真空管の入手と取扱いについて

日記・雑記
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絶滅危惧機だった真空管アンプが最近見直されて、所有者が増加しているようで
嬉しく思っています。

私は、長年真空管アンプを自作しているので、初心者の方のために真空管の購入
や扱いについてノウハウをまとめておきますので参考にしてください。
(ただし、以下の内容を実践されて、システムが壊れたり購入先とトラブルに
なっても、責任は取れませんし保証もできないのでご注意願います。)

1.真空管の名称

 真空管の名称には、ヨーロッパ系(ECC83等)や米国系(12AX7等)があり、
 さらに4桁数字の高信頼管や軍用表記(CV4004等)のものもあるので、対応が
 非常に判りにくくなっています。

 最近の真空管アンプで良く使われている球について、同等管の例を挙げておき
 ます。

 12AX7系: 12AX7、12AX7A、ECC83、E83CC、5751、CV4004
      (WE420Aや5755は、ピン接続が違うのでアダプタ要)
 12AT7系: 12AT7、12AT7A、ECC81、E81CC、6201、CV4024
 12AU7系: 12AU7、12AU7A、ECC82、E82CC、5814、6189、CV4003
  6DJ8系: 6DJ8、ECC88、E88CC、E188CC、CCa、6922、7308
      (E88Cは全く別物、E288CCも特性が大きく異なるので要注意)

 これらは同等といっても、ヒーター電流値や増幅度が多少違っていて、特殊な
 設計のアンプでは正常動作しないものがあるかもしれません。
 
 特に4桁数字の球については、メーカーのサポートに確認してから使用した
 ほうが良いと思います。

2.現行管とビンテージ管の音質

 TelefunkenやMullard等のビンテージ管が、オークションにて高価で取引され
 ています。

 これらの球は、現行管と比べると確かに個性豊かで球転がしをして楽しめる
 ものが多いと思います。

 あまり有名でないメーカーの球で、好みの音質のものが見つかったりしたら、
 それこそ嬉しくなって球転がしが病みつきになってしまいますね。

 現行管のほうは個性的なものが少ないようですが、復刻版と言われるもので
 ビンテージ管の雰囲気があるものも出回っているので、是非試していただき
 たいと思います。

3.真空管のノイズ

 真空管が出すノイズには色々なものがありますが、代表的なものを以下に示し
 ます。

 ・連続雑音
   サーとかザーという連続したノイズで、真空管内の残留ガスが多いとこの
   ノイズも大きくなるようです。
   しばらくエージングしてみて、改善しなければ球を交換するしかありま
   せん。

   レコードのイコライザで問題になることが多いですが、プリのフラット
   アンプでもパワーアンプのゲインが大きいと問題になることがあります。
   
 ・間欠雑音
   ボソボソ、バリバリというノイズですが、真空管のピンの汚れで発生する
   ことがよくあります。

   これは、リレー用の接点洗浄剤や無水アルコールを綿棒に付けて、ピンを
   丁寧に磨くと直ることが多いです。

   汚れがひどい場合には、真鍮ブラシでピンをゴシゴシと磨く方法もありま
   すが、メッキが剥がれてしまう可能性があるので最後の手段と思ってやっ
   てください。

   なお、間違っても接点「復活」剤は使用しないようにしてください。音の
   抜けが悪くなって、ボーカルが鼻をつまんだような声になるのを体験して
   います。

   新品の球でも、錆止オイル等を塗っていることがあるので、接点洗浄剤で
   ピンを磨いてから使用することをお勧めします。

   また、ヒーターとカソード間の絶縁不良で同様のノイズが発生することが
   あります。
   上記のピン磨きをしてもノイズが改善しなければ、市販のアンプでは球の
   不良として交換するしかないですね。

 ・マイクロフォニックノイズ
   真空管の電極が振動することで発生するノイズで、真空管を指の爪で軽く
   弾くとゴンとかビーンと音が出るものです。

   これがひどくなると、回りの音をマイクのように拾うことからマイクロ
   フォニックと命名されたそうです。

   マイクロフォニックノイズが発生して気になるようなら、球の外側から
   制振してもあまり効果が望めないので、球を交換するしかないと思います。

 ・ハム
   ブーンというノイズで、真空管のヒーターを交流点火しているときに発生
   することがあります。

   このノイズの大小はヒーターの構造によるところが大きいですが、絶縁
   不良による個体差もあるので、MT管等の傍熱管で発生した場合は球を交換
   するか直流点火に改造するしかないです。

4.ペアチューブ

  出力管を交換する場合には、ペアやクワッドの球を買うことが多いと思い
  ます。

  ところが、真空管の特性にはバラつきがあり、全ての動作範囲で特性が完全
  に一致するものは無いので、ペアやクワッドは不要というのをどこかで見た
  ことがあります。

  しかしペアやクワッドの球は、少なくとも動作点の特性が合っているので、
  その付近の特性も合っている可能性は高いはずです。

  シングルアンプではあまり神経質になる必要はありませんが、プッシュプル
  アンプでは素直にペアチューブ(しっかりエージングしたもの)を買って
  おくほうが良いと思います。

5.偽物の見分け方

   TelefunkenやMullard等の人気の高いビンテージ管には、偽物が多数出回
   っています。

   これを見分けるのは簡単ではありませんが、本物の真空管や写真を入手
   して外観や内部構造を比較すると良いです。

   本物の真空管や写真を持っていない場合には「Telefunken 12AX7 fake」
   等でググって情報を入手してください。

   比較するポイントは、以下の通りです。

   ・真空管が入っている箱は、当てにならない。
   ・ビンテージ管の管壁の印刷は消えやすいものが多いので、文字の欠けや
    擦れが全く無くて鮮明なものは避けたほうが良い。
   ・内部構造では、プレートやマイカの形状(特に穴の位置や形)を細かく
    比較する。
   ・ゲッターの形状は、同じメーカーでも製造時期や工場によって異なる
    ので、素人が真贋を判定するのは難しいことが多いです。
   ・TelefunkenのMT管は、管底にダイヤマーク「◇」があるものが本物と
    されています。
    しかし、ECC83系ではダイヤマークがある偽物が出回っているので、
    マークが管底の中央からズレているものや、◇内に数字や文字がない
    ものは避けたほうが良い。

6.不良真空管の見分け方

  不良真空管を見分けるのは、偽物を見分ける以上に難しいですが、ポイント
  を幾つか紹介しておきます。

   ・MT管の管底が黒ずんでいるものは、中古品の可能性が高い。これだけで
    不良かどうかは判別できないが、新品として購入するのは避けたほうが
    良い。
   ・ゲッターの境目が波打っている球は、長時間使用している可能性が高い
    ので避けたほうが良い。
   ・双三極管(1項で掲載したような球)は、2ユニットのバランスが崩れて
    いるものがあるので、可能な限り測定値(gm)が付いるものを選定する。
    測定値が付いていないものは、左右chで音圧のアンバランスがないか
    テスト音源を使って注意深く耳で確認する。
   ・出力管の中古は、余命が不明なので極力避けた方が良い。
    出力管の寿命は3000時間程度と言われているので、1日平均3時間使うと
    すると新品でも3年程度しか持ちません。
    (WE300Bのように、寿命1万時間以上の例外もあり。)
   
以上、長々と失礼しました。

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