同じ時に、同じ場所で、同じ曲を、同じ演奏者が奏でる音楽が、なぜ「雲泥の差」となったのかが不思議でした。『良いも悪いも紙一重』、こんなこともあるんだな、と感じる初めての体験だったので、ずっと頭の中を巡らせています。ですが、振り返って見るとオーディオでも同様なことはあると思いました。
ことは第3回サルビア音楽ホールでの出来事です。第1部で演奏されたシューマンピアノ四重奏では「オーディオで聴いた方がいい」と感じたものが、アンコールでは、「これまでに聴いた室内楽の中で最高」と極端なまでに感想が変わりました。
繰り返しになりますが、なぜ?と頭を巡らせたのは、「同じ時に、同じ場所で、同じ曲を、同じ演奏者が奏でる音楽を聴いた時に「雲泥の差」に感じたこと」です。
大きく捉えると、「演奏側に原因があるケース」と「聴く側に原因があるケース」となりますが、聴く側の原因に心当たりがわかないので、演奏側に原因があるとして考えてみることにします。アンコールでの演奏は、これまでに聴いたことがないほどよかったです。ですから、よい方を基準として、第1部の演奏では何が問題だったのか?を模索していくことにしました。
問題点:第1部での音が濁って聞えたこと
<考えられる原因>
①弦楽合奏のタイミングが合っていなかったため
・このコンサートのためのトリオであり、常時ユニットと比較すれば合いが甘いことは考えられる
・しかしながら、弦楽の合いが甘い場合は音が濁るというよりは、キレや響きがなくなると感じているため、今回のケースとは合致しない
・上記から①が要因の一部であることは考えられるが、主な原因であるとは特定しにくい
②ホールの音響によるもの
・サルビア音楽ホールは響きが強いが、弦楽合奏においては実音と響きが混じり過ぎずに心地よい音に聞えるホールである
・第2回(一週間前)では、同じヴァイオリン奏者とヴィオラ奏者であったが、クリアな音色を聴かせてくれた
・しかしながら、第1回(1か月前)の弦楽六重奏の時は、チェロが2台、ヴィオラが2台となり、低音が厚い楽曲で「うるささ」も感じた
・自分が実施するコンサートの時も、ピアノが響きすぎることを感じていた
・上記から、サルビア音楽ホールはピアノが響きすぎ、特に低音の響きが強いことが考えられる
③編成にピアノが入ったことによるもの
・②と同じだがサルビア音楽ホールはピアノが響きすぎるきらいがある
・②より、低音の響きが強いホールであり、ピアノの低弦の響きが強くなり過ぎたことが考えられる
総合すると、
◆「ピアノの低音が弦楽の音を濁らせていた」と考えると大筋の説明がつく
・急ごしらえのユニットが、普段と違うホールで演奏したため、第1部では演奏のコツがつかめておらず、ピアノの低音が弦楽にかぶって「音を濁らせていた」
・第2部では、コツが掴めてきたため、ピアノの低音(左手)を薄く入れるようにしたため急に音がよくなったように感じられた
・アンコールでは、ピアノの低音のコツに加えて、千秋楽の思いと、上手に演奏できている実感からノリノリの演奏に昇華した
・結果として最高の室内楽を奏でた
検証は出来ていませんが、これが「紙一重」の真相ではないかと推測します。
オーディオにおいても、
・低音のかぶりが、中音高音を濁らせることはよくある話です
・低音を出さない方が、中音高音は綺麗に聞こえることは半ば常識ともなっていますね
その面から、ピアノ四重奏、五重奏あたりの音源で「低音が中音高音を汚していないか」の確認が出来そうだと思いました。そこで、確認用のお勧め音源がないか探したのですが、市販ソフトはピアノの低音は薄く入っているので、もう一つ確認音源としては適さないようです。
そう言えばと、思い出したのが過去の話題です。
サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付」の第2楽章で、パイプオルガンの音が薄く入るときと強く入るときで、弦楽の音が変わらないようにすることが調整の秘訣である=「低音が中音高音にかぶらないようにする」 というのがありました。
こちらは、どの音源でもパイプオルガンの強弱が入りますので確認が可能です。
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