2019年04月12日
ノラ・ジョーンズの新作はいいですよ。
一皮むけたっていうか、
これまでの数作の蓄積が熟成して、
ブレイクスルーした感じがあります。
いちばんのポイントは音作りだと思います。
音響的によく練られています。
前作『デイ・ブレイクス』以来、彼女のつくる音楽には
どうすれば音楽的にクリアに伝えられるかというテーマが
あったように感じていました。
あのヴォーカルと曲を最大限魅力的に伝える工夫が必要だったのです。
M1「マイ・ハート・イズ・フル」は、
そういう問題意識のようなものに答えてくれる
これまでの彼女の楽曲にはない
エレクトリックなエフェクトが印象的です。
トーマス・バートレットによるプロデュースがいいですね!
デビュー時にくらべて複雑で多面的な表情を描き出すようになった
今の彼女のヴォーカル・楽曲には、
もっとそれに見合ったアレンジが必要だったのだと、
この1曲を聞いただけで、そう思わされます。
M2「ビギン・アゲイン」は、前作以来の
ブライアン・ブレイド(ドラムス)クリストファー・トーマス(ベース)
そしてノラのピアノというトリオを基盤に
ピート・レム(ハモンド・オルガン)が加わった楽曲ですが
これも音響的に、ベースとドラムスが重く響き
それに合わせてピアノも強いタッチで録音されています。
このトリオも、ずいぶんカッコイイ演奏になってきたな~。
ロニースコットでのライブのサウンドを彷彿させます。
というか、それをもっとドラマティックに押し進めた感じ。
彼女のピアノ・ヴォーカルも、よりブルージーに聞こえてきます。
M3「イット・ワズ・ユー」はM2のスロー・バラード編という印象。
ホーンも加わった厚みが、なるほど必然的だな~と感じられる1曲。
M4「ア・ソング・ウィズ・ノー・ネーム」と
M6「ウインタータイム」は、
ウィルコのジェフ・トゥイーディーとの共作。
うまくウィルコのサウンドを取り込んだな~という感じです。。。
生ギターとエレキの独特の組み合わせがそれだと思うのですが
そういう意味では、特にM4は、以前の彼女のアレンジだと、
どうしても一歩控えめなアレンジになってしまいそうな楽曲を
一味加えて、うまいこと仕上げています。
M5「アッ・オゥ」もM1と同じく
トーマス・バートレットによるプロデュース。
ノラのヴォーカルにも曲の終盤にエフェクトが施されていて
遊び心が感じられる1曲です。
M7「ジャスト・ア・リトル・ビット」は
M2・M3のセットでのサウンド。
やっぱり重いドラムスとベースの上に
ノラのヴォーカルとホーンがフワッと載って
重層性が感じられるサウンドでアルバムの幕が閉じます。
というわけで、全7曲のレビューをしてみました。
アルバムのライナーノーツにもあったのですが
ノラ自身は、あんまりコンセプチュアルなアルバム作りが
得意ではないんだそうで、
こういう1曲ごとのレビューの仕方がいいかな~と思ったのですが
あえてトータルなアルバムの印象を申し上げれば
彼女の1週間のダイアリーをのぞき見したような感覚というか
時間の経過を追体験したかのような感覚がありました。
ちょうど7曲ってこともありますし
各曲が1週間のその日ごとの象徴的なワンシーンを切り取ってきたような
そんな印象でした。
それくらい彼女の「今」がフレッシュに感じられる作品です。
ぜひぜひご一聴を!
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