7回目のウィーンで得たことは何か?、得たことをどのように自宅のオーディオ・サウンドに反映したのか?
この内容を整理しておこうとしていましたが、くさくさする飛び込み案件があったので手つかずになっていました。ですが記録は残しておかないと、その時の思いと実施したことは忘れてしまうので、思い出しながら整理しておくことにしました。
<7thウィーンで得たこと>
1、認識は常に新鮮な状態にしておく必要がある
一番大きかったのは、以前の体験からの感覚と今の感覚で感じたことには乖離があると認識したことです。
・ムージークフェラインは「どこで聴いても同じ音」と思っていましたが、座る場所で聴こえ方は大きく異なること
・ムージークフェラインは「怒涛の低音」と思っていましたが、それほどでもなく、むしろ低音の被りは明瞭さをスポイルすること
◇思い込みや固定観念は怖いです。認識は常に新鮮な状態にしておく必要があると思いました。
2、目標とすべきサウンドはムジークフェラインの1階バルコニー中央通路付近の音
今回のムジークフェラインではいろいろなポジションで聴いてみました。その中で、琴線に触れるサウンドは1階バルコニー中央通路付近の音でした。明瞭で、会場の響きをたっぷりと感じ、ダイレクト感のある音でした。計測上の音圧レベルはそれほど高くなくても、音圧はとても高く感じます。新たな指標としたダイレクト感は、誤解を招きやすい言葉と思いますので補足しておくと、演奏する音が自分に向かって色濃く直接的に伝わるか否かの感覚と定義しました。例えば、ムターのヴァイオリンは遠く離れていても近くで聴くように芯のしっかりとした音に感じること、シフのピアノは遠く離れていても近くで聴くように芯のしっかりとした音に感じること、このような感覚です。ムジークフェラインで聴いたゲヴァントハウス公演では、100人近いオーケストラの音が、芯のしっかりとした音で迫ってきて圧倒されました。
3、目標の音は、直接音と初期反射音と響きのバランスから得られる音である
このサウンドはどのようにして得られるのかを文章にすることは出来ません。体感するしかないと思います。そのために現地まで聴きに行って身体で覚えて来ることが必要だと感じています。身体が覚えたからと言って、オーディオサウンドでそれを再現するには課題が付きまといますが、山が高いほど挑戦のし甲斐はありますね。しかしながら、この音は「直接音と初期反射音と響きのバランスから得られる音」であることは体得しました。生演奏とオーディオ再生には、「オーディオでは、ソフト内にあらかじめ響きの情報が入っている」という面が異なります。それでも、この違いは置き換えを行っていけばよいと想定していますが、大きな課題であることは間違えありません。
<7thウィーンサウンドに向けた取り組み>
4、認識違いは正すこと
今まで「怒涛の低音」と感じていましたが、それほどでもなくてむしろ平土間前方では低音の被りから中域高域が不明瞭となる弊害を感じました。この点は調整のし直しが必要です。そのために実施したことが下記となります。
5、これまでの認識はより磨きをかけること
響きが芳醇なのに音が混濁しない・・・これは簡単そうで難しいことです。自分のリスニングルームで最初に音響の取り組みを実施したときは、音場感は満載となったのですが混濁して不明瞭な音となってしまいました。「音場と音像の両立」この課題が難しいことは、取り組んだことがある人なら感じることだと思います。
そのために、下に低域、真ん中に中域、降り注ぐ高域で層別させることで「響きが強いのに音が混濁しない」と感じるのはムジークフェラインの特徴のひとつと感じています。定在波による低域のあばれを抑えることは、音を混濁させないことの一助となります。
6、スピーカーから出る音の純度を高めること
スピーカーから出る音の純度が高ければ高いほど明瞭で澄んだ音が聴けるのは間違えないです。だからノイズを減らし、スピーカーから出る音をクリアにすることはどんな音を求めるにも共通したことかと思います。
電源ブレーカー工事 – ①
7、鑑賞向きの音への調整
音の純度を高めていくと、徐々にモニターライクな音となって来ます。それはいい音とは感じるのですが、鑑賞向きの音かと言えばちょっと違うような気がします。音をほぐして、柔らかく広がりのある音。狙って得られたものではありませんが、CDの静電気対策は鑑賞向きの音質に寄せるために有効な手段となりました。
8、気になる部分の微調整
ステップを踏みながら音を追い込んできたつもりでも、気になる部分はいろいろと出て来るものです。ただ、この気になる対策はある程度まとめて実施するのが効率的ですね。例えば、機器を代替えした時、スピーカー位置を動かしたとき、大きく音を変えたときなどです。今回は、大きく音を変えた時のケースとなります。そして、この気になる部分のつぶし込みはその後もずっと続きます。気になる点が出たら潰し込む。これを繰り返していくことで、完成度が高まっていくと感じています。
実際の話、上記の仕上げの後も諸々のつぶし込みや、小ネタのお試しは実施しています。まだ目標の音には遥か及びませんが、これまでよりは自分が求める音に近づいている実感はあります。この充実感が原動力となって、いつまでも終わらない長い旅は続いてゆきます。
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ヒジヤンさん
一連の旅行記、興味深く拝読させていただきました。私が訪問したことがないホールの音響の音の感想が何より非常に貴重な情報で、毎回楽しみにしていました。
ホールの初期反射音、残響音と音を再生する部屋のそれらは、当然異なりますし、さらにソースにはホールの初期反射音や残響が音源によって含まれる程度が変わってきます。これをどう考えるのか、奥深く、またとても面白い部分と思います。唯一の回はないと思いますし、最近はヘッドホンでうまく再生することも試行錯誤してみています。
またいろいろな記事を楽しみにしております。
sonnenblueさん、コメントありがとうございます。
生演奏を聴く場合の直接音と初期反射音と残響音に注目されるとは、かなりの手練れとお見受けしました。
当たり前のことですが、演奏の真近くで聴けば直接音が主体的となり、遠く離れて聴けば残響音が主体的になりますね。自分は音量が大きく、明瞭で、身体に感じ、響きが心地よい音が好みです。その前提で、下記と感じました。
・音量が大きく感じること・・・近くで聴けば大きく聞こえるということでもない
・明瞭に聞こえること・・・混濁しないことが大事と感じた
・身体に感じ・・・ダイレクト感としていますが、これは初期反射音が大事と感じた
・響きが心地よい・・・自分の好みは実音(直接音と初期反射音の複合音)と残響音が分離して聴こえることが大事と感じた
座る座席の位置で、これらのバランスが変化してきます。このバランスのどのあたりが自分のジャストポイントかを知る旅だったような気がします。
オーディオ再生においては、演奏の真近くで録る直接音主体の音と、残響音をミックスして入れてあるのが普通ですね。初期反射音とは直接音に対して、少し遅れて届くのがミソですので、この調整が部屋とスピーカー位置の調整であり、ルームチューニングだと捉えています。
また、音を部屋中に回すような立体音響とすると、ソフト内の残響音を過剰に感じるようになるので、残響音は吸音で処理することを考えていますが、直接音も初期反射音も同時に吸音しますので、上手い吸音は難しいです。カット&トライしかないように感じています。
>最近はヘッドホンでうまく再生することも試行錯誤してみています。
これはいい方法かと思います。直接音と残響音のバランスは、エンジニアが一番いいと思ったバランスで聴けるので、これを指標にオーディオの音を調整するのは指標が明確となりますし、その場で確認が出来ますのでGood!だと。実際にその方法で調整されている方もいますし、よい音で聴かせてもらいました。
だた、初期反射音を感じることは出来ないので、その点をどうするかが課題のような気がしています。