ウチのパワー・アンプはいずれも1990年代のもので使用台数が多いこともあって時々修理業者のお世話になります。
アンプは全部SANSUIでフロントにAU-α607 MOS PREMIUM 2台とB-2105 MOS VINTAGE 2台の計4台。
リアにAU-α607 MOS PREMIUM 2台とB-2105 MOS VINTAGE 1台。
スピーカーにネットワーク回路を使わないマルチアンプ構成なのでやたらと数が多くなっています。
SANSUIのMOS FETアンプの音が好きなのでこうなってしまったのですが、マルチアンプでこれだけの台数を使うとなると中古で手ごろな価格で手に入るものではないと困るので他に代えがたいのです。
それで永く使っていくためには特に経時変化で故障が起きやすい部分が気になるのですが、その筆頭がスピーカー保護用リレー。
リレーの接触不良は過去に使ったアンプでも経験しています。
リレーのトラブルで始末に負えないのは完全に音が途切れるわけではないのになんとなくザラザラとした感じの音になる場合があること。
歪が増えたように感じて最初は回路部品を疑ったのですが、結局リレーの問題だったということがありました。
何年か前にアキュフェーズがそれまで使っていたリレーを止めて新製品からMOS FETスイッチを使うようになったことを知ったので、どんな回路を使っているのか調べようとしたのですが、どうもカスタムICを使っているようで簡単に手に入るものではなさそうでした。
ウチの古いアンプに使っているリレーもMOS FETスイッチに換えたいと思ったのですが、その思いはそこでとん挫。
それが最近になってマイペースさんのアンプ自作記事でMOS FETスイッチを使った保護回路の基板が市販されていることがわかってビックリ。
回路基板が販売されているページの回路図を見てMOS FET駆動用フォトボルカプラーなる部品の存在を知りました。
まさに目からウロコ。
アキュフェーズはこの技術を使ってIC化したんだ…
最初マイペースさんから教えていただいたサイトで基板と部品を購入することを考えたのですが、そんな大きな基板を市販のアンプに組み込むことは難しいし、アンプの改造には保護回路の多くの部分は不要でMOS FETとその駆動部さえあればいいので方向転換。
自分でアンプに合った部品を探して既存の基板に組み入れることにしました。
使用したのは東芝のMOS FETとフォトボルカプラー。
以下の図は東芝のフォトボルカプラーのアプリケーション・ノートからの引用です。
[:image5:]
FETは一つのリレー接点あたりシリーズ接続で2個使います。1個当たりの抵抗は実力値約2mΩなので計4mΩ。
標準的なリレーの抵抗値スペックは50mΩmax。実力値の表示がないのでよくわかりませんが、やはりはFETスイッチの方がかなり低そうです。
まずはスーパー・トゥイータとトゥイータ用のAU-α607 MOS PREMIUMの改造から始めることにしました。
音質改善効果は中高音の方がわかりやすいかもということとB-2105/2103はあまりに重すぎて大変そうだったから…(^^;)
[:image2:]
大きな電源用の2個のコンデンサの奥にあるのがスピーカー保護回路の基板。
ここにリレーが取り付けてあります。
607の場合にはリレーにパラにMOS FETスイッチを付けてリレーと同時に働くようにしました。
[:image3:]
工作は不細工ですが、スペースが充分になくて部品同士が干渉するため整列させることが困難でした。(言い訳…笑)
607は2系統のスピーカーを接続できる出力端子が設けられていて、それぞれに1個づつリレーが設けられています。1個のリレーは2個の接点を持っていてそれぞれRchとLchに対応しています。
FETスイッチはそれぞれの接点に対応して4セット使用しました。
最後に確認のためにボーズの小型スピーカーを使って確認。
[:image4:]
このテストではリレー使用時の音とMOS FET使用時の音を比べることができるのですが、やはり微妙に違う感じがします。
FETの方が音が滑らかになる感じがするのです。
1台目の改造が完了していよいよシステムに組み込み。
アンプはモノラル的に使用していて、最初の改造品は右側のスーパー・トゥイータとトゥイータの駆動用。
この状態でデュオ・ピアノの春の祭典を聴くと
[:image1:]
右側のトリスターノのヤマハがやけに元気です。
左のサラ・オットのスタインウェイは相対的に控えめな感じに…
プラシーボでしょうか?(笑)
でも無音時のホワイトノイズを聴くとやはり右側はなめらかなのに対して左はわずかにざらついて聴こえるのです。
2台目の改造が終わった時点では音の変化にビックリしました。
全体的に音が柔らかくなった感じ。
最初に聴いたのはエヴァ・キャシディのNightBirdなのですが、声が柔らかくなって奥行き感、音場感が増した感じ。
デュオ・ピアノの春の祭典はサラ・オットが元気を取り戻して左側でバリバリ弾いてます。(笑)
今回は最初の試みでホントにうまく行くかどうかわからなかったので部品も2台分しか調達しておらずここで一段落です。
この先はリア用の607、B-2105、B-2103の順で展開していくつもりです。
ただ、B-2105/2103はかなりスペースが狭そうなのでリレーを完全に取り外して置き換えることになるかもしれませんし、基板の取り外しなどうまくいくかどうかさえまだわかりません。不透明なことが多すぎるのです。
また、あの重量を考えると頭が痛いです。
でも焦らずにゆっくりとやっていこうと思っています。
今回のきっかけとなる情報をいただいたマイペースさんにはすごく感謝しています。この場をお借りして御礼申し上げます。
ありがとうございました。
なお、この改造に関してはかなりのリスクを伴いますのであまりお勧めできません。挑戦する場合には以下のことを考慮して自己責任でということになると思います。
このような改造を市販品にしたら当然メーカーでの修理は受けられなくなります。
私の場合は実質的にはSANSUI自体が消滅しているのでそのリスクは無視できるのですが…
MOS FETはゲート、ソース間のインピーダンスが極めて高くゲートは静電気などの過電圧で破壊されやすいので扱いはかなり厄介です。
電気的知識があり静電気に対する対策が可能な人以外は手を出さない方が良いと思います。
きちんと手順を踏んで間違いなく配線しないとアンプやスピーカーにダメージを与える危険があります。
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