仕事帰りに向かったのはJR四谷駅近くにある紀尾井ホール。
今夜はマイミクのベルウッドさんのお誘いで今年28回目のコンサート。
「紀尾井ニューアーティストシリーズ」の第25回公演。
出演は、チェロ独奏がカナダ国籍の山上ジョアン薫さん、ピアノ伴奏が草冬香さんという若手のお二人だ。
紀尾井ホールは前回、ベルウッドさんに小ホールにお誘いいただいており、いずれは大ホールもと思っていたので、「招待券あるのでいかがですか?」というお誘いに、喜んで乗らせていただいたという次第。
このコンサートは、新日鉄文化財団の主催、カナダ大使館の後援で、全席が応募者抽選による招待客となっており、ベルウッドさんが申し込まれていたものだ。
紀尾井ホールの大ホールは、客席数が800席と小型の部類。
シューボックス形式で、1階席は平土間の他、両脇には珍しいバルコニー席があって、ここはステージより僅かに高い位置から観賞できる。
指定されていた席は、20列目と平土間席の中ほどのやや左であったが、ここから見るステージも遠い感じはなく、ベルウッドさんも2階席中央前列からはステージがよく見えるし音響も申し分ないと話されていた。
2階席とバルコニー席から天井までの高さは、3階バルコニー席が十分確保できるほどあり、音響的にも考慮されたシャンデリアが華やかさを演出しており、このホールなら音響的にはどの席からでも不満は出ないだろうと想像できる。
プログラムによると山上ジョアン薫さんは、2歳でカナダに移住し、3歳の時よりチェロを始め6歳で初めてのリサイタルを行ったとあるが、3歳で扱える子供用のチェロがあるのだろうかと、思わずその光景が目に浮かんだ。
その後の経歴は輝かしいもので、13歳の時にカーティス音楽院へ全額給与の奨学生として入学。その後ボストンのニューイングランド音楽院にてポール・カッツのもと2年間研鑚を積んだとある。
現在は、ソリスト、室内楽奏者として北米、ヨーロッパ、アジアの主要なコンサートホールや音楽祭に出演し、最近では2007年にモスクワで行われたチャイコフスキー国際コンクールにおいてディプロマを受賞したほか、08年にはパリで行われたヴィブラルト国際コンクールにて第2位に輝いた。
そんな彼女の才能に惚れ込んだのか、彼女が使っている楽器は、日本人の個人が所有する1682年製のジョヴァンニ・グランチーノだという。
曲目は、シューマン:アダージョとアレグロ変イ長調Op.70、ベートーヴェン:チェロソナタ第4番ハ長調Op.102-1、ドヴォルザーク:ボヘミアの森よりOp.68B133より、バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009、ブロッホ:「バール・シェム」より第2曲ニーグン、ポッパー:ハンガリー狂詩曲Op.68。
開演になり、長身の体躯をモノトーンの軽やかなドレスに身を包み、オールド楽器らしい深い色合いのチェロを抱えた山上さん、同じく長身でスレンダーな草冬香さんが登場した。
美しい・・・・・・ベルウッドさんが、この招待コンサートのチケットに応募した理由の一つが理解できた。
山上さんの演奏スタイルは客席からみると、エンドピンを長めにしグラつかないよう両足でしっかり支え、胸では楽器を支えない3点支持?のポジションでチェロを演奏しているように見える。
弓をやや短めに持ち、長い腕を使い切った華麗なボウイングだ。
音色はやや硬質で明るく男性的でさえある。
弦の響きと楽器の共鳴のバランスの微妙な揺れ加減に感情が込められているように感じる。
1曲目のシューマンから一気にこの若い才能に惹かれてしまった。
元々はホルンとピアノのために作曲され、ドイツロマン派の美しい旋律で人気も高く、今年の日本音楽コンクールのホルン部門の課題曲にもなっている名曲であるが、彼女は過度に叙情に流されることもなく見事な演奏を聴かせてくれた。
伴奏の草冬香さんとの息もぴったり。
圧巻だったのは2部の最初に演奏したバッハ無伴奏のブーレからジーグにかけて。
演奏が進むにつれていつしか心に直接届いているように感じ取れる幸福感。
重音を伴ったメロディや響きの処理も完璧とさえ思える素晴らしいバッハ。
プログラム終了後には鳴り止まぬ拍手にアンコールを2曲のサーヴィス。
ラフマニノフのヴォカリーズを弾いてお開きになった演奏会。
暗い夜道を四谷駅方面に歩いていく人の波のあちらこちらから演奏会の感想が聞こえてくる。
そんな素晴らしいコンサートに招待いただき、ベルウッドさんありがとうございました。
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