アナログ再調整(再挑戦) その4

日記・雑記
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前回の日記で紹介した「AnalogMagik software & Test LPs」に関して、ご質問を頂戴しました。レスの限られたスペースで回答するより、日記本文の方が良いと考え、今回は技術解説を少々。ということでAnalogMagik社Homepageにある解説とソフトウエア上のヘルプを適当に纏めてみました。日本の代理店経由で購入された場合は日本語の解説書が付属するようですが、私は当地のディーラー経由で購入したので、ここで紹介する情報は全て製造元のHomepageからのものです。

1:ターンテーブルの回転速度
テストLPにある3,150Hzの信号を出来るだけそれに近い周波数となるようにターンテーブルの回転数を調整します。ソフトウエア上に再生信号の周波数が連続的にデジタル表示されるので、それが3,150Hzより低ければ速く、高ければ遅く調整します、

2:ターンテーブルのワウ・フラッター値
Audio Engineering Societyの基準に基づき30秒間の回転変動を測定して数値化します。
ベルトドライブやアイドラードライブであればベルトのテンションやアイドラーの調整で改善が可能とされています。

3:カートリッジのアジマス(左右傾きバランス)
右→左のクロストークを測定するトラックと左→右のクロストークを測定するトラックをそれぞれ15秒から20秒程度再生し、それぞれのクロストークを測定します(1KHz)。左右のクロストークの偏差が最小となるポイントがアジマスのベストポイントとなります。

4:カートリッジの VTA(Vertical Tracking Angle=垂直トラッキング角)
アームの高さ調整のことです。一般的にはトーンアームが水平になっている時、カートリッジ(針先)がレコードを最適にトレース出来ると言われています。ここではもう少し理論的です。
針先がレコードと接触する角度(Stylus Raking Angle : SRA)は一般的に92度が最適とされており、正しく設計されたカートリッジであれば、アームが水平で適正針圧が付加された場合にSRAが92度になります。そしてその時に相互変調歪率(Inter-Modulation Distortion : IMD%)が最小となります。ここでは2つの周波数間(60Hz/7KHz)のIMD%が両チャンネルで最小となるようアームの高さを調整します。

5:カートリッジの VTF(Vertical Tracking Force=トラッキング力・針圧)
AnalogMagik社は、多くのカートリッジ製造元に最適針圧値に関して質問しましたが、「聴いて決める」以外の科学的な回答は一切得られませんでした。彼らの知る限りではこのソフトウェアでの方法が最初の科学的な試みです。推奨針圧レンジの中でも針圧を変化させると全高調波歪率(Total Harmonic Distortion : THD%)が様々な周波数帯で変化します。ここでは低周波数(300Hz)のトラックと高周波数(7KHz)のトラックを再生し、双方の周波数でTHD%が最小となるポイントを探ります。

6:トーンアームのアンチスケーティング力
TestLPのテスト・トラックを再生して、左右の全高調波歪率(THD%)偏差が最小となるポイントに調整します。他の項目と異なりテスト・トラックを最初から最後まで再生して最適値を探ることが大切であると強調されています。これは、アンチスケーティングの最適値はレコードの再生箇所毎に変化するからです。

7:フォノイコライザーのインピーダンス設定
20Hz-24KHzのピンクノイズを再生して、周波数特性のフラット具合を測定します。偏差が最小となるポイントが最適負荷です。

8:フォノイコライザーのゲイン設定
1KHzの信号を用いてシステムのSN比を測定します。SN比が最大となるポイントが最適ゲインです。

9:システム全体の振動値
テスト・トラックを再生して、記録された2つの周波数間(60Hzと500Hz)の相互変調歪率(IMD%)を測定することでシステム全体の振動量を数値化します。相互変調歪とは、LPに記録されていないのに(システムの振動により)スタイラスがピックアップする信号のことです。良く調整されたシステムではIMD%は2-3%を下回ります。

10:システム全体の共振値
カートリッジとトーンアームの相互作用で生じる固有共振周波数を測定します。好ましい固有共振周波数は8-12Hzというのが通説で、このレンジ外の固有共振は再生クオリティを劣化させると言われています。
ここでは、7.5Hzから35Hzのスイープを記録した水平振動トラックと(補助的に)垂直振動トラックの2つのテスト・トラックを用いて振動モードのピークを表示します。ピーク周波数が8-12Hzのレンジ外であれば、トーンアームの質量やカートリッジの重量、時にはカートリッジ取り付けネジのトルクを変えることでも調整が可能です。

以上が概略です。

最後に幾つかポイントをあげます。すべてHomepageに書かれていることですが、一か所に纏まっていないので、私の主観で選択しました。

〇 最初に従来の方法(目視やSMARTractor)で十分に調整してから測定すること
例えば明らかにアームが傾いていても、ソフトウエアがVTA(アームの高さ)の最適値を示すことがあれば、他の項目が大きく犠牲になっている可能性が高い。

〇 各項目単独での最適化では十分とは言えない
特に3(アジマス)、4(VTA、アームの高さ)、 5(VTF、針圧)、6(アンチスケーティング)の調整は相互依存が大きいことが強調されています。

〇 聴感による調整を否定するものではない
測定値が良くても聴いてダメならそれは最適値ではありません。

続く...

番外編:
K&Kさんへのレスで触れたDual 1249のアンチスケーティング機構。
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DualはSkate-O-meterというこのようなデバイスも発売していたようです。
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