この日記は、K&Kさんと11月末にグランドスラム邸にご一緒させていただいたことをきっかけにしたものです。K&Kさんはグランドスラム邸は初訪問で、直後に前後編の大作日記にされました。
再訪となる私の感想はK&Kさんの日記に便乗してレス欄に書かせていただいたつもりではありますが、今まで単独の訪問記のようなものを書けなかったのは、師走は忙しかったのもありますが、グランドスラム邸訪問後、伊豆の別宅に行く機会が今までなかったことが大きいです。「絶対オーディオ音感」が確立されていない私のようなものにとって、「試聴記」とはすなわち、拙宅の音との比較でしか書くことができず、その比較の部分でどうしても確認したいところがあったので、伊豆に行ってもう一度拙宅のシステムで同じ音源を聴くまでは書くことができなかったというわけです。
ということですでに「旬」はとっくに過ぎていますが(汗)、K&Kさんのコメント欄にグランドスラムさんが、
>Auro3Dの素晴らしさについては、また次のレスで!
と書かれていたので、「次のレス」を首を長くして待っている自称「Auro3D友の会会長」(笑)として、グランドスラムさんを含めAuro3Dを実践しておられるPhileweコミュニティのお仲間と「Auro3Dを語り合う」場を提供したいという意図もあります。
さて、前置きが長くなりましたが、今回伊豆の拙宅にてどうしても確かめたかったのは、グランドスラム邸と拙宅での「音場感の違い」についてでした。というのも、「会長」(笑)を自任する私ですら、「Auro3Dセッティングのキモ」とみなしているTop スピーカー(Auro3Dの世界ではVoice of Godと呼ばれている、リスニングポイント頭上に設置されるスピーカー)のあるシステムを拙宅以外で聴いたのは、今回のグランドスラム邸が初めてだったからです(私の知る限り、AVに力を入れているはずのAVACのような専門店=東京と横浜しか知りませんが=でも、Voice of Godは設置しておりません)。
前回、初めてお邪魔させていただいたときは、グランドスラム邸にはまだこのVoice of Godは設置されておらず、その時の印象は拙日記にしましたが、「物理的に0と1では違っていて当然」という結論でした。
しかし、今回はTopスピーカーの有無だけに留まらず、前回に比してかなり拙宅との比較の対称性が少なくとも音場に関しては取れています。つまり、AVプリとしてStorm AudioのISP MK2を本格導入し、そのセッティングに際し小生の持つ「秘術」(笑)を惜しげもなく投入して、拙宅とほぼ同様のDirac LiveとBass Managementの設定としたわけです(前回は試聴機貸し出しだったので、デフォルトの設定)。
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【写真はグランドスラムさん提供】プロジェクターカバーの中に設置された、5台目!となる805。すべてKrellの5chパワーアンプ「Showcase Amplifier」でドライブしている
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さて、「実験」を開始する前の段階での私の「仮説」は、グランドスラム邸と拙宅で同じAuro3DのNativeソフトを再生した場合、「音質」(これはスピーカーやパワーアンプなどの性能に左右される)はともかく、「音場」感は、かなり似通ったものになるだろう―というものでした。どちらもAuro3Dの本家筋の同じAVプリで最適化され、スピーカーの数とレイアウトは多少違うとはいえ、空間感を演出する「キモ」のVoice of Godはどちらも設置済み。もちろん、部屋の大きさや形状という、2chオーディオでは「音場感」に関してはとても大きな変数となる設置環境(→ルームアコースティック)が違いますが、これはイマーシブオーディオフォーマット(AtmosやAuro3Dなど)の再生では、設置環境の違いをかなり均すのではないかという「仮説」を立てたのです。
この設置環境に出音(音場感)が左右されにくい点が、マルチの優位性の一つであることは関西の有名な某オーディオショップ(残念ながらお邪魔したことはありません)のサイトにも書かれています。こちらに書かれているのは5.1chに関してのものですが、ルームアコースティックに依存しにくいという「優位性」は、「環境音・間接音」を担当するスピーカー数が増えれば増えるほど増していくのは「少なくとも論理的には」明らかだと考えます。
例えば、2ch再生において、天井の形状や高さや素材が違えば、そこから反射される音の「角度」や「量」「質」が変わってくるため、リスニングポイントにおける「音場感」に大きな違いをもたらすことは、このコミュニティの方なら知らない方はいないでしょう。だから2chの場合は、同じスピーカー、同じアンプなどシステムが全く同一でも、部屋が異なってスピーカーからの距離がある程度ある場合は、全く違った「音場感」となります(この場合、「音質」はニアであれば当然ある程度は似ます)。しかし、今回の場合、この「天井からの反射音」は、Auro3DのNativeソフトにあらかじめ録音されており、その「天井からの反射音」再生専用のTopスピーカーがどちらにも設置してあり、そのf特や位相、距離(Delay)などは同じISP MK2と内蔵のハイテクソフトで完璧に調整済みなわけです。ゆえに拙宅の方がグランドスラム邸に比してTopスピーカーの設置高度が高いとか、傾斜天井の角度が急とか、防音工事がしてない、とかの設置環境の違いによる影響は、リスニングポイントにおいては極小化されている(=つまり同じような音場感が再現できる)であろうという仮説を立て、それを検証してみたかったわけです。
厳密に言えば、拙宅とグランドスラム邸の間には「音場感」に違いを生みそうな点が他にもあります(「音質」の違いに直結するであろう、SPやアンプはここでは触れず)。まず、スピーカーの数および配置位置が異なっています。Auro3D用の配置基準に絞って比較すると、拙宅は、1Fに7台(サラウンドバックがある)、2Fに5台(フロントハイトセンターがある)、3Fに1台という計13chのフルスペックであるのに対し、グランドスラム邸は1Fが5台(ただし、センターを除く4台が超大型SPです)、2Fが4台(フロントセンターハイトが無い)で、全10chという違いがあります。また、細かい位置を言えば、Auro3Dの基準では、サラウンドバックを除いた5台の1FのSPのほぼ「真上に」、それぞれ2FのSPを配置することを求められており、拙宅は比較的それに近い配置となっておりますが、グランドスラム邸では、2Fの4台はかなり部屋の中央寄り(逆に言えば、1Fの4台がかなりコーナー寄り)に配置されており、垂直関係には配置されていません。さらに細かい違いとしては、Auro3Dは2Fのスピーカーを「ハイトスピーカー」として壁に横向き(やや下向き?)に設置することが推奨されているのに対し、グランドスラム邸の4台の805は、Atmosでいうところの「トップスピーカー」配置、つまり天井設置で真下を向いています。つまり、位置、向きとも、グランドスラム邸の2Fスピーカー群はAtmosに最適化されているのにたいし、拙宅のはAuro3Dに最適化されているという違いがあります。ただし、3FのVoice of Godスピーカーに関しては、拙宅のものはスピーカーがフロントセンターハイトと同じ向き(=傾斜天井の反射を利用して下に音を落とす)であるのに対し、グランドスラム邸は、Auro3Dの作法に則った真下のリスニングポイントにスピーカーが向いているという理想の配置となっています。
ただ、これらの微細な違いは、私の今回の「仮説」では、同じISP MK2による音響補正(タイムアライメントや距離などを含む)のお陰でほとんど人間には差が分からない状態になっているのではないかと。
さて、グランドスラム邸で聴いていただいたのと同じAuro3D音源(王道2Lレーベルから、HimmelrandとHimmelborgenというオルガン+合唱の教会録音の二つ。映画として、ワルシャワ?で作られたBlade Runner 2049)を今回、拙宅で、グランドスラム邸にご一緒したK&Kさんに聴いていただきました。[:image2:]私の評価では主観的(自己ひいき?)になりますので、以下、彼のコメントを紹介します。
まず、最初はHimmelborgen収録の2曲目(曲名はNorway語?のため割愛)、オルガンと合唱の中に、教会の尖塔で鳴っている(?)鐘の音が効果的に挿入されている曲です。ここの聴きどころはやはりこの鐘の音の高さ感(繰り返しますが、今回は「音質」比較はしておりません)です。
Q:いかがでした?
K&K:物理的にAuroさん宅の方がVoice of Godの設置位置が高いせいかもしれませんが、高さ感と、鐘の音が尖塔を降りてくるような音場感は、Auro邸の方が感じられたような気がします。
次は、Himmelrand収録2曲目のJerusalem, Jerusalemという曲で、これは映画『炎のランナー』の挿入曲に使われたことで有名です。前のものと同様に天井の高い教会録音(恐らく同じ教会)によるオルガン・合唱曲。
Q:これはどうでした?
K&K:グランドスラム邸の方が、Auro邸よりデッドな作りになっていると思うのですが、その違いが反映されているように感じました。つまり、Auro邸の音の方が響きが多いです。これは好みが分かれると思いますが、私個人はAuro邸の音が好きです。
同じアルバムからもう一つ。14曲目のオルガン独奏曲です(実は私、前日に芸術劇場でオルガンコンサートに行ってきたばかりなので、オルガンの音には耳が鋭敏になっていまして、以前にも書いた「録音芸術」と「リアル」と違いをまたまた感じたのですが、それはまたの機会に)。この曲の聴きどころは何といっても、曲の最後のところで、オルガンのペダルの恐らく一番左の超低音が出るペダルをずーっと踏み続けて、コンプレッサーの空気が無くなっていって、尺八のように音がかすれていくところです。この部分は20Hzぐらいは出ている(K&Kさんのご感想ではそれ以下とか)と思われ、拙宅のSWの能力では、音量を上げると底付きをします。
Q:これ、特に最後の低音の部分の聴こえ方はいかがでしたでしょうか?
K&K:音質的な再現性はもちろん大型SWを持つグランドスラム邸の方が優れていたと思いました。ただ、音場感という意味では、こういう超低音は、あまり部屋の音響には影響されないのではないでしょうか。どちらも同じような甲乙つけがたい低音の広がり感、「床の揺るがし方」でした(笑)。
最後は、Blade Runner 2049(Auro3D版)です。試聴ポイントは、まずはオープニングの、大目玉とともにものすごい低音が全スピーカーから発せられるシーン。それに続いて、飛行物体?が後ろから前に「突き抜けていく」シーン。そして主人公が「恋人」と雨に打たれるシーン。最後に、昔のBlade Runner(ハリソン・フォード)を助けようと、主人公が「敵」と荒波の中で戦うシーン。
Q:いつ見てもすごいんですが(笑)、いかがでした?
K&K:どちらも音響がすごくて、ただただ驚くばかりです(笑)。オープニングの低音は先ほどと同じように音場感という意味では同じような感じがしました。雨中のシーンでは、確かに雨音はグランドスラム邸の方がくっきりしている感じはあります(これは私の感想「グランドスラム邸の雨に打たれたら痛そう。拙宅のはそれに比べれば霧雨って感じ」に同意いただいたものです)が、これは「音場感」の違いというより「音質」の違いでしょう。海での戦闘シーンも低音を中心とした轟音なので、同じような「音場感」だと思いました。
K&Kさんのコメントは以上です(その後一杯やりながら伺ったので、かなり記憶が怪しいです=汗。加筆修正すべき点があればご指摘ください)
【結論】
今回の実験で、当初立てた仮説「2chより、5.1chサラウンド、それよりさらにイマーシブオーディオ(Auro3DやAtmosなど)の方が(スピーカーの数が増える分、高機能のAVアンプが上手に音響補正ができるという条件下であれば)、音場感に関しては部屋による影響が減少する」は、帰無仮説であった。
やはり、スピーカーの配置を同じくして、AVアンプによる同じ補正をかけても、部屋の違いによる音場感の違いは残る。部屋、恐るべし![:image1:]
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