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無指向性スピーカー初体験記-GRF邸にて

日記・雑記
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K&Kさんのご紹介で、この度、GRF邸にお招きいただきました。私がAuro3Dなどという大仰なマルチチャンネルオーディオに取り組んでいることに対し、同じ「空間系」のホールサウンド追求派(?)として少々ご関心を持っていただけたようで、一度、相互訪問をしましょうということになり、私が「先攻」となったのです。

GRF邸の訪問記はこのコミュニティには数多くあり、どれも来訪者の「驚き」で満ちている内容になっていますが、私自身がそうであったように、このサイトをROMしているだけのオーディオ初心者の方にとっては「DDユニット?」という感じで、写真が添付してあってもなんだか得体のしれないものにしか見えないと思います。ゆえに最初に、簡単に原理の説明を。

GRF邸にあるGerman Physiks というブランドのスピーカーは、「無指向性」といって、音が一方向に向かうように設計されている通常のスピーカーとは異なり、理論的には360度(球形)に音が出るように設計されているスピーカーです(現実には、真下と真上だけには音が出せない仕組みになっているものが多く、これもそうです)。

実は私も伊豆の別宅の部屋に最初に入った時、「この部屋には無指向性スピーカーが合うかも」と思い、少し探してみたことがあります。もう15年近く前になりますが、その時は「エグレッタ」という名前のスピーカーが唯一試聴できたのですが、量販店のオープンなスペースだったこともあり、あまりいい印象が持てずに、導入を見送った経緯があります。

つまり、ちゃんとセッティングしてある無指向性スピーカーを聴かせていただいたのは今回が初めてでした。

その音質をうんぬんするには、私のようなオーディオ初心者で「絶対オーディオ音感」が未形成なものには、自分のシステムとの比較しか語ることができませんが、いくつか初心者なりに気が付いた点を列挙してみたいと思います。

まずお部屋です。部屋は一番重要な「オーディオの道具」と考えている私は、部屋に通されるなり、ぐるりと見まわしてから手を打ったり、壁や床を叩いたりと、ご許可をいただいてからではありますが失礼な行為に及びました(笑)。そこで気が付いたのは、壁は普通の家と同じようなパネル(木製?)で、壁紙ではなく塗りで仕上げてあるのですが、GRFさんによると、一定周波数での共振を防ぐため背面の桟(=建築用語不詳)の間隔をバラバラになるように大工さんに頼んだそうです(普通は45センチ間隔だと思います)。次に床ですが、これは他の方の「日記」に詳しいので割愛しますが、ものすごい剛性感のある土台の上に硬そうな無垢材を使った木製床。部屋は20畳ぐらいはありそうですが(後の情報によると24畳だそうです)6面の壁が平行で、天井高も無茶苦茶高いわけではないので、普通この壁と床だとものすごくLiveになりそうなのですが、手を打つとかなりDead。その秘密は天井にあるようで、ここにはむき出しで厚い綿(?)のような吸音材がぎっしりと詰め込んであります。6面のうち正面の壁には布製のカーテン、反対側のリスニング用のソファも布製で、これらもある程度の吸音効果はありそうです。

無指向性のスピーカーは部屋の反射音が重要だというイメージがあったので、コンサートホールのようなLiveな部屋を想像していたのですが、GRFさんによると、「ソースの中にホールの反響音が含まれているのだから、それをきちんと再現できれば十分で、部屋はDeadの方が余計な付帯音が乗らないのでよい」というご説明でした。

さて、いよいよ試聴です。お使いの機器もものすごいものらしい(他のGRF邸訪問記を参考にしてください)のですが、私では説明されてもよくわからないし(笑)時間もないので割愛。

最初はいくつか、GRFさんがご自分のシステムで「良く鳴っている」と思われているレパートリーを拝聴しました(これも他の方の日記に詳しい)。第一印象は、正直に書けば、普段自分が聴いている2chやマルチに比して、「音が遠いな」と思いました(後述しますが、聴きなれていくと徐々に印象が変わっていきます)。GRFさんは私に比して音量低めがお好みということもありますが、コンサートホールの舞台から反対正面の2階席で遠くに見下ろしているような感じ。とても俯瞰的に聴こえて、視覚的に換言すればホール上にいる楽団員にスポットライトが当たって浮かび上がっている全体像が見えているようなイメージでした。私の前の日記で書いたことを援用すれば、「指揮者の位置の原音」ではなく、「客席の位置での原音」です。

次々に聴き進めるうちに、いくつか、興味深い特徴に気が付きました。まず、「ああ、密度の高い、しっとりとしたいい音だな」と思って、何気にケースを見ると、「Compact Disc」と書いてあるものが何枚もありました。てっきりSACDだと思っていました。もちろん、SACDも混じって聴かせていただいているのですが、あまり差を感じないのです。これはSACDの音が悪いのではなく、CDの音がいいのです。GRFさんにこのことを伝えたら、「私はこのシステムでSACDの方が音が良いなどと思ったことはない。あるのは良い録音と悪い録音(良質な付帯音の有無という意味か)で、フォーマットの違いではない」との回答でした。

次に気が付いたことは、このシステムの視聴位置に「スイートスポット」というものはない、ということです。これは一般に言われる無指向性SPの特徴ではあり、それは普通、「定位感がない・甘い」というのと同義なのですが、GRF邸ではそうではありません。右のスピーカーの前の方に座ると、ちょうどコンサートホールの右側の席に座った時のように、やや左前方にオーケストラやボーカルが浮かびます。普通、2chステレオでは、右側寄りに視聴位置をずらすと右側の音が大きく聞こえるため、音像は右側に寄りますよね。ここは寄らないのです。センターで聴けばクラリネットはセンター(二つのスピーカーのちょうど間という意味)に位置していて、サイドで聴いてもクラリネットは二つのスピーカーの真ん中あたりにそのままいるのです。ボーカルもしかり。自分の位置が移動しただけで、音像は動かない。実に不思議です。

もう一つびっくりしたのは、GRFさんが「スピーカーの位置が悪い」とおっしゃって、演奏の途中に立ち上がって、右側のスピーカーの前を行ったり来たりしたのですが、GRFさんが右のスピーカーが私からは見えないような位置に立っても、また左右のスピーカーの真ん中の位置に立っても、音像や音場が(私の耳には)ほとんど乱れないのです。普通の2chステレオ再生では、片側のスピーカーの前に立ちふさがろうものなら、定位は乱れ、片耳をふさがれたような再生音になりますよね。それが起こらない。

上記3つの特徴は、私見ですが恐らく、うまくセッティングされた全方位スピーカーに共通するものだと思います。私は途中で、「このスピーカーの能率はいかほどですか?」と伺いますと、「88デシベルほど」といわれるのでびっくりしました。なぜって、パワーアンプは真空管で、しかも1台が3つものユニットをドライブしていると説明を受けていたので、「それでこの凄みのある音を出すのだから、よほどSPの能率が高いに違いない。100ぐらいあるのかな」と思っていたからです。「えっ、そんなに低いんですか」というとGRFさんは、「低くはないですよ。それが全方位に出ているのですから」といわれました。なるほど、能率は1M離れたところにマイクを置いて測るそうですが、普通のスピーカーなら測定される「正面」だけに音を集中させていますが、このSPは周囲のどこで測っても「88」出ているわけです。つまり、このスピーカー群(GRF邸には計6台あります)がこの空間に発出している「音エネルギー」の総量はものすごいものなんだろうなということが文系の私でも理解できました。視覚的に換言すればミラーボールが6つも置いてあり、おのおのが360度に光を発出し、それが床や壁や天井に反射して(天井は吸収しているようですが)部屋全体が明るくなっているというイメージでしょうか。だからどこに立っても同じように光が当たる。一方向の障壁では光を遮ることはできない。

最後に、拙宅のシステムとの音の違いを確認させてもらおうと、私の愛聴盤をいくつかかけてもらいました。残念ながら、私が持参したいくつかのディスクはブルーレイオーディオで(Auro3Dなど)、GRF邸では普段はブルーレイプレーヤーはプリアンプに繋いでいないというので、時間も残り少なくなっていたため、これらの試聴はまたの機会に取っておくこととしました。ここで判明したのは、ディスク(録音)によって、無指向性SPに合うものと合わないものがあるということです。特にマルチチャンネル録音されたSACDで、マイクを取り囲むような形で収録されているものや、反響の多い教会録音のようなものが合わないようです(GRFさんも「PentaToneは・・・」とつぶやいておられました)。GRF邸は中高域ユニットが6台、低域が2台、超低域が2台の計10台構成ですが、あくまでも2chステレオ再生で、マルチチャンネル再生はしておられません(その必要性を感じない、とおっしゃっておられました)。ゆえに、マルチチャンネル録音されたSACDは2chにダウンミックスされたバージョンの方が再生されるのですが、ここでどうも、「自然な」付帯音・ホールトーンが抜け落ちてしまったり、逆に変に強調されたりするものがあるようです。

確かに拙耳でも、本来の3次元的な音像・音場がやや平面的に聴こえるソースがありました。総じて、ライブ録音との相性が良いようで、少ないマイクの本数でミキシングも最小限にしたものの方が、このシステムの好物のようです。

もう大論文になってしまいました(笑)。非常に興味深い体験でしたので、まだまだ書きたいことは一杯あるのですが、この辺にしておきます。2時間のお約束でお邪魔しましたが、だんだん耳が慣れて、最後に聴かせていただいたカンターテ・ドミノと八代亜紀Liveには聴き惚れました。

最後に一つ忘れていました。実は一番最初に、導入したばかりという「光カートリッジ」なるものを使ったレコード演奏を聴かせていただいたのですが、一発目がこれだったので、この音がアナログだからか、それとも無指向性SPだからかがわからず、この記事ではスルーしてしまいましたが、今から思い出すと、スクラッチノイズがほとんど聴こえないという意味でその後のデジタル再生と区別がつかないような、「レコードらしくない体験」でした(駄耳ですみません=笑)。

GRFさん、貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。いずれ拙宅にもお越しくださいね。

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