2019年09月28日
エラス=カサド&マーラー・チェンバー・オーケストラによる
ファリャの新作には、バレエ音楽『恋は魔術師』も収録されていて
マリナ・エレディアという1980年グラナダ生まれの
女性フラメンコ歌手(カンタオーラ)が参加していました。
ちょっと歌っている様子をご覧いただきましょうか。
「Marina Heredia – Homenaje a Moraíto en Madrid」
https://www.youtube.com/watch?v=FkkI9q2viWA
優れたフラメンコ歌手は
なべて「深い詠嘆」を感じる歌声とでも言いますか
独特の長いこぶし回しと
それに呼応しつつ、さらに煽り立てていくかのような
ギターの伴奏とハンドクラップがあって
その世界にズルズルと引き込まれていく感覚がなんとも快く、
いつの間にか、ずーっと聞き続けているなんてこともしばしば。。。
そういう意味で言うと、マリナ・エレディアの歌声も
ディープな匂いのようなものはしていました。
アルバムレビューを書くまでは、そっちに深入りしないでおこう。。。
という気持ちもあったので、彼女について調べることは封印していました。
しかし、そのあたりを見透かされていたのか
パグ太郎さんに頂いたレスでは
でもやっぱりマリナ・エレディアだとおっしゃる。。。
そうだな~そうだな~~これはもう素通りできないな~
ということで、ここのところ
「カンタオーラ!カンタオーラ!」な日々を送っている私です。。。
マリナ・エレディアの経歴は、こちらにくわしいです。
https://www.iberia-j.com/lpf/artista/MarinaHeredia/index.html
お父さんも著名なカンタオーレ(男性フラメンコ歌手)で
旦那さんは闘牛士という、なにか絵にかいたような係累なのですが
昨年来日コンサートがあって、上記のページのリンクをたどると
インタビューも見られます(日本語字幕つき)。
「フラメンコ界の若きスター『マリナ・エレディア』単独インタビュー!」
https://www.youtube.com/watch?v=9_8H0UjJTJA
このインタビューの中でも触れられていますが
来日コンサートにおいて、彼女が初共演を楽しみにしている
先輩カンタオーラとして
カルメン・リナーレスの名前が挙がっていたのが
個人的にはとても懐かしかった。。。
まだ学生だったときに
カルメン・リナーレスの『Cantaora』というアルバムを
よく聞いていた時期があったからです。
ちょっとそのころのカルメン・リナーレスの様子も。。。
「Carmen Linares por tientos | Flamenco en Canal Sur」
https://www.youtube.com/watch?v=QAQKzW5UI3g
素晴らしい。。。
やはり聞き込んだという記憶も残っているのでしょう
彼女の歌声には、とりわけグッとくるものがありました。
エレディアとは声質が違うところもありますが
二人をならべて聞いてみると
現代のカンタオーラの歌唱の系譜が感じ取れるところもあり
なかなかに興味深いです。
リナーレスのその後をフォローしていなかった私は
評判の高かった1996年のアルバム(二枚組)
『Antología (La Mujer En El Cante)』をさっそく中古で入手。
これがまた素晴らしかった。。。
彼女がスペイン国内のみならず、ワールドワイドに知られるカンタオーラ
となるきっかけになったアルバムなのだそうで
古今のフラメンコを回顧する
楽曲のセレクション(アンソロジー)と
多彩なギタリストの配置で、
当時のフラメンコ界の総力を傾注した記念碑的なアルバム
でもあったようです。
このアルバムは2015年にリマスター盤が発売されています。
歌声の説得力とでも言ったらよいでしょうか。
言葉の意味は分からなくても
感情のうねりはよく伝わってきます。
ギターの伴奏ともよく絡んでいて
フラメンコ素人の私でも「オーレ!」って
合いの手を入れたくなるぐらい。。。(笑)
マリナ・エレディアから離れてしまいましたけど
彼女の最近のアルバムである『A Mi Tempo』(2013)は
CDとしては廃盤になってしまっています。
ただ配信系では聞けますので、いちおうリンクだけ。
https://www.youtube.com/watch?v=JTVyvS4j5ZM&list=OLAK5uy_nyO9OBG3NLA421FzweblQKirdR9T7kgRQ
Amazon Music HDでも聞いてみました。
CD音質で、なかなか良いですな~
Philewebでserierilさんや試聴記さんなどの方々が紹介されていた
設定のアドバイスにしたがって直してみると、
確かに効果はあるように思いました。
音の伸びや広がりが改善されている感があります。
また話がそれました。。。
『A Mi Tempo』でのエレディアは
歌のうまさは十分に堪能できるんじゃないかとは思いました。
偉そうな物言いになっちゃいますが
リナーレスの境地に近づいてきている感じは受けました。
おそらくフラメンコ以外を歌わせたら
エレディアのほうがうまいんじゃないかという気もします。
でもなにかがまだ足りていないっていう。。。
どうでしょうか?
ただフラメンコは基本的にライブの音楽だっていうことはあるので
現在の彼女のライブはもっと進化しているかもしれないし
『恋は魔術師』への参加で、ちがった展開が訪れるかもしれないな~
などと期待しております。
先に紹介したインタビューのなかで
エレディア自身も述べていることですが
フラメンコを愉しむには、
いろいろな歌手の歌を
いろいろな場所で聞いてみることだ
つまりひとつの範型としてのフラメンコの追求ではなく
多様な個性の表現としてのフラメンコを愉しむ姿勢が肝要なのだと。
そのあたりがうかがい知れる記事を見つけました。
「フラメンコはひとつ知れば良い」
https://flamenkoroid.net/2018/07/20/
によると、彼女のフラメンコのクラスのレッスンでは
グラナダ流(マリーナ流)なのかもしれないとのことわりもあった上で
「それぞれが自分の歌い方を持っていて、マリーナに直されても直さない」
なんて書いてあるのを見て、ちょっとにんまりしてしまいました。
でも基本、伝統へのリスペクトは必要なんてことも書いてあります。
以上、ファリャのCDから始まった
カンタオーラ再訪の旅の顛末でございました。
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