次回の裁判資料の送付も終え、しばらくは通常モードです。「ドイツ音楽の伝統を継承する!」とのキャッチコピーのヘンシェル クァルテット。サルビア音楽ホールの”Salvia-hall Quartet Series #180”を聴きに向かいました。
この公演は恒例の弦楽四重奏シリーズですが、平日開催のために毎回聴きに来るのは厳しいです。ですが1回券取得では余りとなった席しか選べないので、毎度のことながら救済サイトで譲ってもらって聴きに来ました。100席しかない小さなホールで聴く弦楽四重奏は、自分のオーディオ再生で目指すサウンドの理想でもあるからです。
100席のホールとは言え、座る席でサウンドは異なります。このホールで様々なクァルテットを聴いてきましたが、自分好みは聴こえ方と見え方を総合して、やはり「最前列のセンター」が一番です。今回座ったのは、最前列のやや右寄りでした。この席位置が売りに出ていたから行くことにしたとも言えます。
ヘンシェル クァルテット
クリストフ・ヘンシェル (1st vn) ダニエル・ベル (2nd vn) モニカ・ヘンシェル (va) マティアス・バイヤー=カルツホイ(vc)
<プログラム>
①モーツァルト:弦楽四重奏曲 第22番 K.589「プロシア王第2」
②F.スウェイン:弦楽四重奏曲 第1番「ノーフォーク」<日本初演>
③ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第8番 Op.59-2「ラズモフスキー第2」
アンコール ベートーヴェン弦楽四重奏曲 第14番 第4楽章
平日の夜公演は集中力を持続するのが難しいです。この日は有給休暇の消化も合わせて向かったコンサートでしたので、集中力が途切れそうになる場面は一度もありませんでした。
①モーツァルト:弦楽四重奏曲 第22番 「プロシア王第2」
この曲は自らチェロを弾くプロイセン王から依頼されたものと考えられていて、第21番から第23番までの3曲を「プロシア王セット」と呼ばれています。王が演奏することを想定しているために、チェロのソロが多用されているとのことでした。
モーツァルトの弦楽四重奏曲の中では、ほとんど聴いてこなかった曲です。ヘンシェル クァルテットも初めて聴くので、初曲にどんな特徴があるのかを探りながら聴いていたのですが、一言で言えば「バランスの取れた」と言う印象でした。裏を返すと、これと言った特徴を感じなかったのです。第1、第2ヴァイオリン、ビオラ、チェロとそれぞれにどんな特徴があるのかを探りながら聴いていたのですが、特にアンテナに反応するものはありません。演奏の特徴もこれと言ったものを感じませんでしたので、消去法から「バランスの取れた」という感想となったと思います。オーディオとの比較では、特に優劣は付け難しと思いました。
②F.スウェイン:弦楽四重奏曲 第1番「ノーフォーク」<日本初演>
この曲では、「F.スウェインって誰?」「ノーフォークってどんな曲?」と言う感じで、事前にネット検索をしてはみたのですが、何もヒットしない<日本初演>の曲です。そんなことを想定してか、第2ヴァイオリンのダニエル・ベルから演奏前に解説がありました。驚いたのは、「日本語」で解説されたことです。楽章ごとの主題と特徴を説明したうえで、主題を皆で演奏するスタイルでした。
その後に全曲を通しての演奏でしたが、知らない曲は解説を受けてから聴くのはよい試みであると思います。事前に聞いたことには聴き耳が立ちますし、馴染むための呼び水にもなると感じました。
③ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第8番 「ラズモフスキー第2」
休憩後のこの曲で本領が発揮されました。初曲では特徴が掴めずに「バランスがよい」との感想でしたが、ベートーヴェンでは一つの音楽の塊となって響いていてきます。実演でも、オーディオでも幾度となく聴いてきた曲が新鮮に感じます。そして、ベートヴェンは偉大な作曲家であることを痛感しました。楽章ごとの変化が激しいですし、それでいて全体のまとまりもある。荘厳さがあれば、ノリの良いリズムも感じ、郷愁感も併せ持った名曲であることを感じさせる演奏です。これまで自分が聴いた中では、ベストであったと思います。この引き寄せ感をオーディオで得るのは難しいと思いました。
音の側面からは自宅のオーディオも洗練されてきたとの思いをわかせましたが、実演に触れるワクワク感や新たな感動もあり、休暇を取ってでも向かう価値があったと思えるコンサートでした。
<オーディオで聴く時に好きな音源>
①モーツァルト:弦楽四重奏曲 第22番 「プロシア王第2」
ハーゲン クァルテット/モーツァルト弦楽四重奏全集 DG CD
③ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第8番 「ラズモフスキー第2」
ハーゲン クァルテット/結成30周年記念アルバム Myrios Classics SACD
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