長文投稿をご容赦ください。日本から戻って一段落したので、新しいPCの製作に取り組みました。
このPCのポイントは以下の通りです。
①eコアの評判がよろしくないIntel CPUを避けて、マルチタスク性能に定評のあるAMD CPUに初挑戦しました。
②グラボをマイニング用ライザーカードを用いてマザーボード外に設置し、グラボのノイズをマザーボードから出来る限り遮断する。JCATのネットワークカード2枚分のPCIeスロットが2基欲しいことと、このライザーカードのスペースを確保するためマザーボードはmATXに拘りました。
③更にサブPSUからライザーカードとグラボ用の電源を供給することで、ノイズ遮断を徹底する。また、mATXマザーボードの下に2mm厚の銅板を敷きました。今回のケースGD07はオーディオラックに入る最大サイズということで選択しましたが、鋼鉄製で音質的な配慮が無いので、システム全体とマザーボードのグラウンド電位の安定を狙いました。効果の程は不明です。短絡防止のため、銅板の上に熱伝導用のシリコンを敷いて絶縁します。
④連動基盤を用いて2台のPSUのオン・オフを連動させて操作をシンプルにし、サブPSU、ライザーカードも含めて一つのケースに収める。
⑤Windows Server 2022 (“WS2022”)コアモードをOSとしてRoonServer、HQPlayer、Diretta Hostを載せる。Diretta Target(DST-00)を直結することで、音声経路のGUI無し、ハブ無し、USB無しを実現する。
使用した主なパーツは以下の通りです。メインPSU、グラボ、NIC、サブPSU以外は今回新たに購入しました。
- ケース: Silverstone GD07
- マザーボード: ASUS ROG Crosshair X670E Gene
- CPU: AMD Ryzen7950X
- メモリDIMM: G. SKILL Trident Z5 DDR5 6000 (2x16GB)
- M.2 SSD: Samsung 980 500GB
- CPU Cooler: Noctua NH-C14S
- グラフィックボード: ASUS GeForce RTX3060V2 Dual OC 12GB
- PSU: Seasonic Prime TX700 Fanless を2台(上の写真は当初使用予定だったファンレスATX電源です)
- NIC: JCAT Netcard Femto を2基
- その他: メインPSUとサブPSUの連動基盤
製作にあたって苦戦した箇所は:
①サブPSU用のIECインレットの取り付けとドライブケースを分解してケース補強板とするための加工
②Windows Server 2022コアモードでRoonServerとHQPlayerを駆動するためのFeatures on Demand (FOD)とWASAPIのインストール。HQPlayerを再生するための調整。
③オンボードのIntel1225-V Ethernetコントローラーがどうしても稼働せず諦めました。ASUSやIntelのインストールプログラムやドライバーを幾つか試しましたが上手く行きませんでした。Windows11では問題なく稼働するので、ハードの問題ではありません。
完成後の動作確認:
①PCM再生
PCM、DSDからPCM705.6/32、PCM768/32に変換してもCPU稼働率6%、GPU稼働率15-20%程度で、音が途切れることはありません。幾つかのフィルターを試しましたが、どのフィルターでも問題なく再生できます。
②DSD再生
DSDの無変換再生はDSD256まで試しましたがスムーズです。問題はDSD変換で、DSD64からDSD128の変換であっても音切れします。GPUの動作を見るとCOPYの負荷が大きく常時50%を超えます。DSD再生のCUDAオフロードはCPU-GPU間のデータ転送量が大きく、ライザーカードでPCIe x16をPCIe x1としたことが大きく効いているようです。試しにマザボ上のPCIe x16のスロットに挿すとDSD512でも途切れることなく再生出来ます。ただそれでは当初目論んだグラボのノイズ遮断に関しては片手落ちとなります。以上はCUDAオフロードした場合です。CUDAオフロードを外すと、DSD256までは安定再生、DSD512では頻繁に途切れます。
私のDAC(Holo May KTE)はマルチビットラダー型でPCMのNOS再生を気に入っています。HQPlayerを経由しないフォーマット通りのネイティブ再生か、全てPCM変換する使い方が主となるので、現状でも良いのですが、ハイサンプルのDSD変換の音は聴けません。マザボ上に移動するか悩ましいところです。
③熱対策
全てのパーツをケース内に詰め込み、ラック棚の高さがギリギリ、更にRoonServer、HQPlayer、Diretta Hostを担うので放熱が心配でしたが、大丈夫そうです。マタイ受難曲(DSD2.8MHz)をPCM705.6/32bit に変換して2時間再生してCPU温度61℃、GPU温度53℃です。
2日間、以上の構成で聴いて、グラボをマザボ上のPCIe x16スロットに移しました。グラボのノイズ対策としては中途半端となりますが、ハイサンプルに変換したDSDの音も時々は聴きたいので仕方ありません。代わりにDiretta出力用のJCAT NICをライザーカードに移しました。
結果、Direttaの設定限界の768/32、DSD512変換までストレスなく安定再生可能となりました。PCM⇔DSD変換、closed-form-16Mや sinc-L等の各種フィルターも問題ありません。再生限界の高いUSB出力では1536/32、DSD1024まで一応再生できますが、明らかに音が細くなるので実用的ではなく、こちらも768/32、DSD512が実用限界です。
以上はCUDAオフロードがオンで、これを外したCPUのみの再生では、768/32、DSD256変換までが安定再生で、DSD512は途切れます。
今回は色々と工夫して全ての部品を一つのケースに入れました。Linuxはこれからですが、Windows Server2022 GUI無しでは発熱の問題は無く、CPUファンは既定の低速回転、GPUファンは回りません。ただ、Windows11では起動直後からファン音が聞こえるほど回転が速まるので、こちらをメインに使用するなら追加の放熱対策が必要かもしれません。
これで一応の完成とします。
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のびーさん、こんばんは。
OSはWindows Server2022でやられているのですね。
PCにお詳しいのびーさんならではのPCができあがりましたね。
私はあまりPCには詳しくありませんので、MFさんのサポートにより最近似たようなスペックのPCを導入しましたが、以前のと比べてみましてもかなり良い感じで鳴っています。
なかなかUKにはお伺いできませんが、また機会がございましたら是非お越しください。
Harubaruさん、
レスありがとうございます。今回のPCでは、MFさんのアプローチと異なる部分が多いのですが、AMD Ryzenの採用や2電源化等の幾つかのキーとなるポイントは彼のアイデアを拝借しています。Harubaru邸の新しいPCは小型ながら従来機を超える音だと伺っています。
私の方は、現時点でやりたいことを一通り達成したので、デジタル系はひとまずこの構成でいくつもりです。
一方でアナログ系は、日本で入手した例のイコライザーとW3カートリッジをメインのAirforce Oneに装着して、DS003とDS-E1改の方をサブプレーヤーに移す作業が残っています。しばらくはデジタルで音楽を聴いてアナログで遊ぶことになりそうです。
のびーさん
素敵なオーディオPCの完成、おめでとう御座います!
大変お疲れ様でした。しかも、オーディオラックにきれいに納まって、いかにもオーディオ機器!って感じでいいてすね。
私も現在の4つのPC群を何とか、一つにならないかな?と思ってるので、とても、羨ましいです!
そして、どんな出音なのか?とても気になりますね。
X1おやじさん、
おはようございます。
今回のPCは、ちょうど日本に居た時に構想を練っていて、普段より考える時間をたっぷりかけたので、思った通りのものが出来ました。作業したくても出来ないのはもどかしいですが、妄想するのも楽しいです。
以前は小型PCを幾つも使って分散処理するのが良いという考えでしたが、今はメインのPCに操作用の端末の2台構成が便利で音も良いと考えています。
確かにPCによる音の差は無視できませんが、DAC以降の機器構成と使いこなしの方がずっと大事だと思います。
製作直後の興奮も大分おさまってきたので、ここ数日はじっくりと音を聴いています。
PCオーディオの音としては、相当重心の低い厚い音が出ていると思います。それでも音楽の濃さや楽しさはアナログには及ばないですね。もう一踏ん張りが必要です。