The lost technology
最近ブルーレイDiscで見たSF映画、Blade Runner 2049、Alita、Mortal Engines(邦題 移動都市モータルエンジン) 、この3本の共通のキー・ワードが’The lost technology’。
ある事件によって世の中が大きく変わってそれまであったテクノロジーが失われてしまう。
オーディオ界にも失われた技術はいくつもありますが、真っ先に私の頭に浮かぶのがアナログ・プレーヤーのトーンアームの電子的ダンピング機構。
1980年ころに出てきた電子的ダンピング機構はSONY、DENON、Victorの3社が手がけたもののCDの出現によってアナログ・プレーヤー市場がしぼんだこともあって一気に絶滅への道をたどりました。
機械的ダンピング機構についてはパイオニアがExclusive P3やPL-30/50/70などでオイルダンプ機構を採用していましたし、テクニクスはEPA-100というトーンアームで制動可変ダイナミックダンピング機構を設けていましたので低域共振の問題を理解していたメーカーは多かったように思います。
1980年ころのアナログ全盛末期においてもこの低域共振について商品説明に何の記載もなかったと思われるのはSAECのアームやYAMAHAのGT-2000などのプレーヤ。
SAECやYAMAHAの関心事はもっぱら初動感度や剛性だったような気がします。
現在はオイルダンピング機構を設けているトーンアームがSMEやグラハム・エンジニアリングなどから供給されているだけです。
現時点の国産品で機械的ダンピング機構を設けているものも私は知りません。
SAECやYAMAHAが近年出した超高級機は昔と同じで商品説明には低域共振ダンプについての記述はありません。
テクニクスの現代のフラグシップSL-1000Rの商品説明にはダイナミックダンピング機構等の記述がないので過去の技術が採用されていないものと思われます。
過去のテクニクスのフラグシップ製品に比べてスピンドルモーター系は進歩したと思いますが、トーンアームについてはむしろ退歩しているのではないかと危惧しています。
オイルダンプ機構を持ったアームに関してはGRFさんやX1おやじさんのところで聴かせていただいたSME Series V のヴォーカル再生が強く記憶に残っています。
ヴォーカルの安定した定位と音場感がアナログ離れしていると感じたからです。
誤解を招かないように捕捉しますが、アナログ特有の滑らかさそのままにデジタル的ながっちりした定位感が得られているという意味です。
これはX1おやじ邸訪問記で書いた通りです。
で、なんで長々とこのダンピング機構の重要性について書いたかというと、私が前に入手したThe lost technologyを持つアナログ・プレーヤ、Victor QL-Y55Fに最後のテコ入れをすることを考えたのでそれにかける費用と労力を正当化するためです。
m(_ _)m
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QL-Y55Fは現状のままでも拙宅においてGT-2000をサブの座に追いやった実力を持っています。
過去の日記、GT-2000 vs QL-Y55Fに書いた通り、このThe lost technologyによる効果が大きいと思っています。
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でも、やはりこれは当時の中級品の悲しさでメーカーが相当コストリダクションしている部分があります。それを少し補ってやることでさらなる高みを目指したい。
それでこれをもってウチのアナログの完成形としたい。
あまりお金をかけることはできないのですが、それでもなんとかできる範囲で…。
姿かたちを超高級品のようにすることは不可能ですが、元の素性はいいので少しの改善で音だけだったら孤高の存在になることが可能かも…なんちゃって。(^^;)
まず一番やりたいのはキャビネットの中に設置された電源トランスの使用をやめること。
トランスは電気的なノイズ源になるし機械的な振動源にもなるからです。
プレーヤ内にトランスを置く場合、メーカーではダンパーを介してキャビネットに取り付けますからメーカーとしてもキャビネット内設置のデメリットを知っていてコストなどが許せば外に出したかったはず。
電源の主要部は外に置いてできればキャビネット内のコントロール基板へはACではなくDCで供給したいと思ったのですが、まずそこで躓いていました。
元の電源系の設計がどうなっているかよくわからなかったからです。
QL-Y55Fはスピンドルモーター用のコントロール用だけではなくアームのメカトロニクス部やそのコントロールのためのマイクロプロセッサー用の電源も必要なので電源系はかなり複雑なのです。
ところがひょんなことからネット上でサービス・マニュアルを入手できたのでそこから計画が進み始めました。
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QL-Y55Fはスピンドル・モーターの駆動制御やアームのコントロール用の垂直と水平のコイル駆動、そのコントロールのためのmpuなど多くの回路のためそれぞれの電源電圧を供給する大きなICを持っています。
必要な電圧の種類があまりにも多いためそのICはそのまま利用することにしてそこに供給されるトランスの2次側を整流して作られている約±18VのDC電圧を外で作るのがよさそうということがわかりました。
そうすれば内臓のトランスは使用せずに済むし、外で安定化したDC電圧を供給することでキャビネット内部にACを入れる必要がないのでノイズ的には有利です。
中に電圧安定化回路があるのに外にも安定化回路を設けるのはちょっと贅沢ですが、この際なるべく理想的な電源系を構築したいと考えました。
ただ、この電源±18V、電流1.5A(ターンテーブルの起動時には約1A程度は必要なので余裕を見るとこのくらい)というのは一般的ではないのでどうやって構築したものか悩みました。
で、結局手に入れたのはコレ。
[:image2:]
電子機器のメーカーなどの開発部門や研究部門が実験室で使う電源機器ですが、KENWOOD PW18-2。かなり古いものですが、最大電圧±18V、最大電流±2Aで今回の目的にはぴったり。
長くなりましたのでこれにしたいきさつやそのあとの改造については次回に続きます。
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