オーケストラ・ジャズの今 – ビリー・チャイルズからクリス・ポッターへ

日記・雑記
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この冬最大の冷え込みが予想されるこんな夜に
みなさん、どんな音楽でお楽しみでしょうか?
今晩は、CDレビューです。

今晩とりあげるのは、クリス・ポッターの新作、
アンダーグラウンド・オーケストラ名義での
「イマジナリー・シティーズ(Imaginary Cities)」です。

 

HMVのレビューはこんな感じです。

パット・メセニー・ユニティ・グループでも活躍する人気サックス奏者クリス・ポッターの新しいプロジェクト「Underground Orchestra」の第1作目。

これまで長く活動していた「Underground Quartet」のアダム・ロジャース、 クレイグ・テイボーン、ネイト・スミスを中心に、さらに2人のベーシスト、ストリング・カルテット、そしてポッターがデイブ・ホランドのグループ在籍時の共演者、スティーブ・ネルソン(vib,marimba)を迎えアンサンブルを結成。本作はその記念すべき第1作目。タイトル曲は全体像を見ることのできる一つの組曲「Compassion」、「Dualities」、「Disintegration」、「Rebuilding」と副題のついた楽章から成る。様々なムードやテーマから広がる展開にポッターの自由な創造性が窺える。才能あふれるメンバーとの対話、及びインプロヴィゼーションが組曲の流れの中で十分に生かされています。さらにほかの4曲、「Lament」、「Firefly」、「Sky」、「Shadow Self」は組曲での表現を広げたもの。キッチリ書かれた部分とオープンで自由な部分をうまい具合にオーケストラ全員の演奏でつなげている。バップ期のストリングス作品として自身も心酔する「Charlie Parker with Strings」からのインスピレーションを受け、ArabicとIndianストリングスを現代的に施したコンテンポラリーなコンポジションとして、作曲のユニーク性と演奏の確かな手腕を見せてくれます。

Chris Potter (ts,ss,b-cl)
Adam Rogers (g)
Craig Taborn (p)
Steve Nelson (vib,marimba)
Fima Ephron (b)
Scott Colley (double bass)
Nate Smith (ds)
Mark Feldman (violin)
Joyce Hammann (violin)
Lois Martin (viola)
Dave Eggar (cello)
Recorded in December 2013 at Avatar Studio, New York. produced by Manfred Eicher.

曲目

01.Lament
02.Imaginary Cities – Pt. 1, Compassion
03.Imaginary Cities – Pt. 2, Dualties
04.Imaginary Cities – Pt. 3, Disintegration
05.Imaginary Cities – Pt. 4, Rebuilding
06.Firefly
07.Shadow Self
08.Sky

一聴して感じたのは、以前こちらでレビューした
ビリー・チャイルズのローラ・ニーロのトリビュートアルバムと
肌さわりが似ているということです。

まず楽器の編成です。
上記レビューにもあるようにベース、ドラムスといったリズム隊に
ストリングス・カルテットとピアノやギターに管のリード楽器がからむという
編成のフォーマットは、ほぼ同じです。

オーケストレーションの手法も
いわゆるビッグバンド的なものではなく
たとえばA・C・ジョビンのアルバムでアレンジを担当した
クラウス・オガーマンなんか以降の
クラシックの現代音楽の影響を感じさせるオーケストレーションであり
親しみやすいメロディーラインを弦が奏でて。。。という趣のものでは
ないということです。
あまり詳しくはないですが、複雑な和声・コード進行を
丹念に各楽器が追いかけている感じがわかります。
複雑な柄の織り目を楽しむ織物を鑑賞するのに似た感覚
といったらよいでしょうか。
その程度からいえば、クリス・ポッターのこの新作のほうが
よりポップな色調が後退している印象を受けます。

と、ここまで書くととっつきにくい印象を与えてしまいます。
たしかに、たとえばマルサリス兄弟なんかだと
もうすこしわかりやすいメロディーラインを配して
サービスしてくれたりするような気がしないでもないです。
そのへんクリス・ポッターはまじめで学究肌なところは感じられます。

でも今作はいいんじゃないでしょうか。
私はけっこう聞けてしまいます。
まじめにジャズに取り組む彼の姿勢に
好感がもてるぐらいの余裕もでてきた気もしますし
音選びのセンスにも磨きがかかってきて
ただうまいだけじゃないサックスプレイの成熟を感じます。

マイケル・ブレッカーなきあと、
ジャズサックスプレイヤーのけん引役みたいな言われ方をよくする
クリス・ポッターですが、
この人はソングライター+アレンジャーとしての才能にも
もっと脚光があたってしかるべきだと思います。
古典的なジャズサックスプレイヤーとはちがって
あくまでアンサンブル重視のソロプレイが、
特にCD作品での彼のプレイスタイルです。
これを評して「うたごころ」に欠けるなどというのはたやすいことですが
このアルバム全体を通して聞いてもらえば
それは作品全体のなかにあるということがわかるはずです。
そしてこういう感覚を共有するビリー・チャイルズも
オーケストレーションを盛り込んだ新作を作っていたことに
ジャズの現在を感じた私でした。

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