■ 実験概要
Dirac ARTの最小構成である2.0chを試してみた。
使用スピーカーは Project K2 S9900(2.0ch)。
補正はDiracのRoom Correction(従来型)とDirac ARTを比較した。
■ 2.0構成でも効果あり
結果は驚くほど明確だった。
左右2本だけの構成にもかかわらず、定在波によるディップがほぼ消失。
LのスピーカーがRを、RのスピーカーがLを補い合うことで、
互いの欠落帯域を埋め合っていることが測定上も確認できた。
ただ、周波数特性の違いは確かに見えるものの、
グラフ上で「劇的な変化」とまでは感じない。
それでも音の差は圧倒的だった。
ARTを有効にした瞬間、まるでサブウーファーを追加したような厚みが出て、
Room Correctionではスカスカに感じるほど。
RCで同等の低域感を出すにはターゲットカーブをかなり持ち上げる必要があり、
RCにサブウーファーを足してようやくART(サブ無し)に並ぶ程度の量感だった。
さらに、左右の低域バランスがほぼ完璧に一致。
Room Correctionでは残っていた微妙な非対称が、
ARTでは左右の低音が一つの“塊”として聴こえるほど整った。
RC(従来型)
ART
■ スペクトラムの変化
スペクトラムを比較すると、2.0環境でも残響成分を含む伝達特性が大幅に改善している。
わずか2本のスピーカー構成でもここまで機能していることに驚いた。
RC(従来型)
ART
■ サブウーファー追加テスト
続いて、JTR 46cmとHSU 38cmを加えたテストも実施。
JTRのサポートレンジは20〜150Hz(インフラベースオプションで20Hz以下も有効)、
HSUは25〜150Hzに設定。
従来のBass Controlでは、性能差があるサブ同士を組み合わせると、
性能の低い方に引きずられる現象が起きていた。
JTRの鋭さがHSUに抑えられ、結果的に全体の瞬発力が落ちる。
しかしARTでは、その現象が完全に消えた。
JTRの能力が制限されることなく、
HSUが“自然に助ける側”として機能している。
周波数特性だけでなく、聴感上でも2種類のサブが一体化して動作していることが分かる。
■ 聴感と考察
耳で聴いても明らかに違う。
低域の立ち上がりが速く、音の塊がより安定している。
JTRの力強さとHSUの包容力がぶつからず、
互いの“位相的な隙間”を埋めるように動いている印象。
理論的にはMIMO制御の結果として当然なのだが、
従来のBCでは実現できなかっただけに、この結果は感動的だった。
■ まとめ
ARTはスピーカーが多いほど効果が出ると思われがちだが、
実際には2.0chでも空間の波を最適化できる。
そして異なる性能のサブウーファーも、
ARTの協調制御のもとでは“お互いを活かす”存在になる。






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