今年もインターナショナルオーディオショウ2023(TIAS2023)に参加してきました。例年は土日の参加ですが、今年は11月3日が祝日だったために、3日間連続での参加となりました。
初日は、Ⅿ1おんちゃんの仙台チームと一緒に各ブースを回り、夜もフウさんたちとの懇親会に楽しく参加させていただきました。さすがに、2日目は途中で疲れてしまい、最後までいることはなく、午後5時ごろには会場を後にしてしまいました。3日目は、静岡のHさんと一緒にフウさんの講演を中心に各ブースを回りました。夜の慰労会は、今年もダブルウーファーズの方々と一緒でしたが、今年は会長の永瀬先生が亡くなったこともあり、少し寂しい感じがしました。
ということで、私、グランドスラムが回った範囲内での各部門のベストワンを発表したいと思います。一応、センターに近いポジションで聴けたブースの音のみを対象にしています。仲間内で評判が良くても、端の方でしか聴けなかったブースは外してありますので、あそこのブースの方が音はよかったのに!という異論反論はあるかとは思いますが、ご容赦ください(笑)
【ベストサウンド賞】
ナスペックのブースで鳴っていたオーディオネックのスピーカーとピリウムのアンプとの組み合わせ。これは、昨年もほぼ同じ組み合わせで聴いているが、まさしく私の好みに合ったベストサウンド。空間の見通しがよく、音場空間が壁の向こう側まで広がっているように聴こえる。(写真のSPは、モニターオーディオ)
くしくも、ナスペックの木村さんが、「従来のアンプでは、後ろの壁の前でボーカルが歌っていると感じていましたが、この組み合わせにすると後ろの壁の存在が消えて、まるで壁がなくなったようにステージが表れる」と同じことを解説していた。その後、ホリー・コールの曲を流してくれたが、ボーカルは、まさにそれを感じさせる再生だった。我が家の音と大きく違っていると聴こえたのは、低域の質感。我が家のグランドスラムは、38㎝の大口径ウーファーなので、ジェフのモデル9をもってしても、低域が軽々と出てくる感じにはならない。
まあ、グランドスラムだけ聴いている分には、特に問題はないのだが、オーディオネックとピリウムといった時代の最先端の音を聴いてしまうと、今や時代遅れの低域なんだなあということをまざまざと感じさせてくれる。22㎝と28㎝の2つのウーファーから放たれる低域は、まさにハイスピードで、まさにその場で鳴っているように聴こえる。どこにバスドラがあって、どこにティンパニーがあるのかという低域楽器の配置が目に見えるようだった。
これで値段がある程度だったら入れ替えてもいいかなと思ったのだが、パワーアンプのヘラクレスの値段を聞いてビックリ!興味のある方は、ご自分でお調べください(笑)
【スピーカーさえ良ければで賞】
アクシスのブースでボルダーとダゴスティーノの巨大アンプとの組み合わせで鳴らされていたファインオーディオ。誤解のないように言うと、決して音が悪かったのではなく、音の方向性が違っているという意味。この巨大なアンプで鳴らすのであれば、WilsonやAvalon、B&W、GIYAなどのいわゆるハイエンドと言われる大型機種を採用すれば、もっと違った結果になったと思っている。
これは私個人だけの感想ではなく、懇親会の中で何人ものオーディオ仲間が言っていたので、決して的外れの見解ではないと思う。音の方向性のどこが違っていたのかというと、一番大きな点は、低域の分解性能だろう。フウさんの講演でいくつかのブースで同じ音源を比較しながら聴いているので、低域の違いはすぐに分かった。中高域は実体感があって部屋の大きさとも相まってボーカルなどはとても気持よく聴くことができたのだが、低域だけは好みに合わなかった。量感はあるのだが、楽器の鳴らし分けがあまりうまくいっていなかったように聴こえた。
主宰のダゴスティーノが自社の機材のデモをあまり行わず、社長の室井さんとの思い出話に花を咲かせていたのは、上記の理由によるものなのか?
【見た目のインパクト賞】
これは、文句なくナスペックブースのモニターオーディオの新フラッグシップスピーカー「HYPHN(ハイフン)」。ピリウムを聴きたくてブースに入ったときは、壁際に置いてあったので新しい音響版だとばかり思っていた。試聴時間になって、スタッフがセットしだしたのを見て「何だ、あれってスピーカー?」と思った次第。
独創的なスタイルのキャビネットは、アクリルと鉱物、天然顔料を組みわせて成形。工場ではチャンピオンベルトと呼んでいる(笑)中央のパンチンググリルの奥には、50mmのミッドドライバーを6基搭載。その背後には、4組のバスドライバーがそれぞれ内側に向かい合うように配置されているらしい。
同社のアジア担当営業マンによれば、HYPHNは50周年記念のConcept50をさらに洗練し、強化したモデルとのこと。さらに「数十年にわたる設計チームの経験と協力の結晶であり、性能、技術、デザインのあらゆる要素が調和した結果が具現化されている」という。価格は1,300万円とかだったと思う。今までのショーでは試作機レベルでのデモだったが、今回のショーでは、ほぼ完成品とのこと。発売は、来年だとも言っていた。外形寸法は502×520×1,392mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は106.9kg(1台)。外見のインパクトが強すぎて、音の記憶はあまりない(笑)
【コストパフォーマンス賞】
これも、文句なくアーク・ジョイアのブースで鳴っていたestelon(エステロン)の新しい3ウェイ4スピーカーシステムである「AURA(オーラ)」エステロンを一躍有名にした鉱石とポリマーを複合させた独自のコンポジット材を採用した流線型のキャビネット。カタログによると「表面のほぼすべてが湾曲した独創的な形状が、不要振動の抑制と内部の音響制御に寄与。高度で複雑なキャビネットの設計と構造とすることで、「各ドライバー・ユニットは最高のパフォーマンスを発揮する理想的なサウンドを再生する」らしい。
また、アンプからの音楽信号をドライバー・ユニットに伝送する内部配線材には、ハイエンドケーブルメーカーのKubala-Sosna(クバラ・ソスナ)製の純銅ケーブルを採用。3次元的な空間表現、透明感溢れる躍動的な音楽再現に寄与するという。外形寸法は384×367×1,366mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は34kg(1台)と見た目は細身で小型なのだが、キャビネット底面に搭載したウーファーによる効果か、低域不足になることもなくタイトな低域再生を実現していた。
なぜ、コストパフォーマンスに優れているかというと簡単で、私が聴いた他のブースではこの価格帯のSPを鳴らしていなかったから(笑)値段は何と税込286万円!決して安いとは言えないけれど、1,000万円を超えるのが当たり前のショーで鳴らされるSPに比べてなんて安いんだろう!音は、エステロンのSPに共通する音場空間の再現能力とピンポイントで定位する定位感が両立できているところだと思う。
ただし、AURAを聴いた後に上級機のXB Diamond Mk Ⅱを聴いてみると、これが全く違う。音が出た瞬間に空気感が変わって聴こえた。まあ、値段的に3倍ぐらい違うので当然と言えば当然なのだが、それでも、この値段でこの音がするのであれば、コストパフォーマンスは抜群といっていいと思う。
その他にも、ウィルソンオーディオのAlexx Vをゴールドムンドのフルシステムで鳴らしていたステラのブースやアバロンのIsis SignatureをdcsとTAIKOのシステムで鳴らしていた太陽のブースなど、素晴らしい音がしていたブースはいくつもあったのだが、センターに近いポジションで聴けたブースのみを対象にしているので、この2つは端の方での試聴だったので残念ながら対象外。
基本的には、フウさんの講演を追っかけて聴いていたので、同一の音源で比較試聴することができたのはとてもありがたかった。
さて、来年のTIASは、会場の東京国際フォーラムが9月から大規模改修工事に入るため7月の26日(金)~28日(日)の3日間になるということなので、今から予定を入れておこいうかと思っています。基本的に新製品の発表はないと思われるので、各メーカーや輸入元のセンスが問われるTIASになると思います。
そこで一つ提案が。主催者側でいくつかの指定音源(クラシック、ジャズ、ポップスからそれぞれ1曲)を設けて、その中から必ず1曲は使うというプレゼンにしてもらうと、ブースごとの比較試聴ができていいのかと思います。
来年度からは、晴れて自由の身になるので、今年とは違った立場でTIASを楽しめるかと思っています(笑)
コメント ※編集/削除は管理者のみ
グランドスラムさんの庭は、今年も賑やかでしたね。
自分はここ3年連続で行っているのですが、全般的に今年が一番よく鳴っていた気がしました。昨年が一番ピンと来なかったので日記も書かなかったです。
さて、グランドスラムさんのランキングについて、
【ベストサウンド賞】は、「オーディオネックのスピーカーとピリウムのアンプとの組み合わせ」でしたか。自分はオーディオネックは聴けず仕舞いでした。ですが、2年前に初めて聴いたときは、「キレキレの音」が印象的でした。昨年は、横にサブウーファーを積んでいたためか、バランスが低域よりに傾いた印象で、「キレキレさが感じられなかった」です。今年は2年前と同じ組合せですね。
ベストサウンドに輝いた要因は、「ピリウムのアンプの力」と「スピーカーがこなれて来た」こともあるでしょうか。
是非導入されて、追い込んだオーディオネックを聴かせて下さい。
【スピーカーさえ良ければで賞】は、「ボルダーとダゴスティーノの巨大アンプとの組み合わせで鳴らされていたファインオーディオ」でしたか。自分は、ビンテージの方で聴きましたが、ダゴスティーノの巨大アンプが朗々と鳴らしている印象を受けました。このパワーアンプも印象深かったです。
加えて、AXISSブースは毎年思うのですが、「天井が高い音」がしますね。
【見た目のインパクト賞】が、モニターオーディオの「HYPHN(ハイフン)」でしたか。
自分は見た目とテクニカルな斬新さで一番印象深かったです。
【コストパフォーマンス賞】がestelon(エステロン)の「AURA(オーラ)」ですか。確かに、286万円なら(周りが高すぎなので)お値打ち感がありますね。音は聴けませんでしたので、来年は注目してみます。
>基本的には、フウさんの講演を追っかけて聴いていたので、同一の音源で比較試聴することができたのはとてもありがたかった。
なるほど、その手がありますね。参考になりました。
来年はどんな内容になるか楽しみですね。年毎に印象を比較(定点観測)するのも楽しいです。
ヒジヤンさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
>グランドスラムさんの庭は、今年も賑やかでしたね。
夢の輸入オーディオショウから数えると、オーディオショウに行き始めて今年で30年目になりました。大場商事のブース(ホテルグランドパレス401号)でウィルソンのグランドスラムに初めて出会った日のことは、今でもはっきりと覚えています。それがまさか自分の部屋に来るとは、夢にも思いませんでした。昔は夢だったんですね(笑)
>自分はここ3年連続で行っているのですが、全般的に今年が一番よく鳴っていた気がしました。昨年が一番ピンと来なかったので日記も書かなかったです。
昨年まではコロナ禍で、世界的に大々的に発表ができなかったのが、今年にかけて様々なジャンルで新製品が出てきたからなんでしょうか。今年は人数制限もなく、初日は祝日ということもあり、過去一混んでいた感がありました。
>「ピリウムのアンプの力」と「スピーカーがこなれて来た」こともあるでしょうか。
多分、昨年度と同じ組み合わせだったと思いますが、サブウーファーが無くなった分、軽々と低域が出ている感じがありました。それにしても、ピリウムのアンプの素晴らしさは、世界中どこに行っても同じなようです。主催のピリオス氏は、マジコのリスニングルームに唯一常設されていることをとても誇りに語っていました。今月パリで発表されるマジコのM7の発表会では、ピリウムが使われるのかな?
>是非導入されて、追い込んだオーディオネックを聴かせて下さい。
そんな資本はありません(笑)でも、自宅で聴いてみたい組み合わせではあります。もしかすると、来年は実現するかも!
>自分は、ビンテージの方で聴きましたが、ダゴスティーノの巨大アンプが朗々と鳴らしている印象を受けました。このパワーアンプも印象深かったです。
これは同感です。中域の実在感は素晴らしかったのですが、いかんせん、低域の分解性能が追い付いていない感じは否めませんでした。これは、SPの成り立ちを考えるとしょうがないのでしょう。コンセプトが違いますから。
>加えて、AXISSブースは毎年思うのですが、「天井が高い音」がしますね。
これも同感です。数年前に、2日目のショウの終了後にフウさんと一緒にウィルソンのサーシャ(アレクシアだったか?)とダゴスティーノを組み合わせて、大音量で聴いたことがありましたが、素晴らしい音場空間が広がりました。試聴後のダゴスティーノのアンプは、触れないほど熱くなっていたのはいい思い出です(笑)
>【見た目のインパクト賞】が、モニターオーディオの「HYPHN(ハイフン)」でしたか。自分は見た目とテクニカルな斬新さで一番印象深かったです。
私には、見た目のインパクトがあまりにも強すぎて、良い音かどうかの判断がつきませんでした。Auro3D氏が言われる音が視覚に左右される典型的な例ですね(笑)
>【コストパフォーマンス賞】がestelon(エステロン)の「AURA(オーラ)」ですか。確かに、286万円なら(周りが高すぎなので)お値打ち感がありますね。音は聴けませんでしたので、来年は注目してみます。
SPの値段は安めですが、ドライブするアンプはその数倍の値段なので、出てくる音はその辺を割り引いて考える必要があるかとは思いますが、それでも、割安感があるSPだと思います(あの会場にいると、どうも金銭感覚が狂ってしまいますね)
>来年はどんな内容になるか楽しみですね。年毎に印象を比較(定点観測)するのも楽しいです。
ヒジヤンさんが書かれたように、来年は各ブースのセンスが問われるショウになるかと思います。7月末という時期を考えると、目立った新製品は出てこないでしょうから、既存の製品でどれだけの音を出せるかということになりますね。そうなると、本文にも書いたように、各社共通した音源をかけてもらえると、比較試聴もできますし、その後のオーディオ仲間との話し合いでも盛り上がると思うのですが、いかがなもんでしょうね。講演をする評論家で試聴曲のリストを公開しているのはフウさんしかいませんので、なかなか難しいかな。