【音盤編】
計14枚のCDを聴き終わった後に、ヒジヤンさんからのリクエストに応じて直感的に並べてみたものがこちら。
並べる際の基準についての細かい指定はなかったので、
最後に聴いたマーラー「交響曲第8番」を基準とし、演奏+録音、両方の総合点で分類しました。
比重としては演奏7割、録音3割くらいかしらん。
録音だけ良くても、それが演奏の良さや面白さが伝わることに寄与していなければ評価が低いです。
上段が評価高、下段が評価低。同じ段の中では左右順不同です。
最後のマーラーは上列2段め(右端)にしました。
【1段目】
・アート・ペッパー(ジャズ)
・モーツァルト レクイエム / クルレンティス
・バッハ ブランデンブルク協奏曲
・バッハ ブランデンブルク協奏曲
・魔笛/ガーディナー
【2段目】
・シェルビィ・リン(ボーカル)
・アイデア・オブ・ノース(ボーカル)
・ベートーヴェン「クロイツェルソナタ」/アルゲリッチ&クレーメル
・マーラー交響曲第8番/MTT
【3段目】
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番「春」/ポッジャー
・アレグリ:ミゼレーレ / タリス・スコラーズ
・チャイコフスキー 交響曲第6番 / ゲルギエフ
・マーラー交響曲第5番/MTT
【4段目】
・バッハ チェロ組曲
・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 / イザベル・ファウスト
・バッハ チェロ組曲
・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 / イザベル・ファウスト
以下、各盤へのコメントです。
①ジャズ
・アート・ペッパー ミーツ・ザ・リズム・セクション: トラック1,3
左にサキソフォンだけ綺麗に分離し、真ん中に何も無し、右の真ん中寄り手前にベース、奥にやや遠いピアノ、という不思議な録音だと思ったら、元々のレコーディングはモノラル、それをステレオ化したもの、とのこと。なるほど。
アート・ペッパーの名前だけは聞いたことがあったが演奏を聴くのは初めて。
サキソフォンだけ単独で分離しているので、スポットライトを当てているよう。録音は生々しく、演奏はとても惹きつけるものがあり魅力的。
②ボーカル
・シェルビィ・リン Just A Little Lovin’: トラック1
女性のヴォーカルものは(オペラを除き)いつもはほぼ聴かないので新鮮。
サウンドがあちこちに回り込む。ヴォーカルは真ん中のやや高い位置から聴こえる。
ヘッドフォンで聴くと更に面白そう。
・アイデア・オブ・ノース エヴィデンス:トラック1
4名の並んだヴォーカルが人間の声だけで様々な音を出し表現するアンサンブル。これも新鮮。
クレマン・ジャヌカンの「鳥の歌」を思い出す。
※この辺で音量をヒジヤンさん基準から私の普段聴きのレベルに落とさせてもらう。
アンプで2〜3目盛りくらい異なる。
③クラシック
・バッハ チェロ組曲/Quirine Viersen: トラック1
これはあまり演奏自体に感銘を受けず。
録音自体はクリアだとは思いつつも、楽器の響きが薄く感じたのもあり。
※ただし音量を落とした直後なので、それが評価マイナスに作用した可能性あり。(音が大きいと良く聞こえる、というあれの逆バージョン。)
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番「春」/ポッジャー:トラック4
これは演奏自体は良いと思いつつも、ヴァイオリンとフォルテピアノのバランスがどうも気になった。
ポッジャーが中心のアルバムなので仕方が無いが、ヴァイオリン主体でフォルテピアノが遠く、もともと楽器として現代のピアノと違ってマットな質感なので尚更ぼんやりとした印象に…。
録音自体に入っている情報量は非常に多いだけに勿体ない。
・ベートーヴェン「クロイツェルソナタ」/アルゲリッチ&クレーメル:トラック7
有名な盤。聴いたのは久しぶり。
(当時の)DGレーベル特有の、空間情報を取り込んだ結果少し靄がかかったような音だが、直前のポッジャー盤よりもこちらのほうがモダンピアノとヴァイオリンのバランスが良い。
※実際にはピアノの音はもっと大きいはずだし、振幅の大きい曲想かつ演奏者だが、ピアノの音量を適度に抑え、デュオの録音として聴きやすいバランスをとってある、の意。
ここでヒジヤンさんから、1次反射面の調音の有無による違い、のデモあり。
…うん、違いがさっぱりわからない(笑)
正直なところ、例えばヴァイオリニストが弾いている最中に体を動かしたとき(=姿勢、体の向き、楽器の角度などが変わる)の聴こえ方の変化のほうがよほど大きい。
演奏のクオリティが変わるわけでもないし・・・と思ってしまうところは、つくづく自分はクラオタであってオーオタではないな、と。
気を取り直して次へ。
・バッハ ブランデンブルク協奏曲 第3番/ダニーデン・コンソート:トラック8
あくまで一般論ですが、古楽アンサンブルはリーダー/指揮者の弾く楽器が強めに出る傾向がある。
例えばF.ビオンディ&エウローパ・ガランテ、C.バンキーニ&アンサンブル415であればヴァイオリンがバリバリに前に出るし、R.アレッサンドリーニ&コンチェルト・イタリアーノ、A.マルコン&ヴェニス・バロック・オーケストラであればチェンバロやオルガンの通奏低音がゴリゴリに出る。
私自身は通奏低音ゴリゴリな団体が好み。
この演奏は中央やや左寄りでチェンバロがバリバリ弾かれて「おっ?」となり、ライナー・ノートを確認したら指揮者が真ん中にチェンバロを置いて弾き振り、の模様。
その周りを囲むように他の楽器が配置されており、録音でもそれが綺麗に出ている。
LINNレーベルなので透明感の高さ、分離感が良く、なかなかの好み。
・アレグリ:ミゼレーレ / タリス・スコラーズ :トラック1
おそらくGimellレーベルの録音のポリシーは、演奏=声+残響音に満たされた教会の空間全て であり、総合的に聴いて(体験して)ほしい、というものなので、こればかりはどうしようもないのですが「曲も演奏も良いだけにもう少しクリアな音で聴きたいなぁ」と思ってしまう。
なお、タリス・スコラーズのCDは、録音の好みはともかくとして、演奏に常にハズれは無い。
・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 / イザベル・ファウスト, ハーディング/マーラー室内オーケストラ
聴く前にある程度予想はしていたが、予想以上に演奏内容とこの曲に期待するものとの食い違いが大きく、クリアな録音がその差を強調してしまい、ポジティブな感想を全く抱けず。
・魔笛/ガーディナー&イングリッシュ バロック ソロイツ :トラック1,2
実はガーディナーの演奏はあまり聴かない。
どうしても古楽オケには、おもちゃ箱をひっくり返したような予測不能なサウンドをある程度期待してしまうので、整って横に流麗に流れる傾向があるガーディナーの演奏は意外性が無く、あまり好みではない。
が、この「魔笛」は予想外に面白い!
流麗なのはいつも通りだが、まるでライブのような活き活きとした演奏。
ルートヴィヒスブルクでの音楽祭の合間、あるいは前後に収録したもののよう。アムステルダムでの映像も残っているそうで、おそらくこの「魔笛」を引っ提げて他の場所でもツアーを重ねた上で録音に挑んだのでは。
これは純粋に楽しめた。
・モーツァルト レクイエム / クルレンティス: トラック3.4.5
キレ良く激しい演奏、クリアな録音。
私自身の好みとして、甘ったるいロココ的なモーツァルトや鈍重な一昔前の演奏よりも、キレキレの辛口スッキリ系のモーツァルトのほうが好きなので◎。
・チャイコフスキー 交響曲第6番 / ゲルギエフ&マリインスキー劇場管弦楽団:トラック1
クレジットを見ると、どうやら夏のワールドツアーの途中にフィンランドで録音した模様。
おそらくコンサートの前後に収録したか。
指揮者とオケにとってはお国モノ、しかもその中でも最も有名な作品なので、当然演奏の完成度は高いし録音も良いのだが、ただしライブの熱気は全く残っていない。
一週間前にノット/東響のライブを聴いており、なんとなくそれと比較してしまい、少々肩透かし。
(その意味ではゲルギエフにはウィーンフィルとの4~6番のライブ録音があり、そちらのほうが傷はあっても楽しめる気がする。)
・マーラー交響曲第5番/MTT:トラックI
音質良好。演奏もテクニカルには良い・・・ように聴こえるのだけど、なぜか演奏全体の感銘度合いはそれほどではなかった。
あまりしっくりこない。
・マーラー交響曲第8番/MTT:トラック12
こちらは同じMTTの演奏ながら、グッと来るものがある。
去年の年末に同曲をN響で聴いたが、演奏は良かったものの席が悪くて不完全燃焼気味だったので、こちらのクリアでダイナミックな録音のほうが楽しめた。
こうして各盤の感想を書いてみて、最初の並びと突き合わせてみると、自分の評価基準は明らかに
・ライブ感
・意外性/新奇性
を重視しているのかな、と思われる。
うーん、やはりクラオタなんですねぇ(笑)
コメント ※編集/削除は管理者のみ
眠り猫さん、その3をありがとうございます。これで終了ですね。
今回は試聴編になりますかね。
当日は自分と聴き方や聴きどころの捉え方が異なるので、とても勉強になりました。多くの人の考え方や感覚を知ることは、自分の幅を広げるために必要なことですね。自宅オフ会ですと、1)感想を聞く耳が真剣になる、2)自分が設定した狙いが明確なので対比がしやすい などのメリットがあります。
デメリットは、自分の訴求ポイントを感じてもらえないと落ち込むところでしょうか。
ですが、これは自身が演奏するときも同じですし、感想から受ける喜びや打撃は何倍も大きいので、オーディオでは大抵の場合、平常心を保てるようになりました。
今回は、クラオタ志向の眠り猫さんでしたので、どんな感想になるのか読めない面が多かったのですが、詳しく解説してくれたので勉強になりました。当日に聞いたことは、自分なりにまとめていますので、自分視点の来訪記もアップしますね。
こうしてみると、当日の理解と訪問記の記載内容と異なる部分もあります。眠り猫さんは、「あの時話したことが、このように伝わったんだ」の視点で見てもらうと面白いかと思います。なので、自分のメモ書きは修正せずに、そのままアップしますね。
>自分の評価基準は明らかに
・ライブ感
・意外性/新奇性
を重視しているのかな、と思われる。
感想を自分で客観的に読んでみて、自分の内面を知るのもいいですね。
私としては、それなら
・もう少し違うセッティングで聴いてもらった方がよかった
・選曲はああすれば・・・
など、思いが浮かびました。
よかったら、気候のよいときにまた聴きに来てください。
セッティングは簡単に変えられますし、趣向を知った上での選曲は自分の感性が試されます。
追って、その2の方に補足など書き込ませていただこうと思います。初訪問の記録、どうもありがとうございました。
ヒジヤンさん、こんばんは。
一旦これで訪問記は完了とします。
勢いに乗せてもう少し書けるかとも思ったのですが、しばらく時間をおいてみて、後から振り返ってみたほうが良いかな、とも思いまして。
先程ヒジヤンさん視点の来訪記も読んでみました。
同じ場のはずでも視点が異なるとやはり面白い!うまく咀嚼できたらそちらにコメントしてみます。
眠り猫さん
同質のものは瞬間的に理解出来るものですが、異質なものを理解するには時間が必要ですね。
自分のオーディオは、わが身は指揮者の位置づけです。
・「自分がどのように鳴らしたいか」「機器やそれらの環境を奏者とし、マイルームをホールに位置づけ」「サウンド構築する」
・様々なソースがある中で、「自分の感性に合う音源を選び出し」それを自分のイメージに合うように鳴らす。
・どれか一つの音源に合わせて調整するのは割と簡単ですが、幅広く鳴るように、「最大公約数を求める作業」は、本当に大変です。
だから面白い!自分への挑戦ですね。
自己の演奏活動は年齢と共に限界を感じてしまいましたが、オーディオはまだまだいける!こんな意識です。
この面白さは猫さんにも感じてもらいたい。そして、オーディオ休止中と言われていましたが、「オーディオって面白いですね」と言わせたい。そんな思いがあります。
自身の課題としては、「こんな少しのことで鳴る音楽が変わる」と言うことを感じてもらいたいですし、実証したい。そんなことを考えています。そのために、眠り猫さんの感想と自分の受け取りの対比を読み込んで更に理解を深めておきます。
またコンサートのタイミングに合わせてでも、お立ち寄りください。
ヒジヤンさん、おはようございます。
>自分のオーディオは、わが身は指揮者の位置づけです。
なるほど、確かにヒジヤンさんのスタンスはそのような印象です。
私はどちらかと言うと受け身というか、自分が不快でない環境さえ整えてしまえば、その範囲では来るもの拒まず何でも有り、という雑さがありまして、たぶんそのあたりがオーオタになりきれない所以かなぁと考えてます。
>この面白さは猫さんにも感じてもらいたい。そして、オーディオ休止中と言われていましたが、「オーディオって面白いですね」と言わせたい。そんな思いがあります。
まだ再開には至りませんが、訪問後、実は久しぶりにいろいろとオーディオ機器の海外レビューを漁ってしまいました。
特にCDプレイヤーは手放して久しいですし今後も導入予定は無いのですが、メカメカしさにはやはりロマン(?)を感じます(笑)
また是非藤沢に伺いたいなぁと思いますので、宜しくお願いします。