Storm Audio ISP MK2の設定・自宅試聴記

日記・雑記
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この記事は、半分備忘録、半分は自身を納得させるために書いています(笑)。

過日、Naspecさんと、AVAC横浜店さんのご厚意で、標記AVプリアンプを伊豆の拙宅にお借りすることができました。以前、AVACで試聴させてもらい「日記」にもしましたが、やはりこのクラスの買い物となると、自宅で試してから判断したいもので、今回、快く了承いただいたのです。2週間貸していただいたのですが、さすがに夏休みでもないのに別宅にそんなに連続で居られるわけもなく、しかしせっかくだからと結局東京と伊豆を2週間のうちに二報復する羽目になりました(笑)。

何日間かいろいろといじらせていただいたお陰で、導入初日はNaspecの方にやっていただいたかなり複雑な作業の各設定を、ほぼ自分でおおよそできるようになったので、まずは恐らくどのAV雑誌よりも詳しく(?)、この機器の使い方をご紹介したいと思います。

設定に際し、最低限必要なのは、PC(WindowsでもMacでもいいそうです)と、インターネットとLAN環境です。なおこの機器にはリモコンがありません。8805のようにリモコン片手にテレビ画面に映した設定メニューを見ながら、ということができません。リモコン代わりに、LANにつながったIPadがあるとベターです(ただし操作のみで、設定はできません)。両方とも専用のアプリ(PCはDirac Liveというルーム音響補正ソフト)をインストールしておきます。

【設定】

同じLANにつながったISPのローカルIPをPC内のGoogle Chromeに入力して接続します(このブラウザーがない場合は入れておく必要があります)。設定画面で最初にやることは、自分のシステムにあるスピーカー群の3層に分けた定義です。
<写真1>[:image1:]
この写真は、拙宅のBase Layerの設定画面です。基本の5chに加え、フロントワイドとリアサラウンドのある、9chのプリセットを選んでいます(最大13ch)。なかなかすごいのはサブウーファーの設定で、拙宅ではSub1~4まで4台の定義をしています。最大設置可能台数は今回はトライしていませんが、6台でも8台でも定義できそうでした。8805は2台までだったので、拙宅ではこれまで2台余っていましたが、これを使えば部屋の前後左右に設置してある4台すべてをAVアンプで管理運用できます。サブウーファーは1台より複数台ある方が、Dirac Live(本機のルーム補正ソフト)で定在波や位相の管理がしやすく、部屋の中で低音の偏りを少なくできるうえ、1台当たりの負担を減らせるためボトミング・クリッピングなどを起こしにくくなるとNaspecの方はおっしゃっていました。

この写真でもう一つ注目して欲しいのは、左上にMultiwayと書いてある欄があり、LCRの右に各「2」と表示してある点です。これはチャンネルディバイダ―機能で、拙宅のSonetto VIIIはネットワーク内蔵なのであまり意味がないかもしれませんが、ここでは試しにMid-HighとLowの2つに分割してみました。
<写真2>[:image2:]
同様に、第二層(Height Layer)を設定します。この層の最大定義数は5で、拙宅はこれを選びました。
<写真3>[:image3:]
最後に、第三層(Top Layer)で、ここでは最大7chまで設定できます。拙宅ではリスニングポイント頭上のTopスピーカーを入れた3chとなります。
<写真4>[:image4:]
すべて完了したスピーカー配置図がこれです。「9.4.5.3」となっています。全21chとなります。国産機ではこの配置に対応できるものは現状ない(確か、デノン・マランツの9.2.4.または7.2.6の15chが最大)と思います。

なお、第2層と第3層の高さの違いについては、あまり気にする必要はありません。実は拙宅では、高さだけでいえば、本当は9.(4).7.1となっています(第3層で設定したTop of the Topの左右のSPはTopスピーカーより低い位置にあり、第2層と同じ高さに設置してある)。後にマイクによる測定でDelay調整のためにスピーカーごとの距離を計測するので、実際の高さよりマイク(リスニングポイント)からの距離が問題で、ここでは大体の方向と数さえ間違っていなければいいそうです。

スピーカー配置設定が終わると、今回はチャンネルディバイダ機能を使うことを選択したので、その設定画面に入ります。ここでは本コミュニティのTomyさんとK&Kさんの多大なご協力とご指導をいただき、クロスオーバー周波数を270Hz(Sonetto VIIIのクロスと同じ)、スロープをBT6と設定しました。
<写真5>[:image5:]

【測定・解析】

ここまで終わったら、「DIRAC」ボタンを押して測定開始です。ここで、PCにあらかじめインストールしておいたDirac Liveのソフトを立ち上げる必要があります。このソフトは測定・解析に際しDirac本社のサーバーとやり取りをする必要があるそうで、ゆえにインターネット環境がないと測定ができないそうです。

最低5か所にマイクを移動して測定を繰り返すことを求められます。じつはここでもう一山あります(笑)。測定音とマイク感度のレベル調整を全スピーカー別に1台ごとマニュアルでやる必要があり、これに失敗すると測定の途中で止まってしまいます。これが結構微妙でピンポイントが狭く、音量・感度が高すぎても低すぎても測定が進まず、何度もやり直しをさせられます。拙宅の場合、21台ありますので、これにはかなり苦労しました(一日ずっと測定音を聴かされた日もありました…)。8805のAudysseyや自宅のLX-89のMCACC-Proなどは、すべてこのあたりは自動なのですが。

測定が完了すると、解析に進みます。ここで重要なのは、すべてのサブウーファーを含む全スピーカーの低域を統合的に制御する、Bass Control(Dirac Liveの機能の一部)を作動させるためには、「Full Bass Optimization」という低音のみの解析・設定をさらにしなければなりません。それを行う際の画面がこれです。
<写真6>[:image6:]
ここにはメインスピーカーであるフロントの片チャンネルと、すべてのサブウーファーのf特が表示されています。一番下のf特がバスレフのヤマハのSW、そのうえ3つの重なりが密閉型のフォステクスのSW一番上が、Sonetto VIIIです。

ここでまた「クロスオーバーポイント」を指定するという作業があります。マニュアルによるとメインスピーカーの低域の下がり具合をサブウーファーで補正できるポイントを選べ、みたいなことが書いてあるのですが、素人の私には低域はどれも同じような曲線にしか見えず(笑)。山と谷が重なっているところに適当に設定しました(爆)。

【REWによる計測と位相チェック用音源によるテスト】

これで終了、いよいよ音楽試聴、と行きたいところですが、今回ご協力いただいたK&KさんとTomyさんの強い要望で(笑)、REWというソフトを使った計測と位相チェック用の音源によるテスト試聴を行いました。
<写真7>[:image7:]
まず、これはDirac Liveによる補正後のSonetto VIIIのf特です。ただし、Dirac Liveは各スピーカーごとのf特をフラットに補正するのではなく、部屋のマルチチャンネルシステム全体としてのf特を統合的に整えるために各スピーカーのf特を調整しています。特に低域に関してはBass Controlによる補正が入り、他のサブウーファーなどとの兼ね合い(本機では、サブウーファーはLEF再生専用機ではなく、部屋のマルチチャンネルシステム全体としてのf特を構成する要素の一つという位置づけとなります)で幾分抑えられている可能性がありますことにご注意ください。
<写真8,9>[:image8:][:image9:]
次にこれは、ステップレスポンスとチャンネルレスポンスです(すみません、受け売りでよくわかっていません=汗。詳しくはTomyさんの日記をご覧ください)

拙日記で 繰り返し書いてきたように、Sonetto VIIIは上下のユニットが逆極性で構成されています。ゆえに「マニュアル通り普通に」つなぐと、中高域は逆相反応を示します。しかし、このステップレスポンスを見ると、「マニュアル通り普通に」、つまりプラスはプラス、マイナスはマイナスにつないでも、中高域の極性が反転されて全ユニット正相に補正されていることがわかります。試しに、上(Mid-High)だけ逆極性接続をして測定しても、同様のステップレスポンスとなります。これはチャンデバ機能を使ったときのみかもしれませんが、極性を判定し逆相接続のものは自動で正相に極性を反転させる機能があるようです。Audysseyだと「逆極性ですよ!」と注意が出るだけで、自分でつなぎ変えなければなりませんが、ここだけはISPの方が自動化されてますね(笑)。

最後に、位相が正しく整っているかを耳で判定する実験用のソフトを2種類(一つはDenonのSACD、もう一つはK&Kさんにご紹介いただいたもの)使ってみました。拙宅の場合残念ながらフロントSPとサラウンドSPが異なる(3Wayと2Wayでクロスオーバーが異なる)ので、同一SPを使っておられるK&Kさんのお宅のようにはきれいに再生することはできませんが、まあ、なんとか両スピーカー間に音が定位・移動しますので、私的には(笑)これで良しとしました。

【試聴】

ようやく、ここにたどり着きました(笑)。今回の比較のために、取り外す前の8805でさんざん聴きこんで耳と脳に焼き付けてきた愛聴盤の出番です!

まずはAuro3D定番の『LUX』。教会録音で合唱とオルガンが特徴的なソフトです。一聴して、それまで聴きなれていた8805での再生に比して「部屋が広くなったな」と思いました。元々拙宅は十分広い(床面積ではなく、高さ、空間的に)のですが、それまでが「軽井沢高原教会」だったとすると、「サンピエトロ寺院」に変わった感じ(ちょっと大げさ=笑)。ある意味、「熱量」が下がったとも批判できるかもしれませんが、その代わり「静寂度」が上がり、厳かな感じはより出ています。

次に、バースタイン・ニューヨークフィルの『惑星』から、「火星」と「木星」を(SACD 5.1chソフトですが、Auro3Dにエミュレーションして試聴)。ここで注目(注聴?)したのは低域の再生品質なのですが、8805のときはぼやっと低音が塊で出ていたのに対し、ISPは低音の中に潜むグラデーションがわかるようになりました。例えばティンパニが叩かれた瞬間の「固い」音と、それがその後床やホールに広がる腹に響く低音。コントラバスの弦を弾いた瞬間の「キュっというきつい音」と、それがその後床やホールに広がる腹に響く低音。これらがよりはっきりと分かるようになります。

次にジャズ・ロック系から、ボブ・ジェームスの『Straight Up』とドナルド・フェイゲンの『The Nightfly』(前者は2ch、後者は5.1chで、これらはそのままNative再生しましたが、前述の通り、今回の設定ではサブウーファーはすべて動員して再生しています)。ここでのポイントはベース・ドラムのタイトな音のリアリティなのですが、クラシックソース以上に、ここで、今鳴っている音が自分史上最高の低音の品質になっていることに改めて気が付きました。サブウーファーが4台もスイッチオンになっているのに、全然ボンつかない。むしろSonetto VIIIやAmator IIIの2ch再生のときより低域が締まっている。これはちょっと感動しました。実は、一連の実験半ばで拙宅に急遽Helpに伊豆までわざわざ駆けつけてくれたK&Kさんが、愛聴ピアノDuoを再生されて、「この靴で床をたたいた低音は、某所で聴いた某ハイエンドSPよりいいよ」といっていただいて、いくら何でもそれは社交辞令だろう(笑)と思っていたのですが、最終日にこれらの音源を聴いたとき、「まんざらでもないかも」と思ってしまいました。下世話にもちょっと計算してみたら、なんと、某ハイエンドSPの価格と、拙宅の21台のSP群の合計金額がちょうど同じくらいだったんですよ! おカネは裏切らないのでしょうか(笑)。アリが巨像に挑むの図、ですが、「数は力なり」(By田中角栄)というのは、オーディオの世界にもあるのかも。

さて、一応AVアンプですから、少しは映画も(笑)。といっても私の関心は映像の品質には無く、音だけです。

まずは愛聴(笑)盤の『Gravity』から(AtmosによるNative再生。今回の設定では、9.(4).6再生となります)。これは何といっても最初の宇宙遊泳シーンの音の移動感に注目です。映像を見ないで(見ると脳がそちらに強く影響を受ける)敢えて音だけに集中して「聴き」ましたが、なかなか、「くっきり」移動していましたよ。

次に、これも大好きな『Blade Runner』(3枚ほど持っていますが=汗、最新Atmos版ではなく、敢えて古いDTSの7.1chを選択。理由は後述)。最初に宇宙船?が飛び交うシーンがあり、その移動感とエンジン音?の再生品位が注目ですが、8805との比較に過ぎませんが、これも素晴らしかった。そしてEndingのバンゲリスの音楽が入るところ(ここ、好きなんです!)。感動しました(笑)。

ここでなぜ敢えてDTSの7.1ch版を選んだかというと、本機は8805同様、エミュレーションでDTS Neural X化することができるのですが、このDTS Neural: Xを本機で再生すると、なんと、21chすべてを鳴らすことができるからです!
<写真10>[:image10:]
この写真は、PCからISPの動作状態をモニターすることができる画面で、右側にあるOUTPUTSと書かれている欄の緑色が出力を%表示しており、これが1から21まですべて点灯していることがお分かりになりますでしょうか。ちなみに、Atmosソフトは、9.(4).6の19チャンネル再生(トップSPとセンターフロントハイトSPは鳴らせない)、Auro3Dソフトは、7.(4).5.1の17ch再生となります(フロントワイドSPとトップミドルSPは鳴らせない)。

21ch再生による『Blade Runner』、I’d love to turn you on!

締めとして、私が持っている唯一のAuro3D Native映画ソフトである、『ゴーストバスターズ(2016年版)』を聴きました。私はこういう映画は苦手なので、ただ、Auro3Dを聴くためだけに買ったのです(笑)。一番最初の、幽霊との遭遇シーンは、8805に比して音が怖すぎて、この映画が本質的にお笑い映画であることを忘れさせ、この手のものが苦手な私は思わず、再生を止めました(爆)。

拙宅は、スピーカーの数が多いのに物理的な調音器具を何も設置していないので、変形部屋とはいえ、恐らく定在波などが多少は住みついていると思いますが、この機器を使うと高額な調音器具を多数導入したのと同じくらいの効果があると想像します。拙宅はリビングオーディオで専用室ではないこともあり、個人的な趣味として無粋な調音器具は美的な観点(パワーアンプすら見えないように隠している)から一切使いたくないので、部屋の音響問題を物理的にではなく電子的に解決してもらえるのはとてもいいなと思いました(アキュフェーズのルーム補正装置は2chで100万近くすることを考えるとMax32chまで対応できる本機はむしろお買い得?)。

以上ですが、最後になりましたが、K&Kさん、Tomyさん、そしてNaspecの皆さんおよび横浜AVACさん、今回は大変お世話になりました。この場を借りてお礼を申し上げます。

すべての試聴と測定を終え、ISPを返却し、伊豆からの帰りに横浜AVACに寄って、カード決済してきたのでした(笑)。

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