思いがけなく、と言いますか思った以上に音がよくてオーディオ魂を揺さぶられたコンサートでした。
洗足学園音楽大学出身の若い二人のコンサートです。ヴァイオリンが松本シオンさん、ピアノが松本せいらさん、主催はサルビアホールで協力が洗足学園音楽大学でしたので、若いアーティストの支援・育成狙いなのだと思います。演奏曲がなじみ深い曲でしたので、「聴きに行ってみるか・・・」程度に思い向かった公演でしたが、音の良さに、中々の演奏に、そしてたどたどしいステージさばきに初々しさも感じて楽しめました。
座ったのは、最前列の中央です。このところは、最前列で失敗続きでしたが、この公演はジャストミートです。
サルビア音楽ホールは、ステージが40cmほどしか上がっていませんし、最前列からステージまでの距離もそれなりにあります。真近くから聴く直接音と、左右や天井から来る反射音がとても心地よくて、「これはたまらん」という感触でした。特にこの位置で聴くヴァイオリンの音は絶品でした。生演奏は本当に水物で難しいです。以前にキレキレの弦楽四重奏を、同じホールの最前列で聴いた時はキレが良すぎて心地よくなかったのですが、今回は満足しました。ホールの音響と聴く位置と演奏内容と楽曲が絡み合っているので複雑です。その観点からは、一つの部屋とシステムで、様々な音源と様々なジャンルの一般解を導き出そうとするオーディオの難しさを感じます。
話が脱線しましたのでコンサートの話に戻しますと、副題は「風と若葉のリズム」とされており、演奏曲は下記でした。
第1部
・ベートーヴェン/スプリングソナタ第1楽章
・モリコーネ/ニュースネマパラダイス
・シェーンベルク/レ・ミゼラブル メドレー
・フォーレ/夢のあとに
・サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
第2部
・クライスラー/ロンドンデリーの歌
・マンシーニ/ムーンリバー
・クライスラー/踊る人形
・クライスラー/タンゴ
・バルトーク/ルーマニア民族舞曲
・マスネ/タイスの瞑想曲
・ヴィエニャフスキ/創作課題による華麗なる変奏曲
すべての曲がヴァイオリンとピアノでの演奏です。ミュージカル曲などは、歌の部分をヴァイオリンが奏でていました。ピアノは伴奏スタイルに適した感じで、前に出ることなく主役のヴァイオリンを引き立てる形で演奏されていて、息があったといいますか、ヴァイオリンのシオンさんがリードしているコンビと感じます。曲ごとに解説を入れていて、長い説明をすることなくテンポよく進めていたのが、聞く立場からみて自分がやる時の参考にもなりました。
演奏の技量も中々のもので、難しい”ツィゴイネルワイゼン”やヴィエニャフスキの曲も難なく弾いていました。この先に台頭を表すかどうかは、本人の積極的な活動と運次第なんだろうと思います。
満足して聴けた・・・はその時間の楽しみですが、問題はこの位置で聴く音の良さです。オーディオ魂をチクチクと刺激されて痛い痛い。帰ったらすぐにでも自宅で聴いてみたくて落ち着きませんでした。そして帰宅後はソフトの物色です。ですが、手持ちのソフトはオーケストラ伴奏のものばかりでしたので、新たなものをポチりました。
ユリア・フィッシャーのプレイズ・サラサーテです。届き次第に比較してみましたが、コンサートで聴いた音にはまだまだ敵いません。演奏レベルは高いものの、視覚でも楽しめる生には敵わないのですね。重い課題をもらった気分となった、娘のように若い二人のコンサートでした。
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