良いも悪いも紙一重 – 第3回サルビア音楽ホールの室内楽

日記・雑記
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音楽の不思議を目の当たりにしたコンサートでした。「良いも悪いも紙一重」、「それは生演奏もオーディオも同じ」という思いがわいてきます。

 

サルビア音楽ホールの室内楽シリーズもいよいよ最終回でした。最終回のテーマはピアノ四重奏。メンバーは、主に神奈川フィルの団員でのトリオと外来からのピアニストでの構成です。シリーズプランナーでもあり、中心人物はヴィオラの大島氏です。気心のしれたメンバーとは言え、幾度も合わせを積み重ねてきた編成ではないと思います。紙一重と感じたのは、第1部と第2部、そしてアンコールが、千里の道も離れていると感じたからです。紆余曲折としましたが、最後には、これまで聴いて来た室内楽での最高を味あわせてくれました。

 

ヴァイオリン:直江 智沙子(神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席奏者)

ヴィオラ:大島 亮(神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席奏者)

チェロ:門脇 大樹(元 神奈川フィルハーモニー管弦楽団)

ピアノ:諸田 由里子

 

座ったのは、サルビア音楽ホールで弦楽四重奏を聴くならココと感じていた4列目です。弦の実音と響きのバランスが自分好みなのですが、今回はピアノが入るので、そのあたりが聴きどころと思って座りました。配置は、ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの並びで後方にピアノです。

 

<演奏曲>

第1部:シューマン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 OP.47

第2部:ブラームス:ピアノ四重奏曲 第2番 イ長調 Op. 26

アンコール:シューマン:ピアノ四重奏曲 第3楽章

※アンコールでは第1部の曲の一部が演奏されましたが、その出来が雲泥の差と感じたのです。

 

シューマン:ピアノ四重奏曲 感動度☆☆☆☆☆

シューマンがクララと結婚した後に集中的に室内楽を作曲したものの一つです。それほど長い曲ではないですが、起伏に富んでいて、特に第3楽章の甘く切ないメロディが好きなので、生で聴けるのを楽しみにしていました。ですが、演奏が始まった直後に、「えっ」と思いました。「音が、響きがいいサルビア音楽ホールで聴いたらこんな感じ」と想像していたものとかけ離れていたからです。「音が濁っていました。」これならオーディオで聴いた方がいいと思ったのが、率直な感想です。

 

ブラームス:ピアノ四重奏曲 第2番 感動度★★☆☆☆

第2部では、打って変わって音がよかったです。弦の響きがいつも通りにクリアに伝わってきます。低音を薄めに入れたピアノの音も悪くなかったです。この曲は、ブラームスの室内の中でも好きな曲で、力強さと繊細さをピアノと弦楽が主役を入れ替えながら聴かせてくれるので、オーディオ的にも面白い曲です。第2部では、「こんなに聴かせてくれるなら聴きに来てよかった」と思わせてくれました。

 

普段聴いているのは、ボザール・トリオ盤 DECCA CDです。この音源は、ストリーミングで聴き比べた結果で選んだものです。1973年の録音ですが、当時のフィリップスの録音はいいものが多いですね。特に室内楽は古さを感じさせない録音が多いです。

 

シューマン:ピアノ四重奏曲 第3楽章(アンコール) 感動度★★★★☆

3回シリーズで行われた2023年のサルビア音楽ホールの室内楽シリーズもこれで最後です。アンコールには、第1部で演奏したシューマンの第3楽章でした。プログラムに第3楽章が「この曲のクライマックス」と書かれていたことからも、思い入れがあることが伝わってきます。自分も好きな曲で楽しみにしていました。第2部がよかったので期待して耳を澄ませます。演奏が始まり、ヴァイオリンが序奏しチェロがメロディを奏でたところでノックアウトでした。音楽の中に溶け込んでしまったような感覚です。こうなってくると、音がいいとか悪いとかはどうでもよくなってきます。心地よさに身を任せるだけです。この甘く切ないメロディはいいですね。チェロがヴァイオリンがヴィオラが、音域を少しづ変えながら謳う様にとけてしまいそうでした。特にシリーズプランナーの大島氏が弾くヴィオラのソロパートになった時、ステージ側を向いていた楽器を身体を捩じりながらステージ側に向けて演奏する姿からは、「最高の音で聴いて欲しい」という気持ちがひしひしと伝わってきます。そんな様子を思い出しながら、この曲を聴くと今でも涙が出そうになります。やっぱり生演奏はいいですね。

 

オーディオでは、ゲヴァントハウス&ペータ・レーゼル盤に親しんできました。あの感動をふたたびと言う気持ちから、帰宅後に聴き直しをします。このCDも録音が古いものですが、音は悪くないです。生で感動した後は、オーディオも普段より楽しいと思いながら聴いていたのですが違和感も感じました。チェロとヴィオラの定位が殆ど同じなのです。左から、ヴァイオリン、ピアノ、ヴィオラ、チェロと並んでいて、ヴィオラとチェロの位置が重なっていました。

これではだめなのです。あの様子が目の前に浮かばないと違和感が出ます。そこで、ストリーミングで探しました。シューマンのピアノ四重奏曲は録音でもいいものが多いですね。エマーソン・クァルテット盤、ボザール・トリオ盤、エルサレム・クァルテット盤どれもよかったです。

夜中まで、何度も何度も繰り返し聴いて、「あの感動を一番思い起こさせてくれる」ボザール・トリオ盤に決めました。今は届くのを心待ちにしています。音楽もオーディオも本当にいいものですね。

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