3年半の進化は目覚ましかったです。初訪問時には、部屋に入るとリスニングスペースの大きさに驚いたのですが、音が鳴り出すと意外にも普通で肩透かし感がありました。それでも、この空間を生かした低域のスケール感は並外れたものを感じたことを今でも覚えています。
今回の訪問では、その時と比較して機器群は全て入れ替わったのではないかと思えるほど更新されています。そして、日ごろの日記で拝見している追い込みの様子も記憶に新しいです。恵まれた環境と糸目を付けない機器への投資、更に音への取組の本気さを感じたのは、背の低い椅子に代わっていたことでした。
以前は、ゆったりとした座り心地の大型リクライニングチェアだったのですが、今回の椅子は音重視です。部屋や機器群の豪華さと比べると貧弱な印象が否めない選択に、音にかける本気さを感じました。
今回、この空間を鳴らす第1システムのスピーカーはウィルソンオーディオのALEXXです。前回は同じメーカーのX1グランドスラムでしたが、後継モデルのALEXXに入れ替えられていました。もう一つはB&W800D3のシステムです。2つのスピーカーを駆使して、ALEXXはクラシック用、800D3はジャズやポップス用として鳴らし分けをされています。
前回はまだ800D3が導入されたばかりのタイミングでしたので、鳴らし分けの本位を感じるには至りませんでしたが、今回は第1システムと第2システムのサウンドの違いを存分に堪能させてもらいました。
2つシステムがあっても同じ音にしてしまいがちなオーディオマニアですが、はっきりと性格の違うサウンドを鳴らし込んでいたことから、意志の明快さと調整技量の高さを感じたものです。
さて、試聴は800D3のジャズやポップス用のシステムから始まります。玄関を入るとオーディオルームからは美空ひばりの歌が聞こえてきます。生々しくも厚みのある、どっしりと落ち着いた歌声で、部屋の外に聞こえる音だけで3年半の進化がうかがえるようでした。第2システムのリスニングポイントは、背の低い椅子の後方に設けられた横長のソファーです。部屋中央の左手に設置された機器群で駆動されていました。
耳馴らしをするかのように、数曲演歌が流れた後でジャズがかかりました。鮮度が高く反応の速い音が部屋中に溢れます。やはり音が、音楽が大きいですね。音量もかなり大きく、楽器の音が身体に響きます。やや腰高で高域がキツい面も感じますが、このスケールで迫るビッグバンドジャズは圧巻でした。
数曲聴かせてもらった後に、持ち込みDiscの再生を促されました。熟練のマニア宅では、持ち込み音源をかけることを嫌厭されることも多いのですが、この辺りは自信度の表れでしょうか。
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MFPCとP1Xの比較をすることもお願いしていたので、FILEをインストールしてあるものと同じDiscを持ち込みました。試聴結果は後ほどALEXXの第1システムとの対比で記載しますが、鮮度が高くスケールの大きなサウンドを奏でていました。
800D3のシステムを一通り聴かせてもらったところで昼食タイムです。ガレージの扉を開放して、新鮮な空気を吸いながらお手製のカレーをご馳走になりました。よもやま話をしながらの美味しくも楽しくもある休憩タイムでした。
その後は、リスニングポイントをソファーの前にある背の低い椅子に移してのALEXX第1システムでの試聴です。駆動する機器群も右手のラックに設置されたものに替わります。
大編成のクラシック曲が数曲鳴らされました。こちらのシステムでは、聴感上の帯域バランスが大きく変わりました。耳障りな音は一切出さない、大地に根付いたピラミッドバランスのサウンドです。もっと言えば床鳴りも使った、漂うような低音やステージから迫るような低音を再現するサウンドでした。
この感覚は、ウィーン楽友協会にある黄金のホールを彷彿させる音です。黄金のホールでは、ホール全体を鳴らして音楽を奏でているのです。オーナーはALEXX第1システムでは低音が一歩遅れて鳴っていると言われていましたが、クラシック音楽を聴くのに適したサウンドに仕上げてあると思いました。
800D3の下には砂箱が設置されていますが、ALEXXの下に砂箱はありません。一つ成功すると、すべての機器に同じことを実施したくなるのがマニア心ですが、こんな様子も凄腕マニアの片鱗を示していました。
以上が3年半ぶりのX1おやじ邸の最新サウンドの印象です。大きなサウンド進化も感じましたし、言われていることと、出している音が一致している点に「腕を上げた」ことを実感しました。
後半では第1システムと第2システムの音の比較や、CDPとMFPCの比較など、比較三昧の結果を記していこうと思います。
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