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2022/03/08 間違いのお知らせ LEGGIERO(レジェーロ)
当日記の本文中、MM入力についての文脈から続く
以下の記載は誤りです。
↓↓↓
『例外で、入力インピーダンスを1GΩで受けるFidelix社のLEGGIERO(レジェーロ)というのもあります。』
↑↑↑
少々特殊な製品でして・・・何がどのように間違いかを
簡潔に書くこと叶わず。本文は訂正せずそのままにしておきます。
LEGGIERO(レジェーロ)についてはFidelix社の製品情報を参照下さいませ。
以下、同社製品情報のURLです。
http://fidelix.jp/products/index.html
他にも間違いが潜んでいるやもしれません。くれぐれもご注意下さい。
本件ご指摘いただきました TON2さん ありがとうございました m(_ _)m
by nightwish_daisu
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以下、本文
アナログ、レコード、一時のブームですぐ消え去るかと
思っていましが実はそうでもなく割と盛り上がって?いる感じです。
数年前まではネットに転がっている情報が十分ではなくて
余計な論争に巻き込まれる事も経験しました。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、
YAMAHAの40年前のプリアンプ「C-2」の
入力インピーダンス 10Ω の 話題でした。[:image6:]↑この表はオーディオ回顧録さんから
ブームになる以前からの愛好家では、
MCはカートリッジ の 数倍の 負荷 で 受けるのが良い
とされていましたし、それは正しいです。
※特記なき場合、以降は昇圧トランスを使わない場合で話を進めます。
ortfon の SPUシリーズ では
内部インピーダンス(MCでは直流抵抗とニアリーイコール)が
2Ωのものが珍しくありません。
それの数倍となれば・・・ 10Ω です。
だから、YAMAHAの C-2 は MCの入力インピーダンスを
10Ωにしたのだろうというのが容易に想像できます。
ortfonを始めとした低インピーダンスのカートリッジをメインターゲットにしたという推測です。
1989年2月28日初版
「基礎トランジスタ・アンプ設計法」 著者:黒田 徹
ISBN 978-4-8443-7025-3 117頁より一部抜粋
[:image1:]↑
このように、80年代におけるアンプの 理論 設計 でも、
カートリッジの数倍で受けるというのは 当たり前だった?
背景もあります。
※60~70年代、MCの小信号をそのまま増幅するというは難しかった時代背景もあり?
C-2ではヘッドアンプ部にヤマハオリジナルのスーパーローノイズICを使用
したといいます。イコライザ回路にはヤマハオリジナルのスーパーローノイズ
ペアFETを使用してのピュアコンプリメンタリーパラレルプッシュプル
A級出力段etc 豪華な名前が説明文に踊ります。C-2発売1976年頃。
じゃあ、
カートリッジより低いインピーダンスで受けたらどうなるの?
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・音が小さくなります
・SN比が若干悪化します
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Signal が 小さくなるけれど Noise は そのままなので
数値的にSN比が悪化するのは当然です。
C-2使用者によると DENON DL-103で9時のボリューム位置を
ortfon SPUの場合には10時に上げる必要があったとのこと。
計算してみるとその音量差は8dBほど。
ただ、音質は DL-103 も SPU も 良かったそうです。
じゃあ、
カートリッジよりずっと大きいインピーダンスで受けたらどうなるの?
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・SN比が悪化します
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説明は Audiodesign社のブログ
「フォノイコライザアンプの入力インピーダンスとカートリッジのいけない関係」を訪問して読んでみて下さい
[:image2:]これは DL-103の例ですが、負荷を100Ω、200Ωと
増やして行くと どんどん SN比の値が下がっていく事が分かります。
(SN比は値が大きいのが良いものです。値が小さいとノイズの割合が大。)
(後述しますが注意して欲しいのは、SN比が悪くなる事と音質劣化は別のお話。
DL-103は80~120Ω位で受けた方が良い ’はず’ なのですけれど、
上図のSN比 ‘だけ’ 見たら10Ω辺りが最良値なんですね。)
だから、
SN比は負荷を大きしても悪くなるし、小さくし過ぎても悪くなる。
厳密なものではないけれど、負荷はカートリッジの数倍程度が良いみたい。
(MC昇圧トランスはまた別のお話)
(更に注意して欲しいのは、SN比が悪くなる事と音質劣化は別のお話。)
で、冒頭で
『数年前まではネットに転がっている情報が十分ではなくて』
と書いたのは最近は充実してきたという事の裏返しです。
ユーザー数が増えた事でメーカーも本腰?を入れてくれたようです。
分かり難い事を分かり易くまとめてくれました!!
https://www.ortofon.jp/analogtaizen/
[:image3:]その中でも特に今回の話題に関係するのは・・・
カートリッジについて Vol.16 インピーダンス編
一部を抜粋
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オルトフォンのMCカートリッジは、一部例外はありますが
内部インピーダンス2~10Ω程度の「ローインピーダンス」に
属しているものがほとんどです。
~中略~
オルトフォンを例として挙げると、
「推奨負荷インピーダンス(Recommended load impedance)」と
表記されている場合はMCカートリッジ使用時のPHONO入力側の負荷インピーダンスが、
ある一定の値もしくは指定した範囲内であることを推奨するという意味があります。
~中略~
MCヘッドアンプを使用した入力回路の負荷インピーダンス値は固定式である場合が多いですが、
一部機種にはアンプ側の負荷インピーダンス値を変更することが可能なものもあります。
この場合は、MCカートリッジの推奨負荷インピーダンス値を参考としながら
アンプ側で切替可能な最も近い値に合わせて下さい。
(例:MCカートリッジの推奨負荷インピーダンスが10-50Ωであり、
アンプのPHONO入力側の可変値が30/200/1kΩである場合は
30Ωの位置とするのが望ましい)
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カートリッジ一覧表(MC)
[:image4:]抜粋ここまで(表にはまだ続きが少しありますが画像枚数の制限上から割愛します。)
少しだけ、MC昇圧トランスのお話。 ********************************
[:image8:]カートリッジには色々な内部インピーダンスの製品がありますが
トランスの場合は突き詰めていくと同じ値のインピーダンスで合わせる・・・
いわゆる インピーダンスマッチング が、一見理想に見えます。
ところがどっこい、現実はそうではなくて、カートリッジの内部インピーダンスの
10倍程度の値でほぼ最適な音質になるように色々とトータルで設計されている様子です。何故かと言えば1Ωとか2Ωなんていうトランスを作ろうとすると
巻き線比が恐ろしい事になるのと、そんなの作っても一部のカートリッジしか
カバーできない(=売れない)ジレンマがあるからなのかもしれません。
計算が面倒なのでやりませんが、
↑の ortfon ST-70 も 昇圧比と2次側47kΩから1次側を算出すれば
30Ω前後に値になっているはずです。※世間の動向からの想像
そんな訳で、MC昇圧トランスに関しては厳密なインピーダンス値に拘るのではなくて
昇圧比の HIGH/LOW どっちか好みな方を選ぶという程度の
ファジーな感覚でいいはずです。著名なカートリッジを使って製品チェック
しているはずの?メーカーからも異論ないはず?
この点、MM型とは違います。
MM型は負荷の他に負荷容量(pF)も指定に合わせられるなら合わせた方が良い。
ふたたび ST-70 です。
[:image8:]レコードを所有していない人は(私もですが)ご存知ないはずですが、これの2次側はアンプのMM入力に接続します。 え?MCなのに?って思いますよね。
だから47kΩ指定です。ほぼ全てのアンプのMM入力は47kΩかそれに近い値です。
例外で、入力インピーダンスを1GΩで受けるFidelix社のLEGGIERO(レジェーロ)というのもあります。意味もなくこんなに大きくしないと思うので、それはそれでメリットがあるのでしょう。
47kΩの負荷抵抗のほかに、
アンプによっては負荷容量(pF)の切り替えがあるので その場合は
それを ST-70の場合には 200pF に 合わせた方が良いです。
MC昇圧トランスの話題のなかで異質ですが、MMカートリッジの
負荷抵抗依存性、負荷容量依存性についてShureの測定情報です。
「プレーヤーシステムとその活きた使い方」(誠文堂新光社)
初版:1977/9/1, ISBN:978-4416176023 より一部抜粋
[:image7:]画像はAudiodesignさん(https://audiodesign.co.jp/blog/?p=2960)から拝借
MC昇圧トランスのお話はここまで。 ********************************
■YAMAHA の 現行機種 C-5000
10Ω 30Ω 100Ω 300Ω 豊富なMC負荷の切替
[:image9:]https://jp.yamaha.com/products/audio_visual/hifi_components/c-5000/specs.html
入力インピーダンスのカタログ表記は不変のようです。
MM入力の47kΩは入力インピーダンス。 それを・・・・
「入力インピーダンスではありません。昔の人は皆、測定条件だと わかります。」
と説明されたら頭に「?」が何個も浮かびますよね? 後でまたこの話題を
出しますが、ベテランの方々はすんなり「測定条件だ」と納得される
ものなのでしょうか?
ortfon ST-70 の 推奨負荷インピーダンスは47kΩです。アンプ側の入力インピーダンスが47kΩならバッチリ。それを、「アンプのカタログに書いてある47kΩは入力インピーダンスではありません」などという意見が出てくると、ただただ混乱するだけです。
まぁ、ST-70はさておき? 受けのインピーダンスは目安?で、
厳密なものではないので? 聴いてみて好みで変えてみる
そんな大らかさがアナログ・レコードにはありますですね。
冒頭の話、余計な論争。C-2 の 入力インピーダンス 10Ω。
これの論争の発端は、YAMAHA C-2を お使いのオーディオマニアさんが
名の知れた MCカートリッジ DENON DL-103を使っていて
イイ音で鳴っているから、YAMAHA C-2 の 入力インピーダンスは
10Ωであるはずはない!!という風な事を言い出したからでした。
※少し脚色しています。事実関係は前後しますが、明確なのはC-2の回路をみると100Ωの抵抗器で終端してあったという事から100Ωが本当の負荷だという意見でした。
専門家? オピニオンリーダー? も、これに同調して
「アンプの入力は100Ωで終端されているのでこれ以上、入力インピーダンスは大きく
なりません。逆に言えばアンプの入力インピーダンスはこれ以上です。」
[:image6:]「50μV/10Ωと書いてあれば、昔の人は皆、測定条件だと わかります。」
ともコメント欄に。Phile-webコミュニティの皆さんの中に、
カタログの[感度/入力インピーダンス]の欄に [50μV/10Ω]と書いてあったとして
「10Ωは測定条件であって入力インピーダンスではない」という認識の方は
いらっしゃいますかね? 私が間違っていたら教えて下さいませ。
私の認識では、 / (スラッシュ記号)の左側が入力感度で、右側が入力インピーダンス。そう読み取っています。回路図の抵抗器が100Ωで実機もその通りであっても、電源入れて実動作すると(負帰還で)10Ωになるんでないのかな?
そんな事を言えば
「いくら帰還をかけても10Ωまでは下がらない。
私の友人知人も、いくら帰還かけてもそんなに小さくならないと言います。」
と返ってくる感じで・・・・。
でも、実機で実測してみても、LT-Spiceで回路シミュレーションしてもらっても
10Ωという結果が出ているしなぁ・・・。これ以上、何をしたら分かってもらえたのだろうか。
[:image6:]最後の方には 『ブロガーとは話すべきではないな!』と、啖呵を切られました。
※ブロガーとは私の事です。激しく憤っておられます。
↑
こちらに書かれています問いかけ。
「40年以上前の製品の使いこなしで、まず困っている人がいるだろうか?。」
いえいえ、実際にいらしたからこそ、そういう話題になったのです。
最近は特にレコードを導入されるユーザーさんも増えてきていますし、
知識としては持っておくべきなんじゃないかと思うのですよ。
内部インピーダンス40ΩのDL-103を10Ω受けしても、
音量が小さくなるだけで音質そのものはイイ(と感じた)。
それでいいじゃないですか?
カートリッジによる音量差はボリュームノブを9時から十時の位置に回すだけだといいますから、そんなに使い難いという事も無いでしょう。
近年のDACでも、やたらと出力電圧の大きい物もありますしそれ位の音量差は許容範囲です。 音を聞きもしないで、頭ごなしに 「入力インピーダンスが10Ωなんて使い難いアンプはおかしい」 などと 言うものではありませんよね。技術者が泣きます。せめて 使ってみて、聴いてみては どうだろうか。
この時の DL-103 と SPU の 音量差 8dB は ボリュームノブを
30°くらい 回転させればよい だけの 量 です。
[:image5:]写真:C-2のボリュームノブ,dB目盛りがあるので便利
(C-2実使用者の報告9時10時と、差異8dBは、合致しています。
目盛り読み 36-28=8 )
2Ωのカートリッジを10Ωで受けたら、理論的には
SN比が数dB劣化するかもだけれども そもそも レコードって
「シャーーーー」って ノイズが乗るもので SNではデジタルに太刀打ちできない。
SN比の数dBの悪化なんて レコード板のコンディション差に 比べたら
それこそ塵にも等しい位の差かもしれないです。
知らんけど。
2022/03/08 追記ここから:
上記 の『そもそも レコードって「シャーーーー」って ノイズが乗るもので』
という記述は nightwish_daisu の 主観です。
レコード盤の状態の良い、マニアさんの再生では プチパチ音 は 皆無で、
同一録音(更にマスタリングまで同一だとなおさら)の場合には、
CDとレコードの再生を比較しても・・・どちらがCDでどちらがレコードか当てる事は困難な程度に、聴感上のSNを得る事が可能な事が知られています。
(マスタリングが異なる事を、CDとレコードの音の差が違いが大きいと誤解して情報発信してしまっている人も居ます。それは間違いとも言い切れませんが、CDとレコードの音を比較するならば、マスターテープは同じで、マスタリングも同じものを用意するのが、理想に近しい前提条件。製作時の逆RIAA特性と、再生時のRIAA特性が極めて正確である事は言うまでもなく。
このような? ”レコードはプチパチ音とノイズ大” という 偏見からか、デジタル時代なのに プチパチノイズを入れるという暴挙に出たCDの例が、マライア・キャリーのミュージックボックス(1993年)でした。確かにアメリカのレコード盤をチェンジしながら再生する機器(映画トップ・ガンにも登場したJUKE・BOXを想像)は、プチパチ&シャーーーーだったのかもしれませんが(ディザは例外として)入れなくても済むノイズをわざわざ入れる事は白飯に泥水をぶっかけるが如き行為と私は思います。レコードとCDの悪いところ取り。)
2022/03/08 追記ここまで:
■結論■
MCカートリッジの負荷は幾らが最適なのか?
⇒ メーカーの指示に従え!
指示が無い場合は、
電子回路受けの場合ならカートリッジの数倍で!!
MC昇圧トランスならそのMC昇圧トランスが自分のカートリッジに
適するのかカタログを見るかメーカーに聞くのが良いかな?
大抵のMC昇圧トランスのメーカーは有名どころのカートリッジで
良い感じが出るように作ってくれているはず。数値には拘らない!!
[:image10:]追記:↑Ortofonは昇圧トランス使用の際はマッチングが理想と説く。
(面白い事に、ST-70がその理想だとは書いていない。
ST-70の工場出荷時は 10Ω以下 向けで割とオールマイティ。)
Ortofonがマッチングが理想と説く一方で、マッチングは必ずしも必要でないとする報告も挙げられています。型に拘らず、試してみるのも良いかも。結線を変えるだけならお金もかからない訳ですし。
Fidelix社の技術情報「MCステップアップトランスで誤解されがちなこと2件について。」。2021.04.23
giovanni xxivさん「MC 用 昇圧トランス あれこれ_03」 2018.10.29
追記ここまで:
■おまけ■
今日、こんな日記を書こうと思ったのは 丁度
ノイズカットトランスで有名な テクニカルブレーン社の Youtube
#11 『カートリッジのインピーダンス特性の計測』TECHNICAL BRAIN テクニカルブレーン 公式チャンネル
が 公開されたからでした。 https://youtu.be/xwR2UaIfjmQ
昔は 雑誌しか 情報源が ありませんでしたが、今の時代はこんな紹介
情報が閲覧できる。良い時代になりました。
簡単な回路シミュレーションならWebページ上で出来たりします。
⇒ 『YAMAHA C-2 誰でもできる負帰還シミュレーション』
https://ameblo.jp/nightwish-daisuki/entry-12468905907.html
「10Ωは入力インピーダンスではありません」「昔の人は皆、測定条件だと わかります。」などの発言。
みんな、わかると言われますが、本当に? 嘘じゃなくって?
わかるという人を見た事がないのですが・・・
「昔の人は皆」 ひっかかるキーワードです。
ortfon社の指示をもう一度書いてみます。
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この場合は、MCカートリッジの推奨負荷インピーダンス値を参考としながら
アンプ側で切替可能な最も近い値に合わせて下さい。
(例:MCカートリッジの推奨負荷インピーダンスが10-50Ωであり、
アンプのPHONO入力側の可変値が30/200/1kΩである場合は
30Ωの位置とするのが望ましい)
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カタログに書いてある10Ωが、入力インピーダンスでなくて、
本当に測定に使った条件という意味であったのなら、この指示は行き場を失ってしまいます。そうならない為にもアンプのカタログに、入力インピーダンスを記載することは、ortfonにとっても我々にとっても望ましい事だと思うのです。
ポイントとして、10Ωが入力インピーダンスではありませんと言っているのは 本家YAMAHAではない 公式見解ではないという事。 C-2の開発メンバーでもなければ、YAMAHAの社員でもない、オーディオマニアが言っているだけ。 YAMAHA社内の測定事情を関係ない部外者がどうして断定出来るでしょうか。そう考えると発言の信用度には疑問符が付きます。
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