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イブラギモヴァ&ティベルギアン at フィリアホール

日記・雑記
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今年の6月に「ヴァイオリンとピアノの再生」日記を書きました。その時点では、ヴァイオリンソナタは小さなスペースでしか聴いたことがなかったので、通常ホールでの演奏を聴いてみようと思ったのがきっかけです。この先の公演でめぼしいものがないかを検索したところ、フィリアホールでのアリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアンのコンサートが目に留まり聴きに行くことにしました。

 

コンサートの感想を簡単に言えば、「弱音の魅力」でした。これまでのオーディオで感じてきたこと多少違い、新たな聴きどころを得た気がしています。

 

アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアン ヴァイオリン&ピアノ デュオ・リサイタル

<演奏曲>

・ドビュッシー / ヴァイオリン・ソナタ ト短調

・プーランク / ヴァイオリン・ソナタ FP119

・ベートーヴェン / ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op.47「クロイツェル」

 

<見え方聴こえ方>

今回座ったのは、2階席右バルコニーの中央付近です。このホールの2階バルコニーは、1年ほど前にステージ先端付近の真横の位置から聴いて、少しステージから離れた椅子が斜めに向いた場所からも聴いてみたいと思ったからです。

見え方は、ステージ右側は見切れてしまいますが、ヴァイオリン&ピアノ デュオでは見切れる部分はなく見やすかったです。問題は聴こえ方です。500席ほどのホールの中央付近では、音量はかせげません。最大でも70dB未満でしたので数値的には小さいのですが、聴感上の不満はなかったです。響きが強めのフィリアホールですが、ヴァイオリンの音がしっかり聴こえ、ピアノの強打もガツンと感じ、バランス的にも不満はなかったです。イブラギモヴァの音を飛ばす力が冴えているのかもしれないです。全体的に音量は小さいのですが、逆に「弱音の魅力」に惹かれました。

 

<コンサートの感想>

ドビュッシーとプーランクのヴァイオリン・ソナタは共にフランスの作品で、ドビュッシーは第1次世界大戦中に作曲し、プーランクは第2次世界大戦中に作曲したとのことです。このためなのか、両曲共に「危機迫るような印象」を受けました。ドビュッシーは色彩感豊かに迫り、プーランクは激しく、恐ろしいまでに迫って来る感覚を受けて、近代音楽の示すことと聴きどころを感じさせられた気がします。この際に、苦しさ 儚さ 絶望などが弱音で表されると感じました。

 

ベートーヴェンの「クロイツェル」も激しく揺さぶられる曲ですが、前の二曲と比べると身近な感覚です。この曲の逸話として、ベートーヴェンの「クロイツェル」を聴いて触発された文豪のトルストイが、「クロイツェル ソナタ」を書いたと聞きます。「妻がこの曲を共演した男と恋に落ちてしまったことの嫉妬と妄想に苦しみ、最後は妻を刺し殺してしまう」という作品です。さらに、トルストイの小説「クロイツェル ソナタ」を読んだヤナーチェクが、弦楽四重奏の「クロイツェル ソナタ」を作曲したとのことでした。このインスピレーションの連鎖には驚かされます。自分は、これほどの感性は持ち合わせていませんが、この曲を聴くと、激しく揺さぶられる感覚を受けます。オーディオで聴きなれた「クロイツェル」では、もう少し音量が欲しいと思いました。ベートーヴェンの室内楽を聴くと、いつももう少し近くで聴きたいと思うので、何か関係性があるのかもしれないです。それでも、普段とは違う弱音部分に耳が惹かれたことを特記しておきます。

 

アンコールでは、同じベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタから第6番の2楽章が演奏されました。これまでずっと緊張感が続いていた中で、おだやかな曲が流れて安心します。今回のフィリアホールで聴いたイブラギモヴァ&ティベルギアンのヴァイオリン&ピアノ デュオは、「弱音の魅力」が際立ったコンサートでした。

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