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ファントムセンターの周波数特性と音量

日記・雑記
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マルチチャンネル再生の時にファントムセンターを使う場合があります。最近の日記でもこれがよく議論されています。私の日記で、ファントムセンターの音量を−6dBにすると音響エネルギーの総和が半分になり、−3dBにすると音響エネルギーの和は同じになる代わりに視聴位置での音圧が+3dBになると説明いたしました。これにたくさんのレスを頂きました、ありがとうございます。十分ご理解いただけない部分もあるかと思いますので、実証実験をしてみました(^o^/)。

Dolbyで5.1ch音源を2chにダウンミキシングする時の合成方法は以下のようになっています(英語で分かりにくいですが)。−3dB(0.707倍)が標準です、他の文献を見ても、0.707倍でダウンミキシングすると書いてありましたので、ここでは−3dBでLとRに振り分ける場合を想定して実験しました。

Per Dolby’s spec:

Lo = Lf + C*cmixlev + Ls*surmixlev
Ro = Rf + C*cmixlev + Ls*surmixlev

…where the two variables, cmixlev & surmixlev can be adjusted in the following preset fashion: 0.707 (–3 dB), but can be adjusted to –4.5 dB or –6 dB in all decoders, and in the newest decoders can also be adjusted to off and 0 dB.

(実験方法)
先日の日記で説明しました拙宅のB&W802Matrixを使い、LもしくはRchの周波数特性、また−3dB音量(音圧)を絞った状態で、L+Rで再生した時の周波数特性を測定しました。測定にはフリーソフトのREWとmini-DSPの補正マイクを使用しています。測定ポジションは(1)センターの視聴位置で顔の間でマイクを固定
(2)その後、その視聴位置で、耳の付近でマイクを8の字を描くように移動させながら、両耳付近での平均特性を測りました。
実際の視聴での周波数特性は(2)に近いと考えられます。

(実験結果1)
(1)のセンターでマイクを固定した条件での特性です。分かり易いように1/6octのスムージングをかけています。
[:image1:](Lchの特性(下側)と−3dB音量を絞ってL+R(上側)で再生した時の周波数特性)

[:image2:](Rchの特性(下側)と−3dB音量を絞ってL+R(上側)で再生した時の周波数特性)

上の二つのグラフは、L、Rの特性と−3dB音量を絞ってL+Rで再生し、顔の前でマイクを固定して測定した周波数特性の比較です。どちらも、L+Rの音圧が概ねほぼ全周波数帯域で+3dB増加しています。グラフの縦軸の1区切りが10dBなので、少し見にくいかもしれません(汗)。日記「ファントムセンターの時のエネルギーと音圧合成」で説明したことに一致します。8kHz以上になると、差が小さくなっていますが、これはマイクの位置が完全なセンターではないために左右の音の位相差で音圧低下したと考えられます。

(実験結果2)
(2)の耳の位置で平均特性を測定した結果が以下のグラフです。

[:image3:](Lchの特性(下側)と−3dB音量を絞ってL+R(上側)で再生した時の周波数特性、両耳の付近での平均)

[:image4:]Rchの特性(下側)と−3dB音量を絞ってL+R(上側)で再生した時の周波数特性、両耳の付近での平均)

上の二つのグラフは、L、Rの特性と−3dB音量を絞ってL+Rで再生し、両耳の付近でマイクを動かしながら測定した周波数特性の比較です。どちらも、L+Rの音圧が1kHz以下の周波数帯域で徐々に増加し、低域では+3dB増加に近づきます。

(まとめ)
当然といえば当然ですが、マイクをセンター視聴位置で固定すると、−3dBの音量を絞って再生したL+Rの周波数特性は、ほぼ全域で+3dB上昇します。耳の付近でマイクを動かして平均をとると、センターから30cmくらい離れたところまで移動させているので、両SPからの音に位相差が生じ、波長の短い1kHz以上では音量はほとんど変化しません。しかし、中低音では徐々に音圧が増加し、低音になると+3dB増加となります。ボーカルの帯域は2〜3dB増加と考えてよいのではないでしょうか。

したがって、ファントムセンターは低域を少し持ち上げた特性になっています。センターSPの音量や周波数特性はLとRの特性に合わせるようにセッティングするので(下図参照)、ファントムセンターにするとセンターSPの特性と中低域が2〜3dB異なる状態となります。
(拙宅のシステムはDirac Liveでルーム音響補正されています)

[:image5:](L、C、Rchの周波数特性比較)

以上が今回の実験結果です。センター位置で視聴するなら、−3dBは少し音量増加を招くので、もう少し絞ってもいいかなという印象です。ちなみに、ファントムセンターとする時は−4〜−5dB音量を絞るのが私の好みです(通常はセンターSPで再生します)。

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