2021年04月29日
昨年来、よく聞いているジャズミュージシャンがいまして
それはオーストリア出身のギタリスト
ウォルフガング・ムースピールなんです。
特にドラマーのブライアン・ブレイドと組んだアルバムが好きで
昨年、再発された『Air, Love & Vitamins 』(2004)
(これはベースにマーク・ジョンソンが加わったトリオ)
http://www.jazzitalia.net/recensioni/airlovevitamins_eng.asp#
それに二人のデュオによる『Friendly Travelers Live』 (2008)
「Muthspiel & Blade – FRIENDLY TRAVELERS LIVE – End on 4」
https://www.youtube.com/watch?v=kaeJYoR2dWI
そして、昨年リリースのギター・トリオ(ベーシストはスコット・コリー)
を中心としたアルバム『Angular Blues』
この3枚は殊にお気に入りで、よく聞いています。
私が感じるムースピールのギターの魅力というのは
(まあ、聞いたことがある方はお感じになると思いますが)
パット・メセニーの強い影響と
それに負けないくらいの人懐っこさのようなものといいますか
いい意味で、その温度感が
パットの天才的なきらめきに
いぶし銀をかけたような感じに聞こえるところかな~なんて
分かったような分からないようなことを書いていますが
でも、今日のテーマは、この感じをめぐるお話なのであります。。。
ところで、最新作である『Angular Blues』は
実は東京で録音されたものなんであります。
アルバムと同じメンツのギタートリオで
2018年8月の東京・コットンクラブでの3夜6セットの公演を終えた翌日
池袋のレコーディングスタジオStudio Dedeで録音されていたもの
なんだそうで、
このときのエンジニアが松下真也という人で
このスタジオのハウス・エンジニアです。
私はよく知らなかったのですが
Studio Dedeの機材がかなりユニーク。
そのあたりの様子をピーター・バラカンさんが取材されていて
くわしくはそちらをご覧いただきたいのですが
「A Taste of Music Vol.31」
https://www.a-taste-of-music.jp/article/vol-31/
一言で云うとヴィンテージに対する独自のこだわりが感じられます。
以下、少し上記の記事から引用しながら、お話を進めます。
まず、TELEFUNKENのM15という
元は24chのテープ・レコーダーを
16chのヘッドに替えて使っています。
16chならS/Nがいい(20kHzあたりまでは入る)のだそうです。
細かなエディットはPro Toolsで行うのですが、
最初のリズム・セクションをアナログで録ることで
テープによる適度なサチュレイシュョン(歪の一種)や
コンプレッションがかかり、
ピークが自然に丸くなった音を取り込め、
無理にデジタル・リミッティングを施さなくても、
ちゃんとピークが丸くなるのだとのこと。
でもM15は、主流だったSTUDERのA80にくらべると
アンプに余力があり、クリッピングが起こりにくく
テープのサチュレイションが起こるまで入力することができるとか
ヴィンテージ・マイクの組み合わせも
ハイ落ちして「オールド・スクールすぎ」ないようにしているとか
現代的な配慮がうかがえます。
『Angular Blues』に話を戻すと
このアルバムのミックスは、ECMレーベルなので
マンフレッド・アイヒャーなどが加わった音作りなのでしょうが
それでも随所に東京の音のタッチが感じられるような気がします。
私はLPを入手し、愛聴していますが
我が家では、やはりハーベスのシステムがいい感じです。。。
よく聞くと、レンジは広くなくても情報量はあると思います。
たとえばブレイドのドラムスやコリーのベースは、
音の抜け(決して悪いわけではない)を意識するというよりは
ふくよかな中音域を愉しむ感じで聞けますし、
ムースピールのギターも、
とりわけいぶし銀な感じが伝わってきます。
ゴールデンウイーク初日の今日
当地はあいにくの雨模様ですが
こんな日は、ちょっとくすんだ色合いの音を愉しむのも一興かな~
などと思った私の日記でございました。。。
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