このところの天候不順は、なんとなく気がかりで、
菜種梅雨などといっても、こんなに春らしい日が少ないと、
作物に影響がでてきやしまいかとか、
体調の悪い方にはこたえるのではないかとか、
いろいろな心配もしてしまいます。
宮沢賢治の有名な詩ではありませんが、
人間はそんな心配ばかり繰り返しているのだな~と、
ちょっと思った日曜の午後です。
雨にも負けず行きたいのですが、結局負けることも多く、
でもまあ気を取り直して、明日もがんばっぺ~てな心持ちになるのは、
音楽がきっかけということはよくあることです。
それは別にオーディオファイルにとってということに限らず、
古今東西ありふれていながらも、やはりなかなかに捨てがたい
音楽のもつ力のひとつです。
若いときには、ドビュッシーだ、ラヴェルだ、サティだ、
ストラヴィンスキーだなどと言っていたが、
やはりベートーヴェンは侮れない
という主旨のことを、ベートーヴェンを語るある番組で
浅田彰氏が言っていて、
私もそのとき、そうなんだよな~と妙に感心したことを覚えています。
ベートーヴェンは、オヤジに似合いの音楽家だと思います。
日々の労働は、一朝一夕に成果が出るものではないと、
もう体にしみついているので、
こつこつやることにも慣れっこで、要領もよくわかっているので、
ついつい長大な「レンガ積み」になってしまいます。
またそんなに好んでしているわけではないのですが、
お役に立てば、などという老婆心から、
ちょっと説明を加えたぐらいのことばが、
若い者からは「くどい」とか「説教くさい」と思われます。
また(まあそれを信じるぐらいしかすべもないので)
随所でまきおこった対立は、腹を割って話した後に
落としどころを探そうと腐心します。
そんなたとえが成り立つくらい、ベートーヴェンの音楽は、
オヤジまるだしなのであります。
どちらかといえば武骨なフレーズ(主題)のパーツを
こつこつくどいぐらいに積み上げ(『運命』の冒頭が好例)、
弁証法的な正・反・合のプロセスを音楽にも盛り込み(『第九』が好例)
というようなことで、
件の番組では、私なりにまとめると、
そんな感じのトークがあったように記憶しています。
そんなことを思い起こしながら、たま~に聞いていた
「ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集(弦楽合奏版)」
(テリエ・トンネセン指揮/カメラータ・ノルディカ)(3枚組) を
ハーベスで聞き始めました。
(allmusic.comで試聴可能です)。
ttp://www.allmusic.com/album/beethoven-the-late-string-quartets-mw0001402455
耳が聞こえなくなっていたベートーヴェンが内なる音楽に傾注し、
つむぎだされた調べが、この後期の弦楽四重奏であることは
よく知られていますが、
それを弦楽合奏(平たく言えばオーケストラ)に仕立て直したのが、
このCDです。こんなにまとまったかたちで聞けるのは少ない
(特に12・13・15番はほとんどないのでは。。。)という点でも
貴重なCDだと思います。
また泣いた。。。とまでは申しません。
でもハーベスにはよく合った音源で、けっこう長い時間聞きほうけました。。。
なんだか夢見心地になるのです。
おそらく作ったご本人も、そういう音楽を心のなかで聞いていたのだろう
とも言われています。
オヤジとしては、こういう音楽に心からほうけられるのは
我々(オヤジ)だけだ!なんて
気色ばんでみたい気持ちもないわけではないのですが、
今日は、なんともハーベスの響きが絶妙で、表題に示しましたように、
不思議に「またハーベス先生に音楽を教わった」という殊勝な気持ちに
なったのでありました。。。
3枚にわたって、弦楽四重奏にくらべて、過剰とさえいえる
ロマンティックな調べに身を任すのはどうも。。。
というむきもあるかもしれません。
でもそこは意地でも聞きとおす。。。というのが、
小市民的オヤジのささやかな「過剰さ」と心得て、
お付き合いできる方には、あえておすすめしてみたいと思います。
ただハーベス先生がいかにも得意満面で、
「今日はこんなのをおまえにプレゼントしたのだから、
明日からもがんばって働け」なんて言ってるかのように
たたずんでいることも最後に書き加えておかなければなりませんが。。。
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