測定値改善のための試行錯誤

日記・雑記
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今回はDAC基板の見直しについて書きます。簡単に言えばあれこれいじったら測定値が上がったということです。詳しく書いても面白い内容ではないのですが、半分は自分のためのメモとして記載しておきます。

最初に測定値の改善状況を次に示します。

[:image1:]
↑ 改善前の測定値(THD:0.00211% THD+N:0.00457%)

[:image2:]
↑ 改善後の測定限界値(THD:0.00067% THD+N:0.00297%)

WM8741はTHD0.001%がチップスペックなので改善後はこれを超えてはいます。しかし今流行のDAC達に比べたら大したことはない数字です。あまりTHDスペック重視のチップではないですから正直測定でこれ以上を目指すなら他のDACチップに変えてしまった方がずっと効率的でしょう。

■差動回路の見直し

ある程度以上の本格的DACチップの場合、出力は差動回路となっています。WM8741の場合は電圧出力ですが差動出力を持っています。

差動出力はプラス信号とマイナス信号を出力しそれを相互に打ち消すことで、両方に含まれている同様のノイズを打ち消すことで元信号のSNを上げるという手法です。この差動回路を理想通りに動作させるためにはプラス信号とマイナス信号のバランスがしっかりと揃っていることがノイズの打ち消しのためには重要となります。

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↑ 打ち消し成功の様子 同相ノイズが消えている

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↑ 打ち消し不足の様子 同相ノイズが信号に残っている

・DCサーボによる差動バランスの影響

差動回路ではプラス信号とマイナス信号のバランスが重要というお話でしたが、DCサーボ回路もこの差動回路のバランスを崩す事に気が付きました。試行錯誤の上、DCサーボ自体は削ることなくプラスマイナスのバランスを修正することが出来ました。

以前にDCサーボを外したときだけ測定値が改善することがあったのですが、ずっと原因が分からなかったです。しかしこれはDCサーボを接続したときだけ差動信号バランスに影響を与えてしまっていたことが原因でした。

とりあえずの対策はセオリーを無視した回路なので正しいのかどうかわかりません。動いてはいるのですが動いていればいいというものでもないと思うので(特定条件下では危険な場合も?)これについてはもう少し検証したいと思います。

・部品の精度

もう一つ、バランスをしっかり確保するためには部品精度が重要なのですが、ここを重点的に見なおしたことが次の改善点です。新たに0.1%薄膜抵抗、2%精度のPPSコンデンサ(ECHU)。これらを使うことで差動でのノイズ打ち消し性能を向上させることを狙いました。

しかし結論から言えばコンデンサは全てECHUにする必要はなく、C0Gグレードのセラミックならばほぼ問題ないという結果です。個別で調整すればECHUよりもむしろ誤差のあるコンデンサを試行錯誤で交換していったほうが歪率は下げられます(実際に試しました)。

抵抗も0.5%程度で測定値の向上はストップ。おそらく部品の精度以外に誤差の原因があるため、このあたりの精度で十分というか、バランスの改善は頭打ちになっているものと思われます。何事もほどほどにしかし隙なく対策するほうが結果は良いと感じています。

■デジタルのパスコンの種類とノイズ

[:image3:]

測定値に影響を与える項目としてDACチップ周辺のパスコンの実装、電源信号の取り回しがありました。パターンを見なおしてもしやと思い試した結果だったのですが取り回し方法で測定値も変化(0.0002%ほど)します。

おそらくこれはGNDの落とす場所が適切でなかったためと思っています。画像では黄色がすごく見難いですが、DACのデジタル側の電源ノイズがC10からアナログ電源に回り込んでいるのが問題かなと思うところです。今思えばこのあたりのGNDは共通にせずセオリー通り分離&DACチップ直下で結合させればよかったのかもしれません。(製作中の次作ではこれを反映した設計になっています)

かなり細かい部分だと思いますがデジアナ混合の設計は難しいと考えさせられる部分です。THD0.001%を下回ると僅かな違いが即測定に現れてくる世界で大変厳しいです。まさに経験が求められる世界だと思います。

その他の話としてデジタル信号側で使用するコンデンサの種類でも音は変わりました。10uFの電源用パスコンでの比較ですがタンタルはやや荒く、電解コンデンサはゆったりまろやか、セラミックはキリッとした音でした。

デジタル電源でもハッキリと音が変わるのは面白いですね。個人的にチップタイプのセラミックは世間で言われるほど悪くないと感じています。理由は不明ですがオーディオ的に言えば面実装だとがっちり振動を抑えられているからではないかと妄想しています。

■音の差について

改善後は全体的には若干すっきりとした印象です。ただ高域が以前よりもきつくなり耳に刺激的になったのはあまり良くない点でしたので別の部分でバランス調整をすることになりました。

確かに測定値は良いに越したことはないのですが、音を重視するならばTHDには現れない部分での積み重ねも全く侮れないというかかなり重要だと思います。これは自作をやるとなおさら強く思うようになりました。

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