大学の先生の演るネオハードバップ – Curtis Nowosad “Dialectics”

日記・雑記
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私は専門的な音楽教育を受けたことがないのですが、
すこし興味深いと思っているのは、大学で教えられるジャズです。
演奏の練習以外のいわゆる「座学」の授業では、
おそらく一般的な音楽理論のほかに、
ジャズの歴史なんかも授業があるのでしょう。
今日は、こういう先生のジャズ史の授業があったら聞いてみたいと思った
Curtis Nowosad(カーティス・ノウアサド)“Dialectics”の
ご紹介です。

曲目
1. Speak No Evil
2. Empirically Speaking
3. Dialectics
4. 159 & St. Nick
5. A Casual Test
6. Reconciliation
7. Bye-Ya
8. Gleaning & Dreaming
9. I Remember You

パーソネル:
Curtis Nowosad (drums)
Jimmy Greene (tenor and soprano saxophones)
Derrick Gardner (trumpet)
Steve Kirby (bass)
Will Bonness (piano)
2014年6月 17日 & 18日録音

すでに関口登人さんのレビューがあるので、
興味のある方は参照してください。

「21世紀のハードバップ・グループがまたひとつ」
ttp://www.jazztokyo.com/five/five1186.html

ノウアサドほか4人のメンバーは、
いずれも地元カナダのマニトバ大学で教鞭をとる大学の先生ですが、
関口さんもご指摘の通り
「著名グループでの実績の持ち主たち」でもあります。
たしかにみんなうまいです。
ただ、うまいだけじゃなくて、
「おいしくたのしいジャズ」を聞かせてくれるところがいいんです。
グループのノリとしては、
ちょっとソニー・クラークの「クール・ストラッティン」を
思い起こさせるところがあります。
気の合った仲間同士ならではの伸び伸びした雰囲気という点で
共通するところもあるし、
ハードバップ的なメロディラインを存分に活かした
まさに「ダイアレクティック」な掛け合いのたのしさも
似たものを感じます。

では単なる懐古趣味かというと、そういいきれないところもあって
たとえばドラマーとしてのノウアサドのプレイは、
アントニオ・サンチェスなんかの影響を感じさせる
「基本、ホットなプレイが持ち味だけど、アンサンブルのなかで聞くと
けっこうクールにも聞こえる」ところなんかは、
すごく近しいものがあります。
これは、おそらくノウアサドもサンチェスも作曲家としての意識が
ドラムのプレイにも表れているからなのだと思います。
自分のプレイを一歩引いたところからながめる視点を
2人とも持っています。
このアルバムのノウアサドの6曲のオリジナルは、どれもなかなかに
印象的なメロディラインをもっていて、
聞いていて、つい口ずさみたくなるようなポップさがあるのです。

それもそのはず、ライナーノーツを見ると
5曲目の解説のところで、彼自身が説明しているところによれば
「数年前、ブルースを各調でそれぞれ長調と短調をあわせ
24曲作ろうとした。
この曲は、たまたまできた最もシンプルなものの1つだが、
でも私のお気に入りなのである」
このへん、ジャズおたくっぽいというか、
さすが大学の先生!といえなくもないエピソードなのですが、
それだけ練られたメロディということなんでしょう。

私は、このアルバムを最近ドライブミュージックにしています。
耳ざわりのいい音楽だということを披露したかったのですが、
それは、よかれあしかれ、
このアルバムの特徴をあらわしているのではないかと。。。

ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」って
一部のジャズマニアから評判がよくなかったという話を思い出しました。
でも、総じて言えば、日本のジャズファンは、
このアルバムを本国より愛好してきました。
それは、ある種のたくみさを嗜好する国民性のあらわれのようにも
思われるのですが、過剰さとかむき出しの表現とかを求める向きには
もの足りない印象があったのかもしれません。
その意味でも、この“Dialectics”というアルバムは
2015年の「クール・ストラッティン」といったら
ちょっと言いすぎでしょうか。。。

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