前回の日記からの続きです。
塗装・研磨が終わったエンクロージャーは、組立工程に移行する前に入念にチェックされます。これまでの工程毎に担当者名が記されたカルテが添付されており、不具合は工程や担当者のレベル向上のためにフィードバックされるとのことです。後で見た部材の塗装ブースの壁にも「Kaizen List(改善リスト)」が掲げられていました。
次は、ドライバー・ユニットの振動板の製造・加工工程を見学しました。
D3で新規採用されたコンティニュアム・コーンもこの工場で製造されていました。残念ながらここも撮影禁止なので写真はありません。
コンティニュアム・コーンの製造は、メッシュ(穴あき)のレジン・シートを加熱成型してコーンの形状にすることから始まります。小さなプレス機で1枚ずつメッシュのコーンを作成した後、歯磨粉のような粘性の高い液体をコーンの裏に塗布、加熱してコーンが出来ます。メッシュ・コーンを機械にセットしてからは全て自動プロセスで、出来上がったコンティニュアム・コーンは適度なしなやかさがあります。バス・ドライバー用のエアロフォイル・コーンも横で製造していました。
次はドライバー・ユニットの組立工程に移り、ダイアモンド・ツィータの組立を見ました。協力工場から納入された振動板は、表面はコーティング処理されて白っぽい色ですが、裏面はカーボン黒です。
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その振動板にエッジ、ボイスコイルを接着し、マグネット・アッセンブリーに組み込みます。
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工場長が強調していたのは、D3世代になってサービス性を向上させた点です。ツィータに不用意に触って破損させた事例がとても多かったらしく、D3からはツィータ・グリルの強度を上げて外せない構造にしたと聞いていましたが、実際はグリルを回転させると簡単に外れました。ツィータ・ユニット全体も写真の専用のロッドを後方から差し込んで回転させることで簡単に外れます。
ミッドレンジ用のターバイン・ヘッドもミッドレンジ・ユニットも同様に簡単に外せるとのことです。
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以前はツィータやミッドレンジが壊れただけでも症状によってはスピーカーごと持ち込む必要があり、ユーザーもディーラーも大変だったとのことですが、最近のモデルはディーラーのサービスマンが出張修理できるようになりました。
ネットワークの組立も同じセクションで行われていました。写真は800D3で、背面パネル(ここではSpines=背骨と言われてます)に実装したものです。
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クロスオーバー周波数は350Hzと4KHzで、スロープ特性はウーファーのハイカットは-18dB/oct、ミッドレンジはローカット、ハイカットともに-12dB/oct、トゥイーターは-18dB/octとのことですが、部品点数も少なく、ほとんど補正が入っていないようです。壁には本社工場で製造しているネットワークがディスプレイされていましたが、802D3のミッド・ハイ用と比較して800D3用が随分と大きいのが印象的でした。
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次はターバイン・ヘッドやツィータ用のノーチラス・チューブ等、手作業での塗装・研磨を行うブースを見ました。そこで塗装準備段階のオリジナル・ノーチラスを発見。今でも毎月2セットずつ製造しているそうです。
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最後は検品・梱包プロセスを見た後、各種の測定器、落下テストや経時変化、紫外線や塩水での耐久テストを行う設備を見学して工場ツアーは終了しました。
期待以上に丁寧で素晴らしいツアーだったので、長々と書いてしまいました。多少なりともご参考になれば幸いです。
続いてリスニング・ルームでのデモに移りました。その内容も機会を見て日記にします。
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