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ハイドン・ベートーベン・シューベルト、PACオケで聴くウィーンの息吹

日記・雑記
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兵庫芸術文化センター管弦楽団の第139回定期演奏会は、18世紀末から19世紀初めにウィーンで活躍した3人の作曲家の作品がとりあけられました。

それは、ハイドンのコンチェルトグロッソ風のニ長調第6交響曲、ベートーベンの堂々としたハ短調第3ピアノコンチェルト、シューベルトの天国的に壮大なハ長調第8(9)交響曲という、古典派からロマン派の幕開けまでを綴る小編成から徐々に編成を拡大した変化に富むプログラムでした。

指揮者は東京交響楽団の桂冠指揮者ユベール・スダーンさん、ピアノ独奏は児玉麻里さん。

スダーンさんの指揮による東京交響楽団の演奏は東京単身赴任時代にミューザ川崎シンフォニーホールの演奏会で幾度となく聞いてました。

一方、児玉麻里さんは妹が児玉桃さんであること、夫が指揮者のケント・ナガノさんであるということを知っているだけで演奏を聞くのは初めてです。

冒頭のハイドンニ長調交響曲第6番はチェンバロが入り、逆にクラリネットと金管が含まれない極小編成で、各楽器のトップ奏者が次々と独奏の技を披露する合奏協奏曲の趣があります。

なお、ティンパニが全曲通して小ぶりのバロックタイプのが使われていたのは指揮者の意図が垣間見えます。

ハイドンの交響曲はどの曲をとっても様式が整っていて聞きやすいのですが、この第6番は様々な楽器が交互に独奏を「聞かせどころ」としているので聞いていてとても楽しい曲でした。

弦楽部の独奏はそれぞれがプロオーケストラからのゲストトッププレーヤーでしたが、木管のトップはPACオケのメンバー。

それぞれが様々な演奏経験を積んで音楽家として成長するためのプログラムの一環としてこの曲の選曲理由があると思いましたが、純粋に合奏協奏曲として聞いて楽しい選曲でした。

2曲目のベートーベンピアノ協奏曲第3番の準備のため、一旦楽員が退場した後にチェンバロを運び去りスタインウェイのコンサートグランドピアノが運び込まれました。

奏者の数も増えて金管のトランペットも入ります。

ひな壇は最後列は空けたまま、その1段手前の列に左手端からバロックティンパニ、トランペット2本、クラリネット2本、ファゴット2本、そしてホルン2本が右端に並んでいます。

ベルが後ろを向いているホルンを右端に置くとステージ後方中央の壁面で音が反射することを意図しているのでしょう。

ピアノ独奏の児玉麻里さんは長身で手足が長く、指揮者のスダーンさんより背高にみえます。

演奏も骨格がしっかりしたベートーベンの世界。

強烈なアタックも力任せな粗野な音は一切させず、まるで大理石を石鎚で撃つような硬質な輝くような響きです。

それでいて細やかなトレモロなどまるで蜂鳥が羽ばたきホバリングしているかのように軽やかに聞こえます。

合奏部分からカデンツァになると一層極まり緩急自在に勇壮な世界観を繰り広げてエンディングに向かってもなお疲れを見せないタフさを感じさせてくれました。

児玉麻里さんの演奏を今回初めて聴いたのですがとても素晴らしかったです。

鳴り止まない拍手とカーテンコールに応えてアンコールにはベートーベンの佳作「エリーゼのために」を弾いてくれました。

休憩後のシューベルト交響曲第8(9)番は「ザ・グレイト」と後に名付けられたとおり、シューベルトを代表する交響曲で、生前には何故か演奏されることもなく忘れられていた楽譜を後にシューマンが発見してメンデルスゾーンの指揮で初演されたということです。

オーケストラ編成はベートーベンのピアノ協奏曲の編成のままにトロンボーンを加えた2管編成で、ステージの最上段中央の普通ならティンパニが位置する場所にトロンボーン2本とバストロンボーンの3人が並んでいます。

これもスダーンさんの意図だと解ったのは演奏が始まって間もなく。

この曲の特徴はトロンボーン、それもバストロンボーンが重要な音やリズムを加えるようになっていますが、それを最上段中央に位置させることでより明瞭に音を響かせられるよう意図された配置なのでした。

コントラバスも最低音部でリズムを取り曲を推進させていく重要な役目を担っていることを指揮者が明確に意図し、オケに指示を与えているのが判ります。

天国的に長いと言われていますが長くて退屈なことは全くなく、逆にいつまでも続いていって欲しいと思わせるこの交響曲。

50分を少し超える演奏時間でしたが全く退屈することなく堪能することができました。

演奏が終わると万雷の拍手が送られ、満足そうにそれぞれのパートを立たせていましたが、最大の拍手がバストロンボーン奏者に送られたのがこの演奏会の成功を物語っているようでした。

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