アンコールの「共犯者」:ケラス&タロー” Complices” によせて

日記・雑記
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                     2020年02月02日

新年早々、NHKBS『クラシック倶楽部』で放映された
ジャン・ギアン=ケラス&アレクサンドル・タロー演奏会を
先日見ました。

このコンビ十八番のドビュッシーのチェロ・ソナタに始まり
ブラームスのチェロ・ソナタ第2番
同じくブラームスのハンガリー舞曲から
第11番、第2番、第14番、第5番といった内容でした。
1967年生まれのケラスに対し、タローは1968年生まれ
演奏者としても円熟期に入っている二人は
20年以上共演を重ねてきた間柄であり
気心も知れていて、自由闊達・丁々発止なやりとりをしながらの演奏は
見ていてかなり愉しめるものでした。

このコンビの魅力は、
ケラスのチェロの高度な技巧を、
ポップなセンスでタローのピアノが挑発的に引き出すところに
あるんではないかと思うのですが
今回の場合も、ホントに気負いのないカル~イ感じで
どの曲も演奏が始まり
たとえばドビュッシーのソナタだと
第2楽章の冒頭のリズムが特徴的な
(なにか生物のうごめきのようなものさえ感じさせる)部分あたりからは
二人の興も乗ってきて、観客もいつの間にかそのペースに巻き込まれていく
っていう感じでした。
ブラームスのハンガリー舞曲を演奏する頃には
会場もすっかり温まっていて
観客もノリノリで愉しんでいる空気感が伝わってきました。
ちょっとした粗さぐらいなら味わいに変えてしまえる
二人のパフォーマーとしての達者さには
ある種の爽快感を感じるぐらいでした。。。

そんな二人がアルバムをリリースしたというので
さっそく聞いてみました。
タイトルは” Complices”
日本盤?では「相棒」と訳されていましたが
ちょっとフィルム・ノワール風に「共犯者」なんてのもいいかもしれません。

内容は、ケラス&タローによるアンコール・ピース集なんであります。
多くが彼らの編曲によるもので
もうまったく肩の力の入っていない(笑)
二人の演奏がランダムに続いていきます。
なんとなくノリで作っちゃったようなアルバムですが
けっこう私は聞けちゃいました。。。

ハイドンのディヴェルティメント ニ長調から始まり
軽妙な二人のやりとりが愉しめる楽曲が続いていくのですが
M8 シチェドリン「アルベニス風に」
M11にベルント・アロイス・ツィンマーマン「短い練習曲より第4番」が
挟まれるあたりから、少しずつ雰囲気が濃密な感じになってきて
最後の3曲は、いわばアンコール集のアンコールみたいなもので
なんと、もうタローのピアノも登場しません。。。

M17は、コルトレーンのバッハに基づく即興となり
サックスにラファエル・アンベールが参加。
続くデュティユー「ザッハーの名による3つのストローフェ第1曲」は
ケラスの独奏で、テンションの高いクライマックスに持っていくか。。。
と思いきや、最後はハイドンの交響曲第13番よりアダージョを
弦楽合奏で聞かせるという何ともスイートなエンディングでした。

でもこのラスト3曲が意外に聞かせるのです。
おかげで前半の印象が若干ぶっ飛んでしまったような気もしますが
そのへんはケラスが「確信犯」だったのかもしれません。。。
またハイドンに始まりハイドンに終わるという構成も
個人的には気に入りましたし
今後の彼の方向性を示唆するもののようにも思えるし
単なる贅沢な遊びのようなものだったのかもしれません。
でもこのアルバムを聞くことで
彼らのアンコールの「共犯者」として
末席ながら仲間入りができたとすれば
ちょっとスリリングな体験だったといってもいいかな~
と今は思っています。

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