで変化はなく、足が見えるわけではありませんが、フロントSPのツイーターの高さで一定した音像が見えました。ピアノの音色は、Dirac Liveがやはりややクリアで、柔らかめが好きな人には向かないかもしれません。ターゲットカーブを替えると、この辺りは変わると思います。
総じてDirac Liveのマルチチャンネル版は拙宅では解像度を上げてクリアなサウンドになる傾向でした。補正による変な強調感や、生気を失うなどの副作用は無いと感じました。惜しむらくは、PC版には未だにベースマネージメント機能が付いていないということでしょうか?小型のSPで、重低音をSWを使って補いたい場合、不満が残ると思われます。ROONやJriverでベースマネージメントを行っておいてからDirac Liveを通すという方法もないではありませんが、是非Draic Liveで早期に対応してほしい点です。
(測定編)
REWにmini-DSPのマイクで測定した結果が以下のものです。視聴位置顔の前での一回測定の結果
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(Dirac Live補正後の周波数特性、上からフロントL/R、センター、SW、サラウンドL/R)
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(補正を行っていないときの周波数特性、上からフロントL/R、センター、SW、サラウンドL/R)
上の周波数特性は補正後と補正前の比較です。補正すると±3~4dBくらいにほとんどの領域で収まっています!かなり改善されています。
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(センターSPのDirac Live補正後インパルス特性)
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(センターSPの補正前インパルス特性)
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(サラウンドSPのDirac Live補正後インパルス特性)
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(サラウンドSPの補正前インパルス特性)
インパルス特性の比較です。フロントL/Rのものは前回の日記をご覧ください。どのSPもインパルス特性は補正で改善されています。どういう訳かサラウンドSPのインパルス特性が一番綺麗です。全ユニットが正相接続のB&Wが一番良くなかったです(なんなんでしょうかねえ(笑))
最後にフロントLと逆相ウーハーを持つセンターSPを同時に鳴らした時のf特比較です。
[:image7:]
(フロントLと逆相ウーハーを持つセンターSPを同時に鳴らした時のf特比較、上、Dirac Live補正後、下、補正無し)
補正が無いと、100Hz以下でレベル低下が見られます。Dirac Liveで補正すると、位相整合が向上して、50Hz程度までレベル低下は殆ど生じていないようです(多少はあるかも?)
Dirac Liveのマルチ版は、2chと同様で、”概ね”期待通りのパフォーマンスのように拙耳には聞こえました。クリアになる!でも音場が大きく拡大することは無かったです。STORMのAVプリのDirac Liveのように位相整合を図りながらのベースマネージメント機能があれば、また一味違うものになるのかもしれません。
(後記)
試聴を行うセッティングの時点で、摩訶不思議なことが起こりましたので、記しておきます。
最初に測定を行って、フィルター作成した後試聴し始めた段階で、各SP間のファントム定位に関するAuro3Dさんの日記へのレスを読んで、ファントム定位のテストをした時のことです。
①フロントL/R間
②フロントR/センターSP間
③フロントL/センターSP間
の三種をモノ録音のJazz女性ボーカル(エラフィッツジェラルド、何時もこれです(笑))でファントム定位の位置を聞きました。そうすると①と②は二つのSPの中央に見事に定位(当たり前ですが(笑))、勿論③もそうなると思ってテストすると、そうにはならなかったんです(泣!)。これにはまいりました。③ではボーカルは右側のSP(この場合センターSP)から聞こえるんです。あり得ないと思いました(笑)
何度か再測定して、フィルターを作り直して試しましたが、結果は同じ。
四苦八苦した後、待てよと思って、フロントSP左の反射パネル(木製で波打っている)を外して、再度、測定とフィルターの作り直しをすると、あっさり(気持ちは、”やッと”です}この「簡単なはずのテスト」をパスすることができました。
Dirac Liveという最終兵器(??=笑)を引っ提げて、マルチの魔界の門をくぐろうとしたら、最初の門で討ち死にしたような感じで、マルチを目指すものとしては、あり得ない衝撃でした(笑)。
一応、クリアですが、この状態で左の壁の反射パネルを戻すと、どうなったと思います? フィルターを作り直しているので反射パネルを戻しても大丈夫だろうと思いきや、ダメでした(汗!)。それも、③のファントム定位は反射パネル側に寄ったのではなく、反対側のセンターSPの方に寄って、ほぼセンターSP方向から聞こえました。
ホント奇々怪々!(笑)
なんなんでしょうかねえ?
Dirac Liveも完璧ではなく、環境によっては補正に失敗することがあるのは確かなようです。
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