The lost technology – アナログへの最後のテコ入れ Part2

日記・雑記
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QL-Y55Fの電源トランスを使用しないようにするため外部に電源を設けてそこからDCを供給する計画ですが、あまり簡単ではありません。

±18V、電流1.5Aというのはあまり一般的ではないからです。
±18VはOPAMPを使ったプリアンプなどではありそうですが、その用途では電流1.5Aは不要です。
パワーアンプ用の電源としては±18Vではちょっと低すぎる。
従って回路キットにも見当たりません。
自分で設計して組めばいいのでしょうけれど、要求にあった電源トランスがあるかどうかも疑問だし、基板の組み立ては何とかなったとしてもケースの加工などのことを考えると十分な工具を持っていない私にはかなり荷が重い。
手間と時間のことを考えると頭を抱えてしまいます。

そこでメーカーが実験室などでよく使う実験用電源を調べてみたのです。
でも新品のブランド品だと要求を満たすものは10万円前後するので購入はとても無理。
日本製でないスイッチング・レギュレータ使用のものは安いけれど信頼性やノイズのことを考えると二の足を踏みます。

仕方なく中古情報を探ったのですが、昔会社で使っていたKENWOODの電源のシリーズが目に留まりました。
懐かしい。
そして、目的によく合うものを見つけたのです。それがPW18-2。最大電圧±18V、最大電流±2A。
KENWOODブランドの電源製品は今はなく、KENWOODは業務用の電源部門を売り払って今は違うブランド名になっているようです。
PW18-2は相当古い製品のようですが、好ましいのはスイッチングレギュレータではなくシリーズ電源であること。
電圧設定や電流制限の設定はmpuによってデジタル的に設定することが可能でメモリー機能もあるんですが、電圧の作り方は、スイッチングレギュレータではない。
それとファンを使用した空冷ではなく背部に大きなヒートシンクを持った自然空冷なのです。
現在販売されている電源はファン冷却が一般的なので、これは貴重です。

ヤフオクで探すと数千円から入手できる可能性がありそうですが、古いものなので動作に問題があると嫌なのでネットで販売している中古ショップで購入することにしました。

[:image6:]

ちょっと高かったのですが、現行品の約五分の一の値段でしかもファンレスで使用目的にはより適しているのでOKとします。

QL-Y55Fの電源回路をサービスマニュアルで確認して接続方法を決めます。

[:image7:]

上の回路図は電源部を抜粋したものです。
トランスの2次側の線が基板に接続されているところを外して①に+、②に-、③にGNDを繋ぐようにして、水色の矢印で示す整流用ダイオードをショートします。
こうすることで保護用のフューズをそのまま使って安全に配慮することができます。
単にこれだけのことなので作業は簡単に済むはずだったのですが…(涙)

いよいよ開腹作業にかかります。

ここで重要なのはプレーヤーを決して逆さまにしないこと。
作業用の台座の上に置いて下にもぐって裏蓋を外します。

[:image4:]

ネット上でプレーヤーを逆さまにしてモーターや回路を確認している写真を見ることがありますが、これは危険です。
なぜかというと逆さまにするとスピンドルの軸受けオイルが流失してしまう可能性があるからです。
ビクターの後期のDDモーターでは真鍮の一体型軸受けが使われるようになっtています。
軸受けと軸の隙間は小さいのでオイルの流出には時間はかかるかもしれませんが、時間が経てばオイルが失われる可能性が高いと思います。
ビクターの初期のDDモーターTT-81などやDENONのACモーターでは軸受けにオイルレスメタルが使われていたと思います。
オイルレスメタルは銅系の多孔質の合金でできていて通常上下二つの軸受けで構成されています。
回転停止時にはオイルが多孔質のオイルレスメタル内に保持されるので逆さまにしてもすぐにオイルが失われることはありません。
でも一体型真鍮軸受けではそうはいかないのです。
ビクターが軸受を変更した理由はオイルレスメタルに比べて真鍮一体型の軸受けの方がはるかに精度を出しやすかったのと摺動音が小さくできたからだと考えられます。
オイルレスベアリングではスリーブへの圧入が必要ですが、圧入によってベアリングの内径が微妙に変化するため、径の精度、真円度、2個のベアリングの同軸度などをコントロールすることが難しいのです。
ベアリングがちょっとでも傾くと軸と片当たりすることになるので摺動抵抗が大きくなったりノイズが生じる場合があります。
これに対し真鍮一体型では1回のチャックですべての切削工程を終えることができるので精度が出しやすい。
真鍮の方が摺動音が小さかったのは表面がより滑らかだったからということもあったと思います。

というわけで少なくともビクターの場合、たぶんTT-81などよりも後の世代のスピンドルモーターでは特に逆さまは禁物です。
ビクターがOEMしていたYAMAHAのGT-2000などのスピンドルモーターも同様です。
話がそれますが、この前GT-2000用のスペア部品として未使用スピンドルモーターがオークションに出品されているのを見ました。そこにひっくり返した状態で底面を撮った写真が載ってました。
せっかくの未使用品なのにアレアレという感じ…。

クルマの下回りの点検みたいなこの下から見上げる作業は結構厄介です。
裏から見た写真は撮り忘れたので (^^;) 下の写真はネットから拝借したものですが、内部はこんな感じ。

[:image1:]

この写真は海外向けのもののようなので電源トランス周りなど自分のものと多少異なります。
写真で見える基板の右上に電源トランスからの線が接続された端子が見えます。
やっとの思いで整流用ダイオード2か所をショートし、トランス線の代わりにDC電源線を端子にハンダ付けして電気系作業完了。

その他の作業としてはターンテーブルを外した時に現れるパネルに鉛板を貼って制振。
モーターが取り付けられるこのパネルはプラスチック。泣けてきます。
この辺も上位機種のQL-Y77Fとの違いになっているようです。
QL-Y77Fとの違いはモーターとターンテーブルだけかと思っていたのですが…。(涙)

キャビネット内のモーターヨークとそのヨークとトーンアームのベースを連結する鉄板のパネルも鉛板貼付で制振。

[:image3:]

上の写真は作業の途中で撮ったもので、このあともう少し鉛板を追加しました。
裏板は割に厚めのMDF材で構造上はあまりプレーヤーの振動には影響なさそうに見えましたが、念のためこれにも鉛板。

電源線と信号線の出口の鉄製のL型パネルは銅箔でくるんでGNDに接続します。

[:image5:]

4枚目の写真のように海外向けの製品はパネルにGND線が接続されていますがウチのにはそれがありませんでした。
この写真はドイツ向けのもののようでそうだとすると電源電圧は230V。
安全上のためかもしれません。
でも、ノイズ対策の基本は信号線のそばの金属は電気的に浮かないようにする、つまり実質的にはGNDに接続しておくことなのでどのくらい効果があるかはわかりませんが、順当な処置だと思っています。

作業台の上に乗せた状態でいよいよKENWOOD PW18-2を接続。
電源電圧±17Vで正常に動作することを確認。
ターンテーブルが正常にフェーズロックすることをインジケータで確認、OK。
トーンアームの針圧がちょっとずれていましたが、これはプレーヤーを動かしたときにアームのカウンターウェイトがずれたことによるものだと思われます。
ということで裏蓋を閉めてプレーヤーを所定の場所に設置して試聴を始めました。

最初にかけたLPはコレ。

[:image8:]

B面を再生。
1曲目の出だしは”おっ”という感じでライブ録音特有の雰囲気感が気持ちよく聴けたのですが…
2曲目になって何か変。
急に音がふらついてきた。異常なワウ・フラッター…
プレーヤーの再生終了時のターンテーブルの止まり方も異常。ターンテーブルが止まるとき一旦停止した後大きく反対方向に戻ってから完全に停止する。
コギングのあるモーターみたい。そしてそのコギングが半端じゃない感じ。
このモーターは4相駆動で4ペアのパワートランジスタでコイルを駆動する方式なんですがどうもひとつの駆動回路に異常が起きた可能性がある。
そして停止した状態でもコイルに電流が流れ続けているのかも…

もう、目の前真っ暗。
今回の作業でそんなところにダメージを与えることなんかしていないはずなのに…

ということで思いがけずここからはプレーヤーの故障解析作業、修復作業を開始するハメになりました。(涙)

また、長くなってしまったので続きは次回に…

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