再現!黎明期のクラシック演奏会 – フィリアホール

日記・雑記
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「半額」というチケット譲渡の掲載が出ていたので目が留まり、フィリアホールのコンサートに行ってきました。公演は「横濱音楽物語シリーズ」の第1回「再現!黎明期のクラシック演奏会 in 横浜」です。

このコンサートのコンセプトは、明治初期の横浜外国人居留地にあった劇場(パブリック・ホール、山手ゲーテ座)の演奏を再現するものです。今回はそのうち明治40年4月26日に開催された演奏会のプログラムを基に、記載された全ての曲を再現演奏するとのことでした。100年以上前に日本で行われたコンサートの再現ということで興味がわきました。明治時代の日本でこのようなコンサートが行われていたとは、さすがに異国の文化が流れ込んで来た横浜です。

 

加えて、座席位置がステージ上方の右サイドだったので、この位置が「響きのよいホールでピアノを聴くのに最適なポジション」であることを確かめたかった狙いもありました。

フィリアホールは何回か聴きに来たことがありますが、これまでは1階の前方席でした。定員500名の中規模なホールですが、柔らかく潤沢な響きが心地よいホールです。基本的にステージ前方が好みですが、この位置で聴くピアノはもうひとつです。底板から出る音を聴くようで満足できていませんでした。ですが、先日のみなとみらいホールでこのポジション(ステージ上方の右サイド)から聴いたところ、とてもよかったで、別のホールでもこの位置で聴いて確かめたかったのです。

 

<プログラム>

①ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 Op.51より 第1・3・2楽章

②ワーグナー レチタティーヴォとロマンス ~楽劇『タンホイザー』第3幕より 夕星の歌

③グリーグ ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 Op.45

④シューマン ひそやかな涙 第10曲 献呈 ~歌曲集「ミルテの花」 第1曲

⑤ブラームス ピアノ四重奏曲 イ長調 第2番 Op.26

※①以外はすべてピアノ演奏が入ります

 

<出演者>

比較的若手のメンバーでの実施です。若手が集まるコンサートも面白いと感じました。演奏も様々でしたので新たな感想が生まれた思いです。

 

①ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲 第10番 感動度☆☆☆☆☆

この位置で聴く弦楽四重奏も音は悪くないと思いました。ですが、正面で聴くときの四重奏の丁々発止なやり取りが感じ難かったです。オーディオと比較して、中高域の綺麗さは魅力がありましたが、掛け合いの刺激が不足し後半はうとうとしました。目の前での掛け合いを彷彿させる意味で、オーディオ再生での音像定位の大事さを感じました。(比較音源:アルバン・ベルク四重奏団盤)

 

②ワーグナー レチタティーヴォとロマンス ~『タンホイザー』より 夕星の歌

④シューマン ひそやかな涙 第10曲、 「ミルテの花」 第1曲 献呈

・前半と後半に割り振られた歌曲です。この位置で聴く声楽は、直接音の力感は感じられないものの、反射音と響きが心地よかったです。バリトンの坂下忠弘氏は、加耒徹氏の体調不良から直前に代役でしたがよかったです。ですが、「いい声をしているな」「フランスものが得意なせいか、ドイツ語の発音にわざとらしい所がある」「ドイツ歌曲は歌ったことがないが、自分も歌ってみたい」など、自分が歌うならの視点で聴いてしまいますね。

・ピアノは歌をサポートすべく、伴奏に徹していた印象でした。

 

③グリーグ ヴァイオリン・ソナタ 第3番 感動度★★☆☆☆

・この曲はとてもよかったです。ヴァイオリニストの小林美樹の得意曲なのでしょうか。切れの良い音がビンビンと響いてきます。ピアノも明瞭かつ心地よい響きで、「生で聴くヴァイオリンとピアノの音は両立しない」と感じてきたことが払拭された思いです。ステージ上の右サイドで聴くヴァイオリンソナタは極上と感じました。

・事前の聴き込みでは、「この曲はどうも馴染まない」と感じていたのですが、この日一番印象的でした。やはり音楽を聴くには、音が大事ですね。オーディオ再生では馴染まないでいた曲でしたが、生演奏で一気に引き込まれました。(比較音源:オーギュスタン・デュメイ & マリア・ジョアン・ピリス盤)

 

⑤ブラームス ピアノ四重奏曲 第2番 感動度☆☆☆☆☆

・グリーグがよかったので、一番期待していたのですが肩透かしでした。グリーグでは、この位置で聴くピアノが明瞭かつ心地よい響きだったのに、もうひとつなのです。力強いピアノが聴けるだろうと期待していたのですが、ピアノも弦楽も響いて来なかったです。

・事前の聴き込みでは、この曲が一番好きだと感じていたのです。期待するからがっかりするのでしょうか。ですが、ピアノも弦楽も力強さを感じたいなら1階席がいいみたいです。(比較音源: ボザール・トリオ&ワルター・トランプラー盤)

 

今回のコンサートは、様々なクラシック音楽のプログラムを同じホールの同じ位置で聴くことによって新たな認識が生まれました。ピアノ演奏は一人で全曲担当していたのですが、奏でる音も印象も曲ごとにこれほど違うとは思いもしませんでした。

・響きのよいホールで聴くピアノは、綺麗な音を聴くためには、ステージ上の右サイドで聴くのがいい

・響きのよいホールでピアノも弦楽も力強さを感じたいなら、1階席のステージ前がよさそう

・若手演奏家を聴くときは、得意な演奏曲を聴くべし。即席のトリオやカルテットは避けるのが無難である

 

生演奏を聴くのも奥が深いですね。生は水ものと感じて来ましたが、ある程度の法則性はありそうです。オーディオのために生から学ぶ姿勢で聴き始めたコンサートでしたが、生には生の不思議や面白さがあります。これらを一つずつ紐解き、認識を深めていく楽しさがありますね。こんな点もオーディオと同じだなと思いました。これだから、生もオーディオも面白くて止められません。

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