2019年05月24日
ハーリン・ライリーの3年ぶりの新作
『Perpetual Optimism』が届けられました。
https://www.mackavenue.com/store/mac1136
前作『New Direction』(2016)と同じメンツのクインテットのみでの録音。
ゲストが入っていない分、
ストレートアヘッドなジャズの趣きが強まったかな~という印象。
アルトサックスとトランペットの2管のフロントラインに余裕がでてきて
ライリーは自分のプレイに集中して、
純粋にバンド内でのインタープレイを愉しんでいる様子がうかがわれます。
全体として、前作の、ニューオーリンズの満月の熱帯夜のような
濃密で、ややグラマラスな構成のサウンドとはまた異なる
ソリッドで、やや余白の感じられる演奏になっている気がします。
とは言え、彼のつくる音楽が「熱く」ない訳はないので
これは、沸騰していた前作に比べれば。。。というお話です。
ちゃんと血は通っているし、骨太なサウンドは健在です。
でも、前作を聞き続けてきた私のような者からすると
やっぱり最初はちょっと抑えめのアレンジだし、地味かな~と
思ったのも事実。。。
さて、ここからはいつものサイドストーリーとなります(汗)。
前作からの3年間にライリーはご両親を亡くされたそうで
殊に母上は、アルバム制作に入る4か月前に亡くされたとのこと。
私事で恐縮ですが、私もこの間に父を亡くしており
心中を察せられた部分もありました。
あたりまえですが、家族を亡くすということは
大きな人生における喪失のひとつでありましょうし
その影響がサウンドに反映されていないはずがない。。。
そう思って聞くと、複雑なイメージが重なってきます。
たとえばアルバムタイトルはどうでしょう?
「絶対的な楽観主義」って。。。
私はこのことばに込めた彼の思いはかなり共有できた気がします。
第一に、生きている・残された我々はそうありたいし
それが死者への誠実な態度であるような気がするからです。
ちょっと前のめりかもしれないけれど
こういうタイトルを持ってくるところが
やっぱりこの人の音楽に魅かれる大きな要素になっている気がしますし
このアルバムのひとつひとつの楽音が、
聞き返すごとに磨かれて光ってくる粒子のようにも思えてきます。
でもご本人に会ってそんな印象を伝えれば、
きっと、はにかんだ表情で、ニコニコしているだけでしょうが。。。
またこのアルバムに寄せた彼の言葉があって
いちおう原文で引用しておきます。
“I want to live in a world where my glass is always half full!”
コップに水は半分も入っているのか
いや、半分しか入っていないのか。。。
ちょっと禅的な宙吊り感がなくはないですが
おそらくどちらもなのかな~と。。。
年齢を重ね、それなりに失うものも多くなって
もはや満杯のコップとはいえない人生のステージにある者からすると
でも、まだ半分はあるって思いたくはなります。
でも裏返して言えば、
いずれは空のコップになるっていうことに対する怖れも同時にある。
そんな状況をわかった上で、その人生を楽観的にとらえていこうとするのが
彼の意図するところなんじゃないかと思いました。
これはアルバムタイトル曲(M5)を聞いて下されば
お判りいただけるんでは。。。と思います。
またM8は、ウイリー・ディクソンの曲で
ライリーのヴォーカルがフィーチャーされています。
この曲は、アラン・トゥーサンに生前、録音するように
勧められていた曲なのだそうで
ちょっとトゥーサンの遺作のことなんかも思い起こしてしまいました。
この2人には、似通ったニューオーリンズ気質を感じるな~
なんて。。。ことも。
私にとっては、いろいろなことが思い起こされたアルバムとなりましたが
みなさんはどう聞かれるかな~?
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