部屋とスピーカーとリスニングポイントの融合 – いなかのクラング邸(後編)

日記・雑記
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アナログ録音時代のクラシック音楽を、まるでホールで聴いているように響き豊かに心地よく味わいたいと言われるクラング邸です。2000枚はあると言われるレコードの中から次々に聴かせてもらいました。

「気になることがあったら言ってくださいね」と、オーディオでの音磨きにも熱心なご様子です。アンクをセンターに3セットに増やしたことでフロントのサウンドステージが整い、オイロダインが奏でる、当時の音楽を楽しんでいました。

ですが、気になる点がなくもなかったです。部屋に入ったときに響きが少ないと感じたことが、音楽を聴いているとあらためて思い起こされます。フロント側は響きを感じるのですが、リスナーより後方では響きが聞えなくなることです。ホールでの響きは全方向に感じます。前側だけに響きを感じるのは違和感がありました。

(写真はクラングさんのマイルームからお借りしたものです)

そんな感想を告げると、クラングさんから「後ろに置いてある古くからのアンクが吸音しているかもしれないです」とのことでした。「気になる点があるなら、皆がいるときにやってみますか?」とお話したところ、少し躊躇された後で、「やってみましょう!」との快諾です。ここから3人で、一旦後方にあるアンクを全て部屋の外に出してみました。

その後に聴きなおしてみると、響きが全身を包みます。Mさんもこの変化に感激しています。「気持ちよく聴けるようになりました」「加えて、空調が部屋全体に回るようになりました」「来たときから冷気が回らないことが気になっていました」とのことです。

少し浮かない顔をされていたのはクラングさんでした。「せっかく作ったのに全部外してしまうのは・・・」「少し入れてみましょう」と。

この話には皆で賛成し、先ずは背の低いものをひとつリスナーの後方に入れてみました。「これはいいですね」入り口の所にいた自分もよい変化を感じます。Mさんもこちらの方がいいと。クラングさんにも笑顔が戻ります。そして、「もうひとつ入れてみますか」と・・・
何パターンか試して、皆でああでもないこうでもないと論議は続きます。

そんな実験の末に、当日の結論として決めた仕様がリスナーの後方に背の低いアンクを2セット置く仕様です。同じ高さのアンクを3つ入れると、音が膨らみぼやけてきます。明瞭さと芳醇さのバランスが取れているのが後方2セット仕様だったと思います。

この状態では、部屋のどこで聴いても音がそれほど変わりません。オイロダインが苦手とすると言われていたヴァイオリンも気持ちよく鳴っています。Mさんもこんな棒のセットでこんなに音が変わるのかと驚いていました。

たったこれだけでこれほどに音が変わるのは、「部屋とスピーカーが調和しているからなんです」と音響マニアの二人で熱く語ってしまいました。

その後に、持込のCDをリッピングした音源を聴かせてもらいました。自作で部屋の音響を整えておられるとのことで、音響的なチェックCDばかりの持ち込みでした。

1)パッヘルベルのカノン

冒頭の通奏低音の沈み込み、続く第1から第3ヴァイオリンの輪唱の定位と分離に文句がありません。これが、1950年代のホーンスピーカーの音かと耳を疑うほどでした。

2)カフェ・パラディソ/スティーブ・アーキアーガ

この音源は、自分が左右のスピーカーの焦点合わせに使っているものです。音を聴きながらmm単位でスピーカーの位置を調整したときと同様に、音の焦点がピタリと合っています。これには思わず唸ってしまいました。

3)カリヨン/幸田浩子

お馴染みのチェック用の音源です。ソプラノと弦楽のソロと合奏も聞けて、チェックにはもってこいです。1曲目のアヴェ・マリアは再生装置での音の変化が大きく、定位がぶれやすいのですが、定位はピタリと決まっていてぶれません。特筆すべきは、コントラバスです。ピッツカートの定位、音量、音質など、拙宅ではこの音源で追い込んでいるのですが、どうしても一打ごとのブレが出てしまうのですが、クラング邸ではブレません。定在波対策の追い込みと、後面開放のよさの賜物だと思いました。素晴らしいです。

4)Timeless/FAKiE

この音源では、7曲目のFantasyのラストの響きの消え方を確認しています。響きが前から後ろに流れるように消えていくように聞えれば、響きの前後、左右のバランス調整が出来ているとしています。響きのバランスもまったく問題ありませんでした。

アナログ録音時代のクラシック音楽を、まるでホールで聴いているように響き豊かに心地よく味わいたいと言われるクラングさんのオーディオについて、納得の機器選びと地道に仕上げてこられた部屋とスピーカーの調整には唸らせるものがあります。実験を交えながらのクラング邸のサウンドと音響体験でしたが、部屋とスピーカーとリスニングポイントの融合について、あらためて学ばせていただいたオフ会でした。

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