今年7月25日から始まった音楽配信サービス「Pure Audio Streaming」(以下PAS)を試してみました。
Phile Webの紹介記事は以下です。
世界初、7.1.4ch/96kHzのリニアPCMをストリーミングする音楽配信サービス「Pure Audio Streaming」 – PHILE WEB
お徳か無駄か
月額25ドル(154yen/$換算で3,850円)または年額275ドル(同42,350円)と、Apple Music、Tidal、Qobuzより高いわりにはアルバム数は、なんとdonguriが片手間で数えることが出来るほどの少なさ。2025年11月17日時点で13レーベルからの152アルバムのみ(donguriが数えたので多少のエラーはご容赦下さい)いったいだれがサブスクするんや?と大半の人は思いそうです。
イマーシブ音源というくくりでは、すでにApple Musicの空間オーディオ(ロッシーAtmosストリーミング)で、どんどんアルバムが出てきており、太刀打ちでないのは明らか。しかし、なんといってもウリはAuro-3Dフォーマットがストリーミングで聴けることで、Auro-3Dファンに限って言えば、アピールポイントがありそうです。なんせ これまでAuro-3Dの音源はBlu-rayディスク(2L、Sono Luminusなど)かダウンロード販売(Spirit of Turtle、Native DSD、TRTPKなど)しかなく、しかも安めのダウンロード販売でも単価は3千円台ほど、2LのBlu-rayディスクは6千円!Spirit of Turtleのダウンロードファイルが4千円から5千円と、2chや空間オーディオ(Atmos)音源ではありえないほど高価なわけです。コストを全く気にしない層には関係ないかもしれませんが、donguriは購入に慎重にならざるを得ません。
donguriが調べた2025/11/16時点でのPASのアルバム数と音源フォーマットの内訳は以下のようになっています。
donguriは、Auro-3Dフォーマットのアルバム、上記中のレーベルのものでは、2Lが12タイトル, The Spirit of Turtleが8タイトル、IAN Recordsが6タイトル所有していることが今回判明。ファンのわりに投資が足らないと叱らないでください。したがって、117-12-8-6=91タイトルが未購入です。これを全部買ったら、ざっくり平均1アルバム4,000円としても、364,000円ですので、サブスク年額払っても、個別購入の10分の1ほどのコストとなり、お徳!ということにはなります。
肝心な音質は?
音質があまりにもBlu-ray ディスクやダウンロード音源と差があるのなら、価格差のお徳感が無くなるわけですので、比較してみました。
donguri持っている2LやIAN Recordsのディスク(Tuvyhum, Ujamar, Remote Galaxyなど)やSpirit of Turtle (Lina tur BonneのRavel、シューベルト交響曲など)の音源とPASの音を以下の環境で比較してみました。
ディスク再生:プレーヤー(OPPO UDP205)=>HDMI (FIBBR King A)=>AVアンププリ部(Cinema 30)=>パワーアンプ Linn AKURATE 4200=>フロアレベルスピーカー B&W 805D3/Cinema 30内臓パワー=>ハイトスピーカーB&W 707S2
ダウンロード音源再生:Roon Server (ROCK (NUC11))=>LAN=>Roon Bridge (Vaio Note Linux化)=>HDMI(FIBBR King A)=> アンプ以降は同じ
ストリーミング: DELL Inspiron 14 Note PC(有線LAN経由)でGoogle ChromeでPASサイトへアクセス=>HDMI(光アイソレーション無し標準品)=>アンプ以降は同じ。
注意事項ですが、Auro-3Dの再生においては、Auro-3D音源(5.1.4または7.1.4)として認識されず、単なる7.1や5.1となることがしばしば問題となります。今回、それも懸念事項だったのですが、Windows OSのサウンド詳細設定で、AVアンプを選んで、スピーカー構成を5.1や7.1に変更、さらにビットデプスとレートの組み合わせをストリーム音源に適切に合わせることでAuro-3D音源として認識させることがうまく行くことは確認できました。認識されたときの達成感・快感があるのでAuro-3Dファンがやめられないのですね。一方、音楽ファン視点から言えば、この辺の問題は自動的に解決するようにしないとAuro-3Dは普及しないだろうなとも思います。
数十のアルバム試しましたが、どうしてもうまく認識しなかった音源はこれまで1種のみ(Justin GrayのImmersed:これPASサイトのリストでトップにあるのにAuro-3Dで再生できないという残念な状況です。他の2LやSpirit of Turtleのものは全くOKなので許せるのですが)。Justin GrayのImmersedはApple MusicのAtmosストリーミングで聴けます。Auro-3Dファンとしては悔しい。
[追記]2025/11/17pm22: 社宅の環境だとAuro-3として再生できた。AVアンプがMarantz SR-8015、PCはNECのnote Lavie。理由は不明。
結果、まだ比較したアルバムが少ないし、かつそれほどの音質に関して繊細な判断能力の無いdonguriの個人的評価でそれほど説得力はないかもしれませんが、音質と音場の点で、PASのストリーミング音源(Auro-3D)の音は、ディスク再生、ダウンロード音源との差はわずかであり、十分Auro-3D空間オーディオを体験できます。
その他
まだ2LやSpirit of Turtuleのダウンロード可能音源の一部しかカバーしていないのは残念、今後速やかに増えていくのか不安。 特にTRPTKとSono Luminus、Aluidの音源も欲しい。
再生中のトラブルとしてはdonguriの環境はGMRとくとく光で山梨県北杜市の一軒家の環境ですが、たまに音が切れる現象がありました。アルバムによって全く起こらないが、アルバム全体で複数回切れた場面もあり、この辺はいまいち。
結論
2L、Spirit of Turtle、IAN RecordsなどのAuro-3Dフォーマットのアルバムを一通り聴いてみたいという層にはお勧めできるサブスクかと思います。聴くペースにもよりますが、月払いでこなしていき、新しい音源が尽きたらやめるというのが良いかと思います。もし聴いた中で気にいったアルバムはディクスないしダウンロード音源を購入するというのがコスパが良いかと思っております。ただBinaural音源やAuro-3D音源に特段の興味がないのであれば、あえて入らなくても良いのではないかとも思います。多くの音楽系イマーシブ音源はApple Musicでカバーされちゃうし、Auro-3Dの方が音質が良いと言ってもロッシーAtmosでたいていの人は満足しそう。2chで良いならRoon + Tidal or Qobuzで十分。
PASが伸びるためには登録音源の速やかな拡大が必要じゃないかな。


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Donguriさん
よくお調べになられましたね!Auro-3Dの「アルバム」が現時点で117とのことですが、これはダウンロードOnlyで販売されているものも含まれているのでしょうか?それともBDのみの数?
私もこのサービスについては夏に入交新スタジオで聴かせていただいていますが、自分のシステムで聴いたことはまだないですね。私はAuro Mastersの方により関心があるので、帰国後、取り組んでみようとは思っております。
さて、素晴らしいご報告ですが、一カ所事実関係としてあいまいな書き方(笑)があるように思いますので、以下に指摘する諸点、ご自身でも確認いただければと思います。
それは、「イマーシブ音源というくくりでは、すでにApple Musicの空間 オーディオ(ロスレス・Atmosストリーミング)で、どんどんアルバムが出てきており、太刀打ちで(き=筆者加筆)ないのは明らか。」というくだりです。この「Apple Musicの空間オーディオ」って、いわゆるApple TV 4K(以下4K)というセットトップボックス経由の音源のことですよね?(もし間違っていたら以下、ご放念ください)。
もしそうだとすると、「4K」で提供されているAtmosストリーミングは、「ロスレス」ではなく、「ロッシー」(不可逆圧縮)のはずです。画面に「ロスレス・ATMOS」と表示されるので勘違いを産みやすいのですが、あれは「2chはロスレス、ATMOSはロッシー、どちらでも出力できます」という意味ですよ。
Donguriさんは、Facebookの「イマーシブオーディオ同好会」という公開グループの8月6日(2025年)付けの私の投稿およびそのレス欄をご覧になっているはずと思いますが、あそこで紹介したように、「4K」向けのソースを「制作している」録音エンジニアの入交さんが、はっきりと「ロッシー形式仕様で納品するよう、依頼が来ている」とおっしゃっていましたから。
ただ、この世界は日進月歩なので、8月時点の情報が現時点ですでに古くなっている可能性もあると思い、念のため、最新データにアクセスできる有料版のChatGPTにもレポートを出させてみましたが、ここでもはっきりと「Apple Music Atmosは“Spatial Audio”とは呼ばれるものの、ステレオロスレス(Apple Lossless)とは別管理の、可逆圧縮ではない形式」と明示的に書かれた報告書が上がってきました。
確かに<数>では「4K」が提供するAtmos音源に「太刀打ちできません」が(笑)、こちらの「Pure Audio Streaming」(Auro Mastersは通信環境によって)は本物のロスレスで、かつchごとに96/24の「ハイレゾ」(ご存じのとおり、Atmosのchごとの最高音質はフォーマット上の制限から、48/24です)なので、<質>では「4K」Atmosを圧倒しています(笑)。まともなシステムで聴けば誰でもわかるレベルの音質差があります。
以上、最後に書かれている「ロスレスAtmos」という表現はやや怪しいという点を、ご注進まで(笑)。
Auro3Dさん
コメントありがとうございます。
>Auro-3Dの「アルバム」が現時点で117とのことですが、これはダウンロードOnlyで販売されているものも含まれているのでしょうか?それともBDのみの数?
これは個々に調べてはいないです。ダウンロードオンリーもある可能性はありますが、たとえば2LとIANの音源はほぼ全部Auor-3D フォーマットを含むBlu-rayが出ていると思います。Spirit of Turtleの音源は、ダウンロードオンリーもあるかもしれません。Blu-rayはなくディスクとしてはCD 2chまたはSACDの5.1の販売はしているようです。正確には個別に調べないと分からないので、時間がかかりそうで、やる気が、、
>「4K」で提供されているAtmosストリーミングは、「ロスレス」ではなく、「ロッシー」(不可逆圧縮)のはずです。
私はApple TV 4Kを使って聴いております。Apple MusicのAtoms配信はロッシーだというのは認識しておます。すみません、今回単純なミスで、一度日記をアップした直後に気づいたため、ロスレスをロッシーに修正しております。ご確認下さい。
ただしEdgeをブラウザに使い、一度このサイトをみると、修正前のデータをキャッシュしており、修正されてないように見える場合があります。