前回の日記では、「AnalogMagik software & Test LPs」の主に技術面の概要を説明しました。今回は、実際にソフトウエアを使用した調整について記します。例の如く長文失礼致します。
調整の対象は、メインに使用しているシステムで、TechDas Airforce One、SME Series V、Benz Micro LPSを組み合わせたもの。測定・調整の前に再度、Acoustical SystemsのSMARTractor、SMARTstylus、AnalogMagikのTorque Driverで目視での設置を詰めます。
SMARTractorでカートリッジの向きを正確に設計カーブ(Loefgren A/IEC)に合わせます。
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SMARTstylusでカートリッジアジマスを目視で合わせ、Torque Driverで2つの取り付けネジを0.65 inch lbsのトルクで均等に締めます。
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フォノイコライザーは、スペックに優れたアキュフェーズのC37を使用します。
各種の設定は今まで聴いていた状態、即ち針圧(VTF)が1.9g(推奨1.8-2.0g)、アンチスケーティングは1.5、負荷インピーダンスは1K ohm、イコライザーのゲインはHighに設定しました。
測定項目は以下の通りですが、実際の測定はTest LPに記録された順番に実行しました。
1:ターンテーブルの回転速度
2:ターンテーブルのワウ・フラッター値
3:カートリッジのアジマス(左右傾きバランス)
4:カートリッジの VTA(Vertical Tracking Angle=垂直トラッキング角)
5:カートリッジの VTF(Vertical Tracking Force=トラッキング力・針圧)
6:トーンアームのアンチスケーティング力
7:フォノイコライザーのインピーダンス設定
8:フォノイコライザーのゲイン設定
9:システム全体の振動値
10:システム全体の共振値
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多くの項目、特に3、4、5、6は相互に密接に関連しています。従って、一つの項目の測定値が不満でも一通り全て測定してから調整に入ります。最初の測定の結果、不満があったのは2(ワウ・フラッター)、3(アジマス)4(VTA)の3つ。
ワウ・フラッターは、メーカーの公称値の0.03%に対し測定値は0.07%。AnalogMagikが言う「Good number」が0.3%ですから十分に良い数字ですが改善の余地が有りそうです。ベルトのテンションを強めたり緩めたりして何度も測定しましたが、結局0.07%より改善しませんでした。この測定法の限界かも知れません。ただ、調整過程で当初設定していたテンションを緩めたところ、聴感上、低域の安定感が増した印象で、現在は以前より緩めた設定としています。
アジマスは、左右独立にクロストークを測定して調整します。Benz LPSのメーカー公称値は1KHzで35dB。AnalogMagikの「Good number」は30dB以上で左右の偏差が0.5dB未満、「Average number」は25dB以上で偏差が2dB未満。対して実測値は左右共に約27dB、左右の偏差は0.1dB程度です。アジマス調整はクロストークの絶対値よりも左右偏差を小さくすることが主眼なので、その点では「合格」ですが不満が残ります。シェル一体型のSME Vはアームでのアジマス調整の余地はほとんどありません。従って、これは他の項目の調整による改善に期待します。
VTAの調整は、主にアーム・ベースの高さ調整で行います。この調整に本当に手間取りました。
この項目の「Good number」はIMD2%未満で左右偏差が0.3%未満、「Average number」は3-5%となっています。対して実測値は左5.5%、右5.9%で「Average number」の水準にも達していません。他の項目対比大いに見劣ります。
アームのベース部分を上げてシェル側が相対的に低くなる(頭下がり)ように調整すると理由は分かりませんが右側数値が改善する一方で左側数値が改悪し偏差が大きくなります。一方でベースを下げてシェル側が相対的に高くなる(頭上がり)ように調整すると左右の偏差が小さくなります。目視での水平ポイントから上下にそれぞれ2mm程度の間を何度も上げ下げして調整したベストの数字が左4.84、右4.83。偏差は極小ですがIMD値は「Average number」の許容ギリギリ。私のシステムではこれ以上の改善は難しいです。
目視では調整後も(調整前も)水平に見えます。「目視」と書いていますが、SMARTstylusとSME V付属のゲージの両方でアーム・パイプの根本部分と先端部分のレコード盤面からの距離を測定し、超小型の丸型気泡管で再確認しています。
先述の通り、3(アジマス)、4( VTA)、5(VTF)、6(アンチスケーティング)は密接に関係しているので、VTAの調整中にこれらの項目も都度測定し、ある部分の改善が他の改悪となっていないかを確認しました。なるほど、調整には4-5時間を要するということの意味がよく分かりました。
一通りの調整後に再測定したのが以下の表です。
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肝心の音は、明らかに良くなりました。特に「音」に効いたと思われる項目は、ベルトのテンション調整、アームの高さ、アンチスケーティングです。測定前に実施したカートリッジとシェルの取り付け調整も効果があったと思います。
確認に主に用いたのはこちら。ヘビーローテーション盤で、デジタル・ファイルも手許にあり頼りになります。
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調整後に感じたことは「安定感」です。定位がビシッと定まること、響きが右や左に不必要に広がらないこと、音場が安定し音像が明確になること等です。
このような変化は一つの項目を調整しただけでは中々分かりづらく、「良くも悪くもアナログはあいまいだ」とつい最近まで思っておりました。先の週末に合計8時間程度かけて調整し、全体が改善すると違いが相当はっきり分かることにあらためて驚いています。
さて、前回まで話題にしていたアンチスケーティングに関しては、申し上げたい点が沢山あるので次回に報告します。
続く...
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